猫と人の幸せを願う。溢れる愛でペットテックだけでなく動物病院まで開業 ハチたま 取締役 CMO/データサイエンティスト 松原あゆみさん
「好きを仕事に」特集で今回インタビューするのは、スマート猫トイレ「toletta(トレッタ)」の開発・提供をするハチたまでCMOを務める松原あゆみ(まつばらあゆみ)さん。彼女は幼少期から猫が大好きで、ハチたまの企業理念「ねこが幸せになれば、人はもっと幸せになれる。」に共感し、同社に運命を感じたほど。もともと得意だったデータ分析のスキルを活かしながら、現在は好きを仕事にする松原さんに、「好き/得意を仕事にする」について伺いました。
──記事がアップされる日は2月22日の“猫の日”を予定していますが、いかがでしょうか?
これまでIoTガジェットやペットテック関連で取材を受けることはあったのですが、今回の取材はとても嬉しいです。1年に1回しかない、記念すべき“猫の日”にこのような機会をいただけて、とても光栄です。
──猫好きにとって、それだけ2月22日は重要なのですね。松原さんはいつから猫が好きなのでしょうか?
小さいときからずっと、家には猫がいました。大学で大阪に出るまで、18年間欠かせない存在でした。一人暮らしで初めて猫が飼えなくなると、猫グッズを買い漁り、家中を猫グッズで埋めていましたね。
就職活動のときは、「好きを仕事に」するなんて考えはなかったので、大学で学んでいた数学やデータを活かす仕事を探していました。それで、数々のサービスを提供しているDeNAに就職。入社して、営業やプロダクトマネージャーとしてオンラインショッピングサービスを開発していましたが、もっと数字やデータを活用して人を豊かにする仕事がしたいと思い、転職を決意しました。
そうですね、あくまで猫ではなく、人でした(笑)。数字やデータをビジネスに活かす代表例としてアクチュアリー(保険数理士)という職業があります。遠回りしましたが、明治安田生命でアクチュアリー職に就くことにしました。統計確率学に基づいて、保険料を算出する。まさに、数字やデータを使って、人の人生をサポートする職業です。すごくやりがいもありました。
一方で、生命保険は業態として、行き詰まりを感じていました。もちろん最近は歩数・体重・食事・睡眠時間などのライフログを集計して保険料を最適化するサービスなど、新たなビジネスの種が生まれ始めたりしています。しかし、実証実験を終えて事業化するまで途方もない時間がかかってしまう。そんなスピード感に辟易していたときに、ハチたまに出会いました。
──どのような出会いだったのでしょうか?
猫飼いさん向けのイベントでトレッタのプロトタイプを見つけ、先行販売に申し込みました。首を長くして待っていたのですが、月日が経つにつれ、自分だったらこういった機能を実装したいというアイデアがどんどん湧いてきて、気づいたらハチたまの公式サイトを閲覧していました(笑)。そうしたら「ねこが幸せになれば、人はもっと幸せになれる。」という企業理念を見つけて…! 運命を感じましたね。
トレッタの提供価値は、猫の体重や尿のデータから健康状態を把握すること。まさにいままで私のやってきたデータ分析が活かせ、さらに大好きな猫にまつわるプロダクト。どうしたらこの会社に入れるのか、あの手この手と考えて、応募しました。前職の人たちにも「人ではなく、猫をサポートします!」と宣言し、晴れて2019年2月に転職しました。
──ついに人ではなく猫をサポートすることになったのですね(笑)。改めてトレッタについて教えてください。
スマートねこトイレ「toletta2」は、首輪やタグを使わずAIによる顔認識技術を用いて、多頭飼いの場合でも猫を識別し、猫の尿量や尿回数などを自動測定します。
猫って膀胱炎などの泌尿器系の疾患が多いんです。もともと祖先が砂漠地帯に生息していたので、水分を取れなくても、生命維持できる動物なんです。しかしその分、尿をできる限り凝縮しようと、腎臓に負担がかかってしまう。実は、猫の死因のトップは慢性腎不全なんです。
それを防ぐには、早い段階で兆候を発見する必要があります。だからこそ泌尿器系の疾患の早期ステージでよく見受けられる、頻尿や多尿、無尿を検知する機能が実装されています。猫ちゃんって、例えば1日に5~6回トイレにいく子でも、膀胱炎にかかると40回ぐらいになったりします。そういった症状を察知することができるんです。
──早めに発見することで早期治療につながるわけですね。
飼い主はずっと家にいるわけではないですから、いままではトイレの回数なんてわからなかった。だから、明らかに元気がない状態、つまり末期のステージに進行して病気に気づくケースが多かった。もっと早くに気づいていれば、腎臓のケアができるフードやサプリ、薬などいろいろ対応する方法がある。こういったケアや治療をすることで、猫の余命が3年伸びるという研究成果もあるほどです。
まさに、データによって、猫さまの、そして飼い主の幸せにつながる。私が思い描いていた、データで人の人生を変えるプロダクトなんです。
──猫さまを救うんですね。
本当に猫さまさまで……。普通、湘南のへんぴなところにあるスタートアップなんて、エンジニアを採用できないじゃないですか。でも優秀な猫好きの野良エンジニアがわらわらと集まってくる(笑)。
実際にトレッタでは、ユーザーさんからの声を開発・改善に取り入れています。例えば、トイレシーンの動画撮影。AIで識別するために画像が必要なのですが、写真で充分です。しかし、ユーザーアンケートを200人に実施してみたところ95%が動画を欲しいと要望がありました。このアングルの猫は貴重だからということなんです。 本当に、猫さまの求心力には驚かされます。実は猫の日の2月22日に、サブスクリプションモデルの往診専門の動物病院を始めます。開業にあたっての採用でも、猫さまのご利益で、たくさんの猫好きの獣医師や看護師の方々にご応募いただきました。
トレッタのサービスを使っていて、データから頻尿が検知されたとしても、すぐに動物病院に連れていけていないんじゃないかという仮説がありました。というのも、猫を捕まえて、ゲージに入れて、車やタクシーで病院へ連れていき、待合室で長時間待つ。こんなことをしたら猫も飼い主もストレスでぐったりです。自分もですが、多くの猫飼いさんも同様なんじゃないかなと。それでアンケートを採ってみたら、6割の人が通院で悩んでいることがわかりました。トレッタのユーザーは、猫への健康意識が高いはずなのに、この状態です。
これまで、当社は猫の疾患の傾向を察知してアラートを出すところまでで、あとは飼い主さんに任せていましたが、はたしてそれが本当に猫や人の幸せなのか。獣医師に診てもらうことが本当の健康や幸せにつながるのではと思い始め、一気通貫で病院まで運営するべきと決心し、開業を決めました。
──これまで往診の動物病院はなかったのでしょうか?
ありましたが、あまり知られていませんでした。それに飼い主や猫が歳をとって動けないから、仕方がなく往診するケースばかりでした。普通の飼い主は、「病院は猫を連れていくもの」という固定観念に縛られていた。しかし最近、ベビーシッターや家事代行などの訪問サービスが生活に根付くなかで、獣医師の訪問サービスも当たり前になるんじゃないかと思うようになりました。仕事終わりの夜に家事をしながら、横で猫を診てもらう。そんなサービスにしていきたいです。 ──そうすればストレスからも開放され、猫との生活もより快適になりますね。
まずは私の飼っている猫で試してみました。過去に定期検診で動物病院に連れていったときはひどく拒絶されて、あんなに大変だったのに、往診サービスのテストでは15分であっさり終わりました。猫も診察後はご機嫌で、「CIAO ちゅ~る」をせがんでくる(笑)。感動しましたね。
それで次は、トレッタのインフルエンサーであるニャンバサダーの方々にも協力を依頼しました。彼・彼女らから「家に獣医師が来てくれるんですか!? まさに私のためのサービスです!」と狂喜乱舞。私はそのコメントで号泣(笑)。本当に猫飼いさんから求められているサービスだと実感しました。
実際に利用した方の感想として、「病院に行って検診を受ける場合は、獣医師さんも忙しそうでゆっくり相談ができない。訪問検診だと30分じっくりと診てくれ、相談できるので、よかった」といった声が挙がっています。
そして、サブスクリプションモデルなのも好評です。猫飼いさんは多頭飼いの場合が多く、1頭あたり通常の定期検診だと1~2万円かかり、費用もばかにならない。それを1頭あたり月額2222円で、1年に2回往診できることで解消しています。すみません言いたいだけなのですが、月にゃんにゃんにゃんにゃん円で提供します(笑)。
もともと、トレッタのデータ分析を担うデータサイエンティストとして入社する予定だったのですが、スタートアップあるあるの「リソース不足」のため、マーケティングも兼務するようになりました。ただ、猫への思いが強すぎて、アプリの設計やハードウェアの開発にも関わるようになって(笑)。なんでもかんでも手や口を出していたら、いつのまにか意思決定にまつわる重要事項の相談を受ける立場になり、いまは事業責任者として全体を統括しています。本当は、“得意”な分析に集中すべきなのかもしれませんが、トレッタの価値を高め、届けることに集中しています。
──「好きを仕事に」特集では皆さんにお聞きしているのですが、「好き」と「得意」どちらを仕事にすべきでしょうか?
私は数字やデータが好きでしたが、論文を書いて極めたいという志向はありませんでした。過去に得意を仕事にした経験もありますが、好きを仕事にしているいまのほうが、楽しい。もちろん、特許申請や病院の開業手続きなど、過去に経験したこともないし、自分の得意ではない苦しい仕事もあるけれど、好きだからできる。背伸びしてでも、なんとか応えてやろうって。
最近思うようになったのですが、「好き」を突き詰められる人は稀有で、ある意味、突き詰められることが秀でたスキルだと。好きを極められる人、思いを持ち続けられる人は、それを仕事にしたらいい。一方で、中途半端ならいずれ苦しくなるから、得意を活かしたほうがいいと思います。
──「好き」を突き進むのはある意味、修羅の道かもしれませんね。でもだからこそ、“やりがい”がある。そんなことに気付かされました。本日はご対応いただきありがとうございました。
これまでIoTガジェットやペットテック関連で取材を受けることはあったのですが、今回の取材はとても嬉しいです。1年に1回しかない、記念すべき“猫の日”にこのような機会をいただけて、とても光栄です。
──猫好きにとって、それだけ2月22日は重要なのですね。松原さんはいつから猫が好きなのでしょうか?
小さいときからずっと、家には猫がいました。大学で大阪に出るまで、18年間欠かせない存在でした。一人暮らしで初めて猫が飼えなくなると、猫グッズを買い漁り、家中を猫グッズで埋めていましたね。
就職活動のときは、「好きを仕事に」するなんて考えはなかったので、大学で学んでいた数学やデータを活かす仕事を探していました。それで、数々のサービスを提供しているDeNAに就職。入社して、営業やプロダクトマネージャーとしてオンラインショッピングサービスを開発していましたが、もっと数字やデータを活用して人を豊かにする仕事がしたいと思い、転職を決意しました。
人ではなく猫をサポートしたい
──そのときは猫・ペット関連の企業を探していたわけではないんですね。そうですね、あくまで猫ではなく、人でした(笑)。数字やデータをビジネスに活かす代表例としてアクチュアリー(保険数理士)という職業があります。遠回りしましたが、明治安田生命でアクチュアリー職に就くことにしました。統計確率学に基づいて、保険料を算出する。まさに、数字やデータを使って、人の人生をサポートする職業です。すごくやりがいもありました。
一方で、生命保険は業態として、行き詰まりを感じていました。もちろん最近は歩数・体重・食事・睡眠時間などのライフログを集計して保険料を最適化するサービスなど、新たなビジネスの種が生まれ始めたりしています。しかし、実証実験を終えて事業化するまで途方もない時間がかかってしまう。そんなスピード感に辟易していたときに、ハチたまに出会いました。
──どのような出会いだったのでしょうか?
猫飼いさん向けのイベントでトレッタのプロトタイプを見つけ、先行販売に申し込みました。首を長くして待っていたのですが、月日が経つにつれ、自分だったらこういった機能を実装したいというアイデアがどんどん湧いてきて、気づいたらハチたまの公式サイトを閲覧していました(笑)。そうしたら「ねこが幸せになれば、人はもっと幸せになれる。」という企業理念を見つけて…! 運命を感じましたね。
トレッタの提供価値は、猫の体重や尿のデータから健康状態を把握すること。まさにいままで私のやってきたデータ分析が活かせ、さらに大好きな猫にまつわるプロダクト。どうしたらこの会社に入れるのか、あの手この手と考えて、応募しました。前職の人たちにも「人ではなく、猫をサポートします!」と宣言し、晴れて2019年2月に転職しました。
──ついに人ではなく猫をサポートすることになったのですね(笑)。改めてトレッタについて教えてください。
スマートねこトイレ「toletta2」は、首輪やタグを使わずAIによる顔認識技術を用いて、多頭飼いの場合でも猫を識別し、猫の尿量や尿回数などを自動測定します。
──猫の尿量や尿回数の測定がなぜ必要なのでしょうか?
猫って膀胱炎などの泌尿器系の疾患が多いんです。もともと祖先が砂漠地帯に生息していたので、水分を取れなくても、生命維持できる動物なんです。しかしその分、尿をできる限り凝縮しようと、腎臓に負担がかかってしまう。実は、猫の死因のトップは慢性腎不全なんです。
それを防ぐには、早い段階で兆候を発見する必要があります。だからこそ泌尿器系の疾患の早期ステージでよく見受けられる、頻尿や多尿、無尿を検知する機能が実装されています。猫ちゃんって、例えば1日に5~6回トイレにいく子でも、膀胱炎にかかると40回ぐらいになったりします。そういった症状を察知することができるんです。
──早めに発見することで早期治療につながるわけですね。
飼い主はずっと家にいるわけではないですから、いままではトイレの回数なんてわからなかった。だから、明らかに元気がない状態、つまり末期のステージに進行して病気に気づくケースが多かった。もっと早くに気づいていれば、腎臓のケアができるフードやサプリ、薬などいろいろ対応する方法がある。こういったケアや治療をすることで、猫の余命が3年伸びるという研究成果もあるほどです。
まさに、データによって、猫さまの、そして飼い主の幸せにつながる。私が思い描いていた、データで人の人生を変えるプロダクトなんです。
──猫さまを救うんですね。
本当に猫さまさまで……。普通、湘南のへんぴなところにあるスタートアップなんて、エンジニアを採用できないじゃないですか。でも優秀な猫好きの野良エンジニアがわらわらと集まってくる(笑)。
それは、開発でも同様のことがいえます。猫狂いのユーザーさんからトレッタについて熱い要望メールをいただくんです。「ここの機能はすごくいい、けれどもあそこをもう少し修正してくれたらもっといい」。普通は製品を使ってダメだったら、クレームを伝えてそれっきりなのに、長く使いたいからこそ、本気の要望が来るんです。
実際にトレッタでは、ユーザーさんからの声を開発・改善に取り入れています。例えば、トイレシーンの動画撮影。AIで識別するために画像が必要なのですが、写真で充分です。しかし、ユーザーアンケートを200人に実施してみたところ95%が動画を欲しいと要望がありました。このアングルの猫は貴重だからということなんです。 本当に、猫さまの求心力には驚かされます。実は猫の日の2月22日に、サブスクリプションモデルの往診専門の動物病院を始めます。開業にあたっての採用でも、猫さまのご利益で、たくさんの猫好きの獣医師や看護師の方々にご応募いただきました。
猫の幸せを願って、病院まで開業
──松原さんもですし、エンジニアの方も、みんな猫さまに引き寄せられるのですね(笑)。この2月22日から始まる動物病院について詳しく教えてください。スマートねこトイレだけでなく、なぜ動物病院を開院したのでしょうか?トレッタのサービスを使っていて、データから頻尿が検知されたとしても、すぐに動物病院に連れていけていないんじゃないかという仮説がありました。というのも、猫を捕まえて、ゲージに入れて、車やタクシーで病院へ連れていき、待合室で長時間待つ。こんなことをしたら猫も飼い主もストレスでぐったりです。自分もですが、多くの猫飼いさんも同様なんじゃないかなと。それでアンケートを採ってみたら、6割の人が通院で悩んでいることがわかりました。トレッタのユーザーは、猫への健康意識が高いはずなのに、この状態です。
これまで、当社は猫の疾患の傾向を察知してアラートを出すところまでで、あとは飼い主さんに任せていましたが、はたしてそれが本当に猫や人の幸せなのか。獣医師に診てもらうことが本当の健康や幸せにつながるのではと思い始め、一気通貫で病院まで運営するべきと決心し、開業を決めました。
──これまで往診の動物病院はなかったのでしょうか?
ありましたが、あまり知られていませんでした。それに飼い主や猫が歳をとって動けないから、仕方がなく往診するケースばかりでした。普通の飼い主は、「病院は猫を連れていくもの」という固定観念に縛られていた。しかし最近、ベビーシッターや家事代行などの訪問サービスが生活に根付くなかで、獣医師の訪問サービスも当たり前になるんじゃないかと思うようになりました。仕事終わりの夜に家事をしながら、横で猫を診てもらう。そんなサービスにしていきたいです。 ──そうすればストレスからも開放され、猫との生活もより快適になりますね。
まずは私の飼っている猫で試してみました。過去に定期検診で動物病院に連れていったときはひどく拒絶されて、あんなに大変だったのに、往診サービスのテストでは15分であっさり終わりました。猫も診察後はご機嫌で、「CIAO ちゅ~る」をせがんでくる(笑)。感動しましたね。
それで次は、トレッタのインフルエンサーであるニャンバサダーの方々にも協力を依頼しました。彼・彼女らから「家に獣医師が来てくれるんですか!? まさに私のためのサービスです!」と狂喜乱舞。私はそのコメントで号泣(笑)。本当に猫飼いさんから求められているサービスだと実感しました。
実際に利用した方の感想として、「病院に行って検診を受ける場合は、獣医師さんも忙しそうでゆっくり相談ができない。訪問検診だと30分じっくりと診てくれ、相談できるので、よかった」といった声が挙がっています。
そして、サブスクリプションモデルなのも好評です。猫飼いさんは多頭飼いの場合が多く、1頭あたり通常の定期検診だと1~2万円かかり、費用もばかにならない。それを1頭あたり月額2222円で、1年に2回往診できることで解消しています。すみません言いたいだけなのですが、月にゃんにゃんにゃんにゃん円で提供します(笑)。
好きと得意
──懐事情にも優しく、ユーザーエクスペリエンス、もといネコエクスペリエンスも高いのですね(笑)。ちなみに松原さんがサービスを開発しているのでしょうか? ハチたまでの松原さんの役割を教えてください。もともと、トレッタのデータ分析を担うデータサイエンティストとして入社する予定だったのですが、スタートアップあるあるの「リソース不足」のため、マーケティングも兼務するようになりました。ただ、猫への思いが強すぎて、アプリの設計やハードウェアの開発にも関わるようになって(笑)。なんでもかんでも手や口を出していたら、いつのまにか意思決定にまつわる重要事項の相談を受ける立場になり、いまは事業責任者として全体を統括しています。本当は、“得意”な分析に集中すべきなのかもしれませんが、トレッタの価値を高め、届けることに集中しています。
──「好きを仕事に」特集では皆さんにお聞きしているのですが、「好き」と「得意」どちらを仕事にすべきでしょうか?
私は数字やデータが好きでしたが、論文を書いて極めたいという志向はありませんでした。過去に得意を仕事にした経験もありますが、好きを仕事にしているいまのほうが、楽しい。もちろん、特許申請や病院の開業手続きなど、過去に経験したこともないし、自分の得意ではない苦しい仕事もあるけれど、好きだからできる。背伸びしてでも、なんとか応えてやろうって。
最近思うようになったのですが、「好き」を突き詰められる人は稀有で、ある意味、突き詰められることが秀でたスキルだと。好きを極められる人、思いを持ち続けられる人は、それを仕事にしたらいい。一方で、中途半端ならいずれ苦しくなるから、得意を活かしたほうがいいと思います。
──「好き」を突き進むのはある意味、修羅の道かもしれませんね。でもだからこそ、“やりがい”がある。そんなことに気付かされました。本日はご対応いただきありがとうございました。