話題の商品連発のプランナーの企画術

──フェリシモといえば、「YOU+MORE!」のおもしろ・かわいい動物グッズがたびたび話題になっていますよね。田中さんは立ち上げから関わっているとお聞きしました。
入社1年目のときに「YOU+MORE!」を立ち上げることになり、メンバーに選ばれました。「すっかり見慣れた日常が、もっと楽しく、もっと笑えるように」というコンセプトのもと、くすっと笑ってしまうような、リアルな動物雑貨を多く展開しています。

──今回のテーマが「好きを仕事に」なのですが、やはりご自身が好きな動物から展開しているのでしょうか?
動物は全般的に好きですが、「特定の動物がめっちゃ好き!」というわけではないんです。TwitterやInstagramなどで話題になるものを調べるところからスタートすることが多いですね。そこで面白いなと思ったものを立体的にイメージして、本当に面白いのか、再現できるのかということを考え、売れそうだと感じたら企画書をつくります。また、買い物をしているときに、「この商品のこの部分が動物の耳に似ている」と、類似性に気づいて発想することもあります。
──ハムスターのちっちゃめポーチやシマエナガキーポーチと、動物のリアルな再現が上手ですよね!
動物を飼っている方や好きな方のブログやInstagramを見て、その動物の造形やあるある行動を知って、ひらめくこともあります。ハムスターのちっちゃめポーチもこのパターンで、ハムスターが「おもちみたいに平べったくなる」というあるあるを再現してつくりました。
もっちりハムスターのちっちゃめポーチ
もっちりハムスターのちっちゃめポーチ
シュルッと飛び立つシマエナガキーポーチ
シュルッと飛び立つシマエナガキーポーチ
──動物好きが一番キュンとするポイントを見つけて商品化しているのですね。ゴリラの腕枕クッションにも衝撃を受けましたが、どのような過程で商品化したのですか?
名古屋・東山動植物園のイケメンゴリラ「シャバーニ」をモチーフにしています。企画会議で次の動物はなににしようかと考えているときに、ゴリラが挙がったんです。ゴリラって、「強い」「たくましい」というイメージが強いけど、実は優しさも持ち合わせている。その優しさを表現したいという思いから、ゴリラが腕枕をしてくれているように見えるクッションが生まれました。

実は、腕枕をテーマにしたクッション自体は、ほかの動物でも展開していたのですが、「せっかく腕枕をしてもらうならイケメンがいい!」という女子的な意見からシャバーニになりました(笑)。胸板の部分がこだわりポイントで、綿を多めにいれて入れてカッチカチにしているんですよ。ポケットも付いていて、リモコンやスマホを入れると、シャバーニが持ってくれているように見えるんです。
強さとやさしさをあわせ持つニシゴリラ シャバーニのたくましい腕枕クッション
強さとやさしさをあわせ持つニシゴリラ シャバーニのたくましい腕枕クッション
──細かいこだわりが詰まっていますね! 東山動植物園の方に見せたときの反応はいかがでしたか?
東山動植物園が監修してくださり、細かなアドバイスもいただきました。最初、背中は黒っぽくしていたのですが、シャバーニは群れのボスでシルバーバックなので、せっかくならその特徴を活かしてはどうか、と助言してくださったんです。動物園の方だからこそわかるマニアックなポイントなので、ありがたかったですね。

大人になっても欲しいモノ

──そうした掛け合いが良い商品を生むのですね。一方で、田中さん自身の「好き!」から始まったのがドラえもんシリーズですよね。いつから好きなのですか?
ドラえもんは物心ついたときから好きでしたね。兄弟とVHSが擦り切れるまでアニメを見ていました。特に大長編の映画が好きで、ドラえもんと一緒に冒険しているような気分になって、ドキドキ・ワクワクしながら見ていました。

大人になって改めて漫画を読み返してみると新しい発見がたくさんあるんですよ。「実はこんないいこと言ってたんや!」と名言に気づくこともあるし、オノマトペもすごく面白いんです。たとえば、ジャイアンの音痴な歌を「ボゲー」と表現していたり、笛の秘密道具の音を、「ぴー」でも「ぷー」でもなく、「ぺー」と表現していたり。大人になってから読むことで、そうした新しい発見が次々出てくるので、ドラえもんをやると決まったとき、コンセプトは「大人にこそドラえもん」にしました。ドラえもんの世界観やタッチは、大人にこそ読んでもらいたい、刺さるものがたくさんあります
──たしかに、2019年の映画のポスターも、大人に刺さるということで話題になりました。世代ごとに学ぶべきところがあるのかもしれないですね。具体的に、どのタイミングで企画を提案したのですか?
入社してしばらくは「YOU+MORE!」に専念していましたが、去年からキャラクターチームと兼任することになりました。これまでは、ミッフィーやムーミン、リラックマなどの商品を展開していたのですが、「せっかく自分が手がけられるなら大好きなドラえもんをやりたい!」と思い、上長に提案したところ即OKをもらうことができました。

──ドラえもんを使うとなったとき、どのような商品をイメージしましたか? 布団収納ケースが印象的ですが、最初から押し入れに入ったドラえもんを想像していたのでしょうか。
ドラえもんシリーズに共通して、「大人が使いやすいドラえもんグッズをつくりたい」ということが前提にありました。従来のドラえもんグッズは、子ども向けのかわいらしいものが多く、私のような大人が普段使いできるグッズが少なかったんです。

布団収納ケースについては、「のび太目線」から始まっています。原作者の藤子先生ご自身も「ぼくは『のび太』でした」とおっしゃっているのですが、ドラえもんファンはのび太目線で見る方が多いと思うんです。私も同じで、「ドラえもんがそばにいてくれたらいいのにな」と思っていたので、なにがほしいかと考えたとき、ひみつ道具ではなくて、ドラえもんそのものだという答えに行き着いたんです。そばにいてくれる大きなドラえもんをつくろうというところから、布団収納ケースが生まれました。
ドラえもん 押し入れでおやすみぬいぐるみ布団収納ケース
ドラえもん 押し入れでおやすみぬいぐるみ布団収納ケース
──道具がほしいのではなく、「ドラえも~~~ん」と泣きつきたかったんですね(笑)。
そうなんです! この布団収納ケースは、ドラえもんの存在を感じられるサイズ感にもこだわっています。ドラえもんの身長は129.3cm。一度実寸がどれくらいか紙で試してみたのですが、大きすぎてイメージと違いました。だから収納ケースは103cmに仕上げています。ドラえもんがここにいて、見守ってくれている、という感じを大事にしたかった。自分がのび太目線になったときに、押し入れにいるドラえもんはこれくらいかなと。ほかにも、ヒゲの長さや鼻筋の位置、鼻の大きさなど微調整を重ね、サンプルを5、6回やり直して製作に8カ月くらいかかりました。
──ファンでないとわからないポイントが詰まっているのですね。ほかにはどのような商品があるのですか?
先ほどお話ししたオノマトペをグッズに表現したのがバスタオルです。文字も響きもかわいいので、そのままプリントしました。
ドラえもん ガーゼと綿パイルのダブルフェイス大迫力ふんわりバスタオル
ドラえもん ガーゼと綿パイルのダブルフェイス大迫力ふんわりバスタオル
また、大人に持ってもらいやすい、一見シンプルな見た目のトートバッグがあります。実は、内生地にドラえもんの世界観が広がっているんですよ。どら焼きをテーマにしたものでは、漫画からドラえもんが食べているシーンを抜粋しました。タイムマシーンがテーマのものでは、時空空間の柄にしています。どのイラストも、「漫画の何ページのこのコマ!」と指定して入れました。また、原作のドラえもんファンに使ってほしいので、漫画を入れて持ち歩けるように、内ポケットはてんとう虫コミックスがピッタリ入るサイズにしています。
ドラえもん 内生地も楽しいトートバッグ
ドラえもん 内生地も楽しいトートバッグ

熱量が伝わり、返ってくる

──可愛い……そして田中さんのドラえもん愛をバシバシ感じます! ご自身の好きな気持ちから始まったドラえもんシリーズですが、自分のやりたい企画を通し、そしてヒットを生み出せた秘訣はなんだと感じていますか?
熱量が伝わったというのは大きいかもしれないですね。世の中的にも、つくり手の熱量を重んじる風潮になっていますし、私の上司もそこを大切にしてくれています。会社としても、熱意のある人がやったほうが、その思いが反映されていいものができるという志向が強いです。

制度としても、社内に部活事務局があります。代表的なものが「フェリシモ猫部」で、お客さまも含めて猫好きな方と一緒に「好き」を追求しています。フェリシモという社名は、「最大級で最上級のしあわせ」を意味するのですが、関西弁で意訳すると「めっちゃハッピー」という意味。そのハッピーは、「ともにしあわせになるしあわせ」なんです。ドラえもんのファンの方とも「めっちゃハッピー」になるために、好きという熱い思いを大切にしています。

また、「YOU+MORE!」での経験も大きかったと思います。決まった形のグッズに絵柄を刷るのではなく、そもそもの形を覆すようなものをつくって、ヒットを蓄積してきました。「YOU+MORE!」の持つ共感を呼ぶパワーに、私自身の「ドラえもん愛」が乗っかって、上司もHPやカタログをつくってくれた社内の人たちも可能性を感じてくれたのかなと思います。

──2019年8月の発売後、反響はいかがですか?
おかげさまで嬉しいお声がたくさん来ています。SNSを見ていても、ファンの方は私がこだわって熱量をかけてやった部分に気づいてくださることが多くて。HPやカタログで解説しているわけでもないのに、見てほしかったところに気づいてくれているんですよ。それがすごく嬉しかったです。ドラえもんが短い足を組んでいるところもポイントの一つなのですが、そこに気づいて突っ込んでくれたり(笑)。ほかのグッズでも、「このイラストは何巻のあのシーンだ」とマニアックな部分に気づいてくださるので、本当に嬉しいですね。

──次はこのシーンで商品をつくってほしい、という要望もありそうですね。
そうですね。みなさまの反響を見ていると、「帰ってきたドラえもん」や「おばあちゃんの思い出」のような有名な話を引用した部分ではなく、「え! ここを!?」というシーンに反応してくださる方が多いので、マニアックなものを求められているのかなと思いました。あまりメジャーではないほうがいいのかなと。だた、マニアックすぎると、知らない方も多くなってしまうので、そのさじ加減が悩みポイントですね。いま、次の企画も進めているのですが、「ニッチなシーンを使いたいけどわかる人が少なそうだな」「こっちのほうが人気かもしれないけど、私はあのシーンを入れたい!」とひとり葛藤しています(笑)。
──たしかに、漫画に付箋がたくさん貼ってありますね! 普通、職場で好きな漫画を読むことってないですが、これも好きを仕事にできたからこそできる役得ですね (笑)。
そうですね。逆に、好きという熱量がなかったら苦行ですよね。おかげさまで楽しく仕事をさせてもらっています。いまもドラえもんの次の企画に向けて、1コマ1コマ選んでいるので、これからもその熱量が伝わる商品をつくっていきたいですね。見てくださったお客さまが、その熱量に気づいてくれることが私の原動力になっているので、商品を通してお客さまをもっと楽しませたいです!

──熱量が伝わり、返ってくる。“好き”のフィードバックループができているのですね。次の企画がとても楽しみです! 本日はありがとうございました。
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