──メルカリでマーケティングを担当しているとのことですが、具体的にどういった業務をしているのか教えていただけますか?
メルカリではマーケティング部門に13人所属しており、オンライン、オフライン、ストラテジーの3チームに分かれています(※2018年11月時点)。私はその中のストラテジーチームにて、テレビCMやオンライン広告などの各種施策ではなく、全体的な方針の策定や数字管理を担当しています。メルカリではマーケティング戦略を1~3カ月の単位で立てていくことで、多くの変化に対応できるようにしてきました。しかし、サービス規模やチームメンバーが増え、もう少し計画的に施策を決めていく必要が出てきました。それで、ストラテジーチームが新設され、その立ち上げから入っています。

──メルカリには2017年の夏に転職されたとのことでしたが、その当時からこのチームに所属だったのでしょうか?
最初はオフラインチーム所属でした。オフラインチームではテレビCMのディレクションやインフルエンサーとのコラボ施策を担当していました。それ以外に、オンラインとオフラインの間(あいだ)、プロダクトとマーケティングの間をつなぐこともミッションとしていました。

──「間」とは具体的にどういうことでしょうか?
たとえば、メルカリが東京ガールズコレクションに15分のステージをプロデュースし、その様子をメルカリチャンネルというライブフリマアプリで生配信しました。ファッションショーに出てきたモノをメルカリで買える仕組みを用意したり、モデルの私物をプレゼントするキャンペーンを実施したり、撮影した映像をオンライン広告用に編集したり。本当に一つの施策から出汁を取り尽くすように、さまざまなことを仕掛けました。このように、オフラインからオンラインへ、マーケティングからプロダクトへと、さまざまな導線を良くしていく業務を担当していました。

──メルカリに触れてもらい閲覧してもらうための活動なのですね。オンラインとオフラインを横断するため数値の計測が大変だと思うのですが、いかがでしょう? 
もちろん測定はしています。松田が主催している「ゆるふわBIプロジェクト」があるように、メルカリはデータ分析をする環境が身近にあります。私も前職がプロダクトマネージャーだったため、その経験を活かしてよりプロダクトに貢献できるKPIは何かを考えながら振り返りをしていきました。

マーケティングとプロダクトの距離感

──そもそも丹下さんはどういった経緯でメルカリに入社したのでしょうか?
東京大学の文学部出身なのですが、当時は出版社を志望していました。出版社に入るために、オーディオブックの書評を書くライターのアルバイトなどをしていたのですが、私の書いた記事が3万PVを超える反響がありダイレクトな反応とスピードの速さに惹かれていきました。こうした経験を通して紙ではなくWebに興味を持つようになりました。それで結局、新卒でリクルートに入社しました。

──紙からWebにはわかったのですが、なぜリクルートだったのでしょうか? 
リクルートは、紙の雑誌もWebメディアもあったので、バランスがすごく良いと感じました。それと新規事業も動機の一つです。リクルート内の新規事業のビジネスコンテストに内定者のときに応募したら、採用されたんです。それがきっかけとなって、内定者4名でMINMOO(ミンムー)というサービスを立ち上げました。

──どのようなサービスなのですか?
動画を撮影して、それをサーバーで自動編集して、お祝い動画にするアプリです。結婚や誕生日のお祝いが主な使用シーンです。私はこのアプリのUI/UX周りのディレクションもしましたし、メディア露出のPRも行なっていました。当時、「リーンスタートアップ」という概念が流行っていて、スタートアップのアーリーステージでは広告を出稿しないでPRで露出するべきだという考えがありました。最初からテレビCMをガンガン出稿するメルカリとは真逆ですよね(笑)。けど、この考えに感化されて、広告出稿をせずに頑張っていたのですが、うまくいかず1年くらいでサービスは終了してしまいました。

──その失敗から学んだことはありますか? 
やはり0からユーザーを増やしていく大変さが身にしみました。もし最初から、数百万のユーザーがいるサービスを担当していたら、ユーザーがいるありがたみもわからなかったと思います。
──0から1も、1から10も大変ですよね。その後はどのような仕事をしていたのですか?
不動産サイト「SUUMO」のUI/UXデザインを担当しました。MINMOOはユーザーが少なかったためA/Bテストをできませんでした。対してSUUMOはいろいろと試して結果が見えたので、体系的に学ぶことができました。

──SUUMOではマーケティングではなく、プロダクトに寄っていたのですね。
そうです、それが自分としてはフラストレーションでした。どのページにランディングして、そこからどのように回遊していくか、細部までこだわってつくっていました。けれどもマーケティングとプロダクトの距離が遠く、自分も知識が浅かったため、一気通貫で施策をできているとはいい難い状況でした。

難易度の高いマーケティング

──そこがメルカリへ転職された理由なのでしょうか? 
メルカリのマーケティングとプロダクトの距離感の近さも魅力でしたが、それよりもメルカリのマーケティングの難易度の高さに惹かれました。

──難易度が高い? どういうことでしょうか?
CtoCプラットフォームなので、ファッションや本、家具などさまざまなカテゴリーがあり、さらに老若男女さまざまな人がそれぞれ思い思いの理由で使っているんです。しかも「売る」と「買う」の二面性がある。これを伝える難しさが半端ないなと。けど、その難易度の高さが魅力的でした。

チョコレートやシャンプーのように食べたいとか使いたいといった理由で選ぶモノではなく、なぜ使うかを理解してもらう必要のあるモノのため、プロダクトの質が違います。これからの時代、こういったサービスやプロダクトをマーケティングしていく機会が間違いなく増えていきます。

ナレッジが蓄積され最適解がわかる領域ではなく、まだ誰も踏み入れたことのない未開の領域の方が面白そうじゃないですか。そういった領域にアプローチできるのは今後のマーケターに求められるスキルな気がします
──この流れでお聞きしますが、今後のマーケターに求められるものはなんでしょう?
性質の違うモノに出会ったとき、それを面白がれること。そして、これまでの自分の経験を活かしつつ、それにとらわれず“染み出せる”こと。新しい分野へのチャレンジに抵抗がないことがすごく求められるように思います。

もちろん、いままでの歴史で積み重ねてきたマーケティング手法が参考になる部分もあります。しかし、テレビCMなどオンライン広告の役割もどんどん変容していく中で、参考にならない部分もあると思うので、そこの割り切りが必要になります。

──たしかにマーケティングのアプローチも変わっていきますね。
第一想起を取るのではなく、なぜ使うかを理解してもらう。そういったコミュニケーションが必要になってくると思います。メルカリの様に人々の生活様式自体を変えてしまうようなサービスやプロダクトのマーティング手法には、明確な答えを持っている人はまだいないと思うので、その部分を突き詰めていきたいです。

──そこを目指すことがこれからのマーケターに求められるということですね。本日はありがとうございました!
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