Vol.1 事業会社と広告会社で働く違いって、何? キャリアアップナビ
キャリアアップナビでは、マーケティングやクリエイティブ職のキャリアアップについて毎月テーマをピックアップして、キャリアコンサルタントが解説していきます。連載1回目は、事業会社と広告会社で働く違いについて。双方にとって、日頃から付き合いのある業界なので、知っているつもりでいたけれど、いざ転職してみたら、思っていた仕事と違った…という相談はよく寄せられます。良い転職は、良質な情報を入手することから始まります。「こんなはずでは、なかったのに…」とならないための、転職情報をお届けします!
──そもそもの定義がよくわからないのですが?
広告業界において「事業会社」と言う場合、広告会社との対比で自ら事業を行う企業体、つまりはアドバタイザーのことを指します。一方の広告会社は、事業会社(アドバタイザー)が製造・提供する商品・サービスのマーケティングや広告活動を支援し、経営に貢献することが役割です。主体性をもって商品・サービスを企画し、また自身の予算を投資して広告・マーケティング戦略を実施・実行する点に広告会社とは異なる、事業会社の特徴があります。
──そんなに違いがありますか。例えば、給与体系とかは?
一般的に、広告会社の月収は高いです。賞与はまちまちですが、年収÷14と、比重が高くないところも多いです。なんと言っても実績・実力主義で、広告賞獲得、大型案件受注、大競合勝利などが評価(基本給、賞与)に反映します。年齢が若くても実力があれば、昇進できる可能性もあるでしょう。一方で事業会社は、賞与の比重が大きいと言えます。特に大手で老舗のメーカーの場合、給与体系は、年功序列的なところが多いです。段階的に給料が上がっていく、賃金体系のシステムが整っているので、転職で入社する場合、初年度だけでなくその後、年収がどう上がっていくのかまで提示されることもあります。また役職を重視する傾向があり、前職で役職に就いていた人の場合、そうでない人に比べて転職時に、有利な給与の条件を提示されることもあります。ただ、ここまでの説明は国内企業のケースで外資系企業のマーケティング職は、実力主義の傾向が強いです。
──社内組織や風土についてはどうですか?
広告会社は、事業会社ほど“社内政治”を意識する必要はないでしょう。もちろん、ラインは存在しますが、受賞実績や売り上げなどの客観的データにより評価されます。実力次第でチームがつくられていく側面が強いですね。成果を残す方は、よりよい仕事が与えられ良いチームで活躍できますが、そうでなければ40代50代になると居場所がなくなっていく場合もありえるでしょう。事業会社では、社長の交代などによって体制が大きく変わる場合があります。また、総合職採用が一般的なので、体制が変わらなくても、思いがけない部署異動があります。しかし、例えばCMO(Chief Marketing Officer)といった専門性の高いポジションであれば異動の可能性は減ります。上に立つ方の考え方によってマーケティングやクリエイティブ部門の重要度が変わってきますので、会社選びでは留意が必要です。広告会社では、社内の敬称が「〇〇さん」、事業会社では「◯◯部長(肩書)」が一般的です。これも風土の違いをよく表していると思います。
──社内の立場や働く意識についてはどうでしょう?
広告会社では、クリエイターやマーケターは、広告立案・制作という事業ドメインに直接結びついている職種ですので、事業会社よりも社内における立場は強いです。広告会社から事業会社に転職しようとする人が気づいていないポイントだと思います。施策についての責任は当然ありますが、事業会社のマーケターやクリエイターより、のびのびと企画している印象があります。例えばA社のコンペや企画がダメであっても、次はB社のコンペで挽回するといったことができるなど。複数社(異業種)を扱うことも、のびのびできる理由のひとつです。一方の事業会社では、製造部門や経営企画、販売部門など、売り上げに直結する部門が会社の中心です。広告・マーケティング部門は、事業ドメインをサポートする立場で、非生産部門としてコストセンター扱いになる場合が多いです。この点は広告会社に在職している人は気づかないことが多く、ミスマッチにつながりやすいところです。一つひとつの施策に対してのプレッシャーや責任感が強いのも特徴です。責任感を強く感じて働きたい、自社の商品やサービスを心から愛したいという方には、やりがいがあると思います。転職面接の場でうちの商品は好きですか?という質問が出ることも多いですね。もちろん、昨今はマーケティング力の強化を考える事業会社も増えているので、マーケティングやクリエイティブが花形のポジションである会社もあります。
──残業に対する考え方はどうでしょうか。
広告会社には、良いものをつくるために徹底的にこだわり、時間をかけてでもベストな広告コンテンツを発信したいという風土があります。裁量労働制や、見込み残業代を予め支払っているタイプの広告会社が多いので、残業代で大きく収入を得るといった方は少ないですね。時間の使い方が組織でなく個人に任されている傾向があります。ただし最近は、残業に対して非常に厳しい管理がなされ、短縮する方向に進んでいます。事業会社は残業も少なく、効率よく成果を上げている方の評価が高いです。残業代は全額支払われる形態が多いと思います。時間に対するコスト意識が高いと言えるでしょう。
──キャリア採用は行っていますか?
広告会社は、通年で積極的にキャリア採用を行っている企業が多いです。事業会社は、あるポジションに欠員が発生したときに採用したり、社内にノウハウがない分野の経験者を採用したりする場合が多いです。そのため、ピンポイントでの採用となり、広告会社と比べると求人は少なく、経験やスキルも即戦力レベルが求められます。
──その他、留意すべきことはあるでしょうか。
事業会社は「総合職で異動ありき」の会社が多いので、広告系の仕事を突き詰める上では、広告会社で働いているほうが良いと思う方もいます。実際に異動のため広告の仕事から離れるのがきっかけで、事業会社から広告会社に転職するという人がいます。広告会社が持つデータはクライアントから与えられたもので、すべての開示がないこともあります。その点、事業会社の方がより細かな自社データをもとにマーケティングやクリエイティブを企画することができます。現在、広告会社の方はその点を不満に思って転職される方も多いですね。事業会社の場合は、宣伝部門にいても、販促だけとか、メディアの取り扱いだけとか、業務内容が限定されている場合もあります。留意するべきポイントです。
──次回は、「事業会社のマーケで働くなら、老舗、ベンチャー、どっち?」です。
広告業界において「事業会社」と言う場合、広告会社との対比で自ら事業を行う企業体、つまりはアドバタイザーのことを指します。一方の広告会社は、事業会社(アドバタイザー)が製造・提供する商品・サービスのマーケティングや広告活動を支援し、経営に貢献することが役割です。主体性をもって商品・サービスを企画し、また自身の予算を投資して広告・マーケティング戦略を実施・実行する点に広告会社とは異なる、事業会社の特徴があります。
──そんなに違いがありますか。例えば、給与体系とかは?
一般的に、広告会社の月収は高いです。賞与はまちまちですが、年収÷14と、比重が高くないところも多いです。なんと言っても実績・実力主義で、広告賞獲得、大型案件受注、大競合勝利などが評価(基本給、賞与)に反映します。年齢が若くても実力があれば、昇進できる可能性もあるでしょう。一方で事業会社は、賞与の比重が大きいと言えます。特に大手で老舗のメーカーの場合、給与体系は、年功序列的なところが多いです。段階的に給料が上がっていく、賃金体系のシステムが整っているので、転職で入社する場合、初年度だけでなくその後、年収がどう上がっていくのかまで提示されることもあります。また役職を重視する傾向があり、前職で役職に就いていた人の場合、そうでない人に比べて転職時に、有利な給与の条件を提示されることもあります。ただ、ここまでの説明は国内企業のケースで外資系企業のマーケティング職は、実力主義の傾向が強いです。
──社内組織や風土についてはどうですか?
広告会社は、事業会社ほど“社内政治”を意識する必要はないでしょう。もちろん、ラインは存在しますが、受賞実績や売り上げなどの客観的データにより評価されます。実力次第でチームがつくられていく側面が強いですね。成果を残す方は、よりよい仕事が与えられ良いチームで活躍できますが、そうでなければ40代50代になると居場所がなくなっていく場合もありえるでしょう。事業会社では、社長の交代などによって体制が大きく変わる場合があります。また、総合職採用が一般的なので、体制が変わらなくても、思いがけない部署異動があります。しかし、例えばCMO(Chief Marketing Officer)といった専門性の高いポジションであれば異動の可能性は減ります。上に立つ方の考え方によってマーケティングやクリエイティブ部門の重要度が変わってきますので、会社選びでは留意が必要です。広告会社では、社内の敬称が「〇〇さん」、事業会社では「◯◯部長(肩書)」が一般的です。これも風土の違いをよく表していると思います。
──社内の立場や働く意識についてはどうでしょう?
広告会社では、クリエイターやマーケターは、広告立案・制作という事業ドメインに直接結びついている職種ですので、事業会社よりも社内における立場は強いです。広告会社から事業会社に転職しようとする人が気づいていないポイントだと思います。施策についての責任は当然ありますが、事業会社のマーケターやクリエイターより、のびのびと企画している印象があります。例えばA社のコンペや企画がダメであっても、次はB社のコンペで挽回するといったことができるなど。複数社(異業種)を扱うことも、のびのびできる理由のひとつです。一方の事業会社では、製造部門や経営企画、販売部門など、売り上げに直結する部門が会社の中心です。広告・マーケティング部門は、事業ドメインをサポートする立場で、非生産部門としてコストセンター扱いになる場合が多いです。この点は広告会社に在職している人は気づかないことが多く、ミスマッチにつながりやすいところです。一つひとつの施策に対してのプレッシャーや責任感が強いのも特徴です。責任感を強く感じて働きたい、自社の商品やサービスを心から愛したいという方には、やりがいがあると思います。転職面接の場でうちの商品は好きですか?という質問が出ることも多いですね。もちろん、昨今はマーケティング力の強化を考える事業会社も増えているので、マーケティングやクリエイティブが花形のポジションである会社もあります。
──残業に対する考え方はどうでしょうか。
広告会社には、良いものをつくるために徹底的にこだわり、時間をかけてでもベストな広告コンテンツを発信したいという風土があります。裁量労働制や、見込み残業代を予め支払っているタイプの広告会社が多いので、残業代で大きく収入を得るといった方は少ないですね。時間の使い方が組織でなく個人に任されている傾向があります。ただし最近は、残業に対して非常に厳しい管理がなされ、短縮する方向に進んでいます。事業会社は残業も少なく、効率よく成果を上げている方の評価が高いです。残業代は全額支払われる形態が多いと思います。時間に対するコスト意識が高いと言えるでしょう。
──キャリア採用は行っていますか?
広告会社は、通年で積極的にキャリア採用を行っている企業が多いです。事業会社は、あるポジションに欠員が発生したときに採用したり、社内にノウハウがない分野の経験者を採用したりする場合が多いです。そのため、ピンポイントでの採用となり、広告会社と比べると求人は少なく、経験やスキルも即戦力レベルが求められます。
──その他、留意すべきことはあるでしょうか。
事業会社は「総合職で異動ありき」の会社が多いので、広告系の仕事を突き詰める上では、広告会社で働いているほうが良いと思う方もいます。実際に異動のため広告の仕事から離れるのがきっかけで、事業会社から広告会社に転職するという人がいます。広告会社が持つデータはクライアントから与えられたもので、すべての開示がないこともあります。その点、事業会社の方がより細かな自社データをもとにマーケティングやクリエイティブを企画することができます。現在、広告会社の方はその点を不満に思って転職される方も多いですね。事業会社の場合は、宣伝部門にいても、販促だけとか、メディアの取り扱いだけとか、業務内容が限定されている場合もあります。留意するべきポイントです。
──次回は、「事業会社のマーケで働くなら、老舗、ベンチャー、どっち?」です。