──金子さんのこれまでの経歴を教えてください。
広告会社のオグルヴィ&メイザーを経て、ネスレ日本に入社しました。ネスレ日本では広告、CSR、デジタルなど幅広い仕事を手掛けたほか、コミュニケーション・ディレクターというポジションで、初の女性取締役に就任しました。

いま思うと、そこで経営トップの考え方を学べたことは、とてもラッキーだったのだと思います。以降の私はいかなる時も、「組織の課題解決」と「(ビジネスの)機会の最大化」の2つの目的を念頭に置いて、仕事をするようになったからです。

その後、シティバンク、GEヘルスケア、日本GEなどで勤務。コミュニケーションやブランディング担当のポジションで経験を積み、現在はアマゾンジャパンで、パブリック・リレーションズ本部長をしています。自社商品やサービスの広報に加え、コーポレートコミュニケーションの役割も担っています。ECでの体験を通してイメージするアマゾンの姿だけでなく、ミッションや理念などアマゾンという会社の“本質”的な姿を社内外に伝えることが私の責務だと思っています。

広告、CSR、ブランディング、PRなど、コミュニケーション領域でのキャリアを歩んできた私ですが、早い段階で、この領域を極めようと決めていたわけではありません。幼い頃から両親に「人生、たくさん寄り道をして楽しいと思うことをやりなさい」と教えられ、常に自分が真に「楽しい」と思えることを選び続けてきました。複数回、転職をしていますが、どの転職先も私が「楽しい」「チャレンジしたい」と思える仕事内容や職場環境であったことは共通しています。

40歳も目前になり、ふとこれまでの活動を振り返ってみると、やってきたことのすべてがコミュニケーション領域だったことに気付き、そこでようやくこの領域を極めていこうと決めました。
アマゾンジャパン パブリック・リレーションズ本部 本部長 金子みどりさん<br />
グローバル企業におけるコミュニケーション分野で25年余のキャリアを積む。業界は、オグルヴィ、ネスレ、シティバンク、GEヘルスケア、日本GEそして現在のAmazonと多岐にわたる。社内外のコミュニケーションおよび地域貢献活動に加え、過去には大型のM&A案件やクライシス・コミュニケーションなども統括し、グローバル企業の一員として日本でのコミュニケーション全般を歴任。
アマゾンジャパン パブリック・リレーションズ本部 本部長 金子みどりさん
グローバル企業におけるコミュニケーション分野で25年余のキャリアを積む。業界は、オグルヴィ、ネスレ、シティバンク、GEヘルスケア、日本GEそして現在のAmazonと多岐にわたる。社内外のコミュニケーションおよび地域貢献活動に加え、過去には大型のM&A案件やクライシス・コミュニケーションなども統括し、グローバル企業の一員として日本でのコミュニケーション全般を歴任。
──これまでの経験がどのように今の仕事に活かされていますか。
オグルヴィ&メイザーでは、顧客視点に立ったブランディングについて、徹底的に学びました。そこで得たスキルは、その後もあらゆる場面で活かされています。

一方で自社商品・サービスを生みだす事業会社での仕事は、私の視野をさらに大きく広げてくれました。特に、売上目標達成のために奔走する社員や、時にシビアな判断を下さなければならない経営者の背中を見てきたことで、経営に対する理解が深まりました。冒頭でお伝えした「課題解決と機会の最大化」は、そうした経験の末に私の中で確立されたものです。

──それぞれの会社の文化やミッションが異なるなか、気を付けてきたことはありますか。
ひとつは、どの会社でも社長や新入社員などあらゆる立場の人と話をすることを意識してきました。そうすることで、一人ひとりの社員が考えている自社の問題や課題が共有され、実践すべきコミュニケーション施策が見えてくるからです。

また私が橋渡しとなり、社員間の交流が促進されれば、会社全体として仕事へのモチベーションが高まります。そしてその熱量が、新たなイノベーションを生み出す好循環につながります。

もうひとつ気を付けてきたことは、頼まれたことに対して、「経験がないから」という理由で断らないことです。まずは「YES」と答え、その後どのようにやろうかと考える。与えられた責任と権限の重みを感じつつ、「やってみなはれ」の精神を大切にしています。
──若手PRパーソンへのメッセージをお願いします。
大事なのは、「書く力」「聴く力」「想像力」の3つです。

表層的な議論ではなく、掘り下げた議論をするためには、まず考え抜き、それを文章に落とし込む力が必要です。社員やクライアントをはじめ、ステークホルダーに刺さる言葉を生み出すためには、いろんなところにアンテナを張って、話を聴き、それをすべて自分のリソースにするよう心掛けることが重要です。

3つ目の「想像力」は、これだけ世の中がはやく変化する時代なのですから、今までの延長線ではなく、新しいことを想像できる力がPRパーソンにも必要となるという意味です。

今後も、日本企業の海外進出や、海外事業の強化の波は続くでしょう。そうした企業にとって、ミッションや理念をどの国の従業員にも共通して認識してもらうために、我々PRパーソンがいます。そうした点からも、私たちの重要性はさらに増していくでしょう。

次代の若手PRパーソンの人たちにはぜひ、オウンドメディアやイベントなど、さまざまなチャネルを通じて、所属する企業の“本質”的な部分を伝えるための仕掛けをつくっていってほしいと思います。
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【聞き手】
荒川直哉
株式会社マスメディアン
取締役
国家資格キャリアコンサルタント
荒川直哉
マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。累計4000名を超える方の転職を支援する一方で、大手事業会社や広告会社、広告制作会社、IT 企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。転職希望者と採用企業の両方の動向を把握しているエキスパートとして、キャリアコンサルティング部門の責任者を務める。「転職者の親身になる」がモットー。
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キャリアアップナビ
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