二者択一ではなく第三の選択肢を。新しい消費のカタチとは? レンティオ 代表取締役社長 三輪謙二朗さん
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車や腕時計、ブランドバックや万年筆。いわゆる贅沢品と呼ばれるこれらのものは、所有することがステータスであり、それを所有するためには購入するしかなく、そうでなければ所有を諦めるしかありませんでした。しかし現代では、購入する・しない以外の選択肢、「シェアリング」という概念が存在しています。カーシェアリングや民泊、ファッション定期便、レンタル農業まで。日夜さまざまなサービスが生まれています。そんなシェアリングサービスの1つで家電のレンタル事業を手がけているのがレンティオ。今回は、その創業者で代表取締役社長を務める三輪謙二朗(みわけんじろう)さんに「消費の変化」についてお聞きしました。いま消費者が求めるニーズは果たしてなにか? 既成概念の先の“第三の選択肢”がもたらす未来は一体どのようになるのでしょうか。
初めてのレンタルは”獅子舞”
──2015年頃はまだ「シェアリングエコノミー」の概念は主流になっていなかったと記憶していますが、レンティオでは2015年から家電のレンタルサービスを始めていますよね。直近では掃除用ロボット家電のルンバのレンタルサービスも始まっています。三輪さんはどのようにして、「家電のレンタル」という事業の着想に至ったのでしょうか?
確かに2015年当時はまだまだレンタルやシェアリングは主流ではありませんでしたね。それでも、当時からレンタルサービスはいくつかあったんです。町のカメラ屋が撮影機材をレンタルするサービスも存在していましたし、ファッションレンタルサービスのairClosetなども実はこの頃に始まっているんです。
僕にとって原体験になっているのは、友達の結婚式での出来事です。出し物として、芸人のたむらけんじさんの獅子舞芸をやろうと思い、獅子舞を探していたんです。でもわざわざそのためだけに獅子舞を購入することをためらっていたときに、獅子舞のレンタルサービスを見つけたんです。それを実際に使ってみたら思いのほか、使い勝手が良くて。「レンタルサービスのニーズ」を実感しました。
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ニッチなサービスですよね(笑)。それと、レンティオの前に勤めていた会社で家電を取り扱っていて。その頃からユーザーの方たちから、「レンタルはできないの?」という意見をいただくこともありました。そのため、レンタルサービスにニーズが存在していることは僕も薄々感じていたのですが、家電メーカーの方たちからは「あり得ない」と言われていたんです。
──それはまたどうしてでしょうか?
カメラなどの家電製品は人の所有欲を満たすものと言われていたからです。時計や自動車などと同じで、所有することがステータスであると。だから、レンタルは流行らない、そう言われていた。でも正直僕はその意見にあまりピンと来なかった。当時30代に差し掛かる年齢だった僕自身がそう思うなら、その意見は既成概念なのではないかと思いました。実際に、ビデオカメラを使う機会って子どもの運動会のときだけだったりしますし、ルンバなどの高価な新しい家電を購入する際も、自分の家に合うか確認したいという意見は至極真っ当だと思いました。
──確かに、「若者の車離れ」なんて言葉が叫ばれていますし、現在では結果として「所有がステータス」という考え方は少なくなってきていると感じます。
それにメルカリが流行ってきたことも大きな理由だと思います。メルカリが流行ってきたことで、一度購入したモノもすぐに売るという習慣がつきました。またカメラという観点では、Instagramが生まれたことで写真を撮る機会が大きく増えたんです。
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二択を強要し続けるエゴイズム
──スマホの普及によってカメラの売り上げは下がっているという話もお聞きします。これはカメラのニーズが下がっているというわけではないのですか?確かに、カメラの売り上げはこの10年間でめちゃくちゃ下がっていて、最盛期の4分の1近くに減少したと言われています。でも逆にスマホやInstagramのおかげで、「写真を撮る」人や機会はかなり増えていて、写真を撮る習慣は昔より多いんです。
そのため、休日などに「普段撮影に使っているスマホよりも良い写真を取りたい…!」と思う人たちのカメラをレンタルするニーズが生まれているんです。だから、レンティオでカメラをレンタルするユーザーの年齢層は20~30代の女性がメインになっています。
──それは意外です。もう少し上の年齢層の男性が多いかと思っていました。
僕も当初は、もう少し上の年齢層にニーズがあると思っていましたから、かなり驚きましたね。それだけ若い世代の方たちにはレンタルという概念に抵抗ないのでしょう。所有とは別の第三の選択肢が浸透しているのだと思います。
僕の考えでは、レンタルという第三の選択肢が広まれば、消費者がモノを購入する機会も増えていくと思っています。例えば、「買う」か「買わない」の選択肢しかない場合では、2割の人が「買う」を選び、8割の人が「買わない」を選ぶとそれ以上買ってくれる人たちを増やすことは難しい。でも、レンタルも可能であれば、「買わない」を選んだ8割の人たちの中でも「レンタルなら…」と思う人が出てくるかもしれない。そう思った人たちが実際にレンタルして使ってみて、良いモノであれば買う方へ転じることだって十分にありえます。僕は、このような消費行動の新しい選択肢を提案していきたいと思っています。
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もちろん、商品をつくるメーカーにとっては買ってもらえることが一番だと思います。ですが、そればかりでニーズがないモノを無理やり押し付けたり、「買う/買わない」の二択だけをいつまでも押し付けたりするのは、メーカーのエゴですし、発想が根本から間違っている。良いモノであれば、経過はどうであれ最終的には所有してくれるはずですから。
──いまの消費者のニーズに応えていくと「レンタル」という形にたどり着くのは、納得ですね。その一方で、レンタルの代名詞であったビデオ店はサブスクリプションの映像サービスの台頭によって規模を縮小している。これらを見ていると、「消費の変化」はとても顕著だと実感します。
いわゆる「モノ消費」から「コト消費」へと変化していて、この流れは今後も増えていくし、止まることもないと思います。テクノロジーや生活環境が変われば、消費行動も変わっていくのは必然です。時代に合わせて適切な形に変化していく、ということはどの分野にでも通ずる考え方なのだと思います。これらの変化は決して後退しているわけではなく、より良い方向へ、よりロジカルな方向へ消費が改善されているんです。
けれども、実際の市場はまだまだモノ消費の方が圧倒的に多い。家電がレンタルできることの認知率もまだまだ低く、DVDやビデオ以外のレンタルはまだ当たり前ではないというのが実情です。
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少子高齢社会による人口比率の影響は大きいと思っています。ただ、いまの高齢者の方たちに対するイメージとして、インターネットなどには詳しくない、という印象を持つ方も多いかもしれませんが、この先はインターネットに詳しい人も高齢者になっていきます。だから、いつまでも「高齢者はスマホやインターネットに疎い」というイメージを持ち続けるのは、危険だとも思いますね。現に、77歳の僕の親もスマホを使っていますし、今後はそのような層に対するテクノロジーやITのアプローチも増えていくのではないかと思います。
──消費行動と同様に、消費者に既成概念も変わっていくということですね。
僕は現在子育て中ですが、自分が子どもの頃の知見が通用しないことはかなり多いですね。それぐらい常識というものは昔に比べて大きく変わっています。
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孔子の言葉に学ぶ、生き方
加えて、これからは日本が貧しい時代になると思います。無駄な消費がより減りますし、会社に所属しているだけでは、自分の価値は向上しなくなるかもしれない。だからこそ、勉強する人や自分の考えを持つ人たちとそうではない人たちの差はより顕著になるかもしれません。──生き抜くためには既成概念にとらわれず最新の情報をインプットしていく必要があるわけですね。
僕は中国史を大学時代に専攻していたのですが、孔子が残した言葉にこのようなものがあります。「学びて思わざれば則ち罔し(くらし)、思いて学ばざれば則ち殆し(あやうし)」これは、「勉強するだけで考えなければ知識を活かすことはできないし、考えるばかりで勉強をしなければ賢明な判断はできない」という意味になります。つまり、勉強するだけでも考えるだけでも駄目で、両方をしなければいけないということです。
そして、この考え方はどれだけ常識や時代が変わっても、変わらない。何千年も前に言ったことがいまでも通用している。世の中の根幹の仕組みが変わらない限りは、やるべきことはいつだって一緒なのかもしれません。時代とともにコンテンツが増えたり、さまざまな趣向を持つ人たちが現れたり、世の中の多様性は膨張しています。確かに、勉強しなければいけないことや考えなければいけないことは昔よりも多く、難しいかもしれません。だけどその分テクノロジーやITにより、昔できなかったことができる時代になっています。そのような状況でどれだけ軸をぶらさずにいられるか。それが大事なのだと思います。
──「勉強をして知識を身につけて、考えて行動を起こす」この変わらぬ軸を、変わる世の中でいかにして貫いていけるか。それが現代を生き抜くための重要なポイントですね。本日はお話いただきありがとうございました!