「睡眠カフェ」の発起人に聞く、コーヒーと睡眠の親和性とは ネスレ日本 飲料事業本部 髙岡二郎さん
3月18日は「睡眠の日」。advanced by massmedianは短期集中連載で、寝具メーカーやスリープテック企業などを取材し、睡眠とハイパフォーマーの関係について掘り下げます。
東京の大井町にある、「ネスカフェ 睡眠カフェ」という施設をご存知でしょうか。名前のとおり、このカフェが提供するメニューは「睡眠」です。2019年より、大井町に常設しているというこの施設は2020年の3月で、開業から1周年を迎えました。
そんな睡眠カフェを運営しているのは、コーヒーの製造・販売を行うネスレ日本。「コーヒー」と「睡眠」。一見対局にありそうな関係ですが、なぜネスレ日本は睡眠カフェを常設店として開業したのでしょうか? この睡眠カフェの発起人である、ネスレ日本 飲料事業本部 スターバックスCPG&RTDビジネス部 部長の髙岡二郎(たかおかじろう)さんにその理由について尋ねました。
東京の大井町にある、「ネスカフェ 睡眠カフェ」という施設をご存知でしょうか。名前のとおり、このカフェが提供するメニューは「睡眠」です。2019年より、大井町に常設しているというこの施設は2020年の3月で、開業から1周年を迎えました。
そんな睡眠カフェを運営しているのは、コーヒーの製造・販売を行うネスレ日本。「コーヒー」と「睡眠」。一見対局にありそうな関係ですが、なぜネスレ日本は睡眠カフェを常設店として開業したのでしょうか? この睡眠カフェの発起人である、ネスレ日本 飲料事業本部 スターバックスCPG&RTDビジネス部 部長の髙岡二郎(たかおかじろう)さんにその理由について尋ねました。
──髙岡さんが「睡眠カフェ」というコンセプトの発案者だとお聞きしました。どうしてネスレが睡眠カフェの運営をすることになったのでしょうか? 「コーヒー」と「睡眠」にはどちらかというと対極にあるイメージがあるのですが…。
きっかけとなったのは、2010年半ばころ。私が「ネスカフェ ゴールドブレンド カフェインレス」という商品のマーケティングを担当していたときのことでした。これは名前のとおり、カフェインが97%カットされている、いわゆる「カフェインレスコーヒー」と呼ばれる商品です。
当時、カフェインレスコーヒーは妊娠中や授乳期の方が飲む特別な飲み物というイメージがあり、「自分はカフェインレスコーヒーを飲む対象ではない」と思う人が多くいました。しかし、カフェインレスコーヒーは、そのような特別な商品ではありません。カフェインが入っていないことは、多くの人の生活シーンにおいても利点になるのです。
それが活かされるタイミングの一つが、「睡眠」です。「カフェインが入っていない」ということは、「寝る前でも安心して飲めるコーヒー」でもあります。
もともと、コーヒーの香りは人をホッとさせてくれると言われており、眠りの質を保つことが期待できます。要は、通常のカフェイン入りのコーヒーであっても、飲まずに香りを嗅ぐだけであれば、良質な睡眠体験を得るために有効なのです。 ──つまり、「コーヒー」と「睡眠」自体は、コーヒーにカフェインさえなければ、相性が良いということですか。それは知りませんでした。
あくまで、「カフェイン」と「睡眠」の相性が良くないだけ。だからこそ、97%カフェインがカットされているカフェインレスコーヒーは、万人へおすすめしたいと、ネスレでは考えていました。
このことを多くのお客さまに理解していただくために、「カフェインレスコーヒーを飲んで、リラックスして眠れる体験を、ネスレが提供するのはどうだろうか?」と考えたことが、睡眠カフェ企画の始まりでした。そして、2017年3月に「ネスカフェ 原宿」にて2週間限定の体験型カフェ「睡眠カフェ」をオープンさせました。
──「睡眠カフェ」の初イベントはどのような反応が見られたのでしょうか?
イベント実施前は、「わざわざ外出をしてまで、睡眠をしにきてくれるお客さまがいるのか?」という懸念があり、不安な部分もありました。しかし、イベント当日には、開店前から2時間待ちの行列ができていたのです。わざわざ、外で仮眠を取りたいと思う人たちがこんなにたくさんいるとは…と良い意味で予想を裏切れられましたね。同時に、良質で、新しい睡眠体験を得ることへのニーズを強く感じました。
──多くの人が睡眠に悩みを抱えている、あるいは現状の睡眠に満足していないということですよね。常設店として営業している大井町の「ネスカフェ 睡眠カフェ」では、実際にどのようなメニューを提供しているのでしょうか?
大井町の店舗では、1時間以上の長時間の睡眠を取られるお客さまには、先述のとおりカフェインレスコーヒーを寝る前に提供し、その後に眠っていただいています。またほかに、カフェインを含むコーヒーと短い睡眠時間を組み合わせた、「コーヒーナップ」というメニューも提供しています。「コーヒーナップ」とは、カフェインを含むコーヒーを飲み、そのあとに、15分から20分程度の仮眠をしていただくメニューになります。
なぜこのようなメニューを提供しているのかというと、カフェインは、摂取してからおよそ30分程度で体内に吸収され始めると言われています。そのため、15~20分程度の短い仮眠をとる場合、カフェイン入りのコーヒーを飲んだあとに眠ることで、目が覚めるとほぼ同時にカフェインでシャキッとし、その後のパフォーマンスに役立つと言われています。そのため、通常の仮眠よりも、スッキリとした目覚めになります。
近年、仕事を効率化させるための施策として、昼寝や仮眠を推奨する企業も増えているかと思います。これらの施策で大切になるのが睡眠時間です。眠りから目が覚めた直後は、「眠気やだるさが残り、ぼんやりとしてしまう…」ということが多いと思います。「睡眠慣性」と呼ばれるこの現象は睡眠時間が長いほど、長く生じやすい現象です。そのため、うまく睡眠時間をコントロールできなければ、起床直後の仕事の効率をかえって下げたり、夜の睡眠に影響を与えてしまったりとリスクがあるのです。
この睡眠慣性のリスクを避けるためにも、短時間の仮眠は有効であると言われています。さらにカフェインの吸収にかかる時間も合わせて考えると、昼寝とコーヒーの組み合わせは、とてもベストマッチであると、私たちは考えています。 ──科学的な視点から、昼寝とコーヒーの相性の良さは実証されているわけですね。
加えて、「睡眠カフェ」では2019年12月に、より質の高い「コーヒーナップ」を体験していただくために、入眠と起床をサポートする映像コンテンツを制作しました。これは入眠と起床に最適な光と音を木漏れ日や水滴など自然の風景で再現した映像で、眠りの専門家である広島大学の林光緒先生に監修していただきました。私も試してみましたが、すっ…と眠りに落ちる感覚と、スッキリとした目覚めを体感できる、すごくおすすめのコンテンツになっていますよ。
現在の営業時間は9時~18時までとなっており、一番多いのは昼過ぎのビジネスパーソンの利用ですね。また、子育て中の女性の方たちにもご利用いただくこともありますね。「自宅ではなくなぜ?」と思うかもしれませんが、家庭から少しだけ距離をおける場所として、一時的に家から離れて「一人で寝る」という形でも利用されています。
──ビジネスパーソンの利用者は想像できましたが、子育て中の女性たちも利用しているとは…。思わぬニーズが生まれているのですね。
私はネスレに入社してから2020年で12年目になるのですが、コーヒーに対する市場のニーズは着実に変化していると感じています。さまざまなブランドや商品が増えて、市場が膨張していて、単に美味しいだけでは評価がされにくくなっている。美味しいに加えて、どのような体験を提供できるのか。つまり、新しいコーヒーの飲み方の提案が必要になってきているんです。「睡眠カフェ」は、まさに私たちが提供できる新しいコーヒー体験の一つですね。
また、コーヒーが持つ魅力は、「カフェイン」などのコーヒーに含まれる成分の持つ特徴以外にもたくさんあると思っています。「コーヒーブレイク」という言葉があるように、コーヒーを飲むことで生まれる会話があります。それは会社であったり、カフェであったり、家であったり。場所を選ばず、生活のあらゆる部分に結びつく可能性を持っていると思っています。だから私は今後とも、当社の商品を通してさまざまな人たちの生活の質に貢献できる取り組みを続けていきたいと思います。 ──コーヒーを通した新しい体験。それを通じて、人々の生活の質を向上させていくこと。それこそが、ネスレがこの先に目指していくコーヒーの未来というわけですね。
この先も「睡眠カフェ」に続く、新しいコーヒー体験をお客さまに提供していきたいと思います。その一つは、「コーヒーの飲み分け」ですね。朝と昼はカフェイン入りコーヒーを飲むことで活動的に、そして夜にはカフェインレスコーヒーを飲むことで、より睡眠の質を向上させていく。コーヒーの飲み分けによって、より生活を充実できるということをもっと多くの人に広めていきたいです。
ネスレが「睡眠カフェ」の取り組みを始めるまで、コーヒーと睡眠の関係について、知らない人がほとんどだったと思います。これと同じように、まだまだコーヒーには多くの人に知られていない一面がたくさんあるのです。そこをネスレでは訴求していきたいと思います。
──「コーヒー」と「睡眠」という一見すると相容れない組み合わせから、コーヒーが持つさまざまな可能性についてお話いただきました。ネスレがこの先提案する、新しいコーヒー体験がどのようなものになるのか、とても楽しみです。お話いただき、ありがとうございました!
きっかけとなったのは、2010年半ばころ。私が「ネスカフェ ゴールドブレンド カフェインレス」という商品のマーケティングを担当していたときのことでした。これは名前のとおり、カフェインが97%カットされている、いわゆる「カフェインレスコーヒー」と呼ばれる商品です。
当時、カフェインレスコーヒーは妊娠中や授乳期の方が飲む特別な飲み物というイメージがあり、「自分はカフェインレスコーヒーを飲む対象ではない」と思う人が多くいました。しかし、カフェインレスコーヒーは、そのような特別な商品ではありません。カフェインが入っていないことは、多くの人の生活シーンにおいても利点になるのです。
それが活かされるタイミングの一つが、「睡眠」です。「カフェインが入っていない」ということは、「寝る前でも安心して飲めるコーヒー」でもあります。
もともと、コーヒーの香りは人をホッとさせてくれると言われており、眠りの質を保つことが期待できます。要は、通常のカフェイン入りのコーヒーであっても、飲まずに香りを嗅ぐだけであれば、良質な睡眠体験を得るために有効なのです。 ──つまり、「コーヒー」と「睡眠」自体は、コーヒーにカフェインさえなければ、相性が良いということですか。それは知りませんでした。
あくまで、「カフェイン」と「睡眠」の相性が良くないだけ。だからこそ、97%カフェインがカットされているカフェインレスコーヒーは、万人へおすすめしたいと、ネスレでは考えていました。
このことを多くのお客さまに理解していただくために、「カフェインレスコーヒーを飲んで、リラックスして眠れる体験を、ネスレが提供するのはどうだろうか?」と考えたことが、睡眠カフェ企画の始まりでした。そして、2017年3月に「ネスカフェ 原宿」にて2週間限定の体験型カフェ「睡眠カフェ」をオープンさせました。
──「睡眠カフェ」の初イベントはどのような反応が見られたのでしょうか?
イベント実施前は、「わざわざ外出をしてまで、睡眠をしにきてくれるお客さまがいるのか?」という懸念があり、不安な部分もありました。しかし、イベント当日には、開店前から2時間待ちの行列ができていたのです。わざわざ、外で仮眠を取りたいと思う人たちがこんなにたくさんいるとは…と良い意味で予想を裏切れられましたね。同時に、良質で、新しい睡眠体験を得ることへのニーズを強く感じました。
──多くの人が睡眠に悩みを抱えている、あるいは現状の睡眠に満足していないということですよね。常設店として営業している大井町の「ネスカフェ 睡眠カフェ」では、実際にどのようなメニューを提供しているのでしょうか?
大井町の店舗では、1時間以上の長時間の睡眠を取られるお客さまには、先述のとおりカフェインレスコーヒーを寝る前に提供し、その後に眠っていただいています。またほかに、カフェインを含むコーヒーと短い睡眠時間を組み合わせた、「コーヒーナップ」というメニューも提供しています。「コーヒーナップ」とは、カフェインを含むコーヒーを飲み、そのあとに、15分から20分程度の仮眠をしていただくメニューになります。
なぜこのようなメニューを提供しているのかというと、カフェインは、摂取してからおよそ30分程度で体内に吸収され始めると言われています。そのため、15~20分程度の短い仮眠をとる場合、カフェイン入りのコーヒーを飲んだあとに眠ることで、目が覚めるとほぼ同時にカフェインでシャキッとし、その後のパフォーマンスに役立つと言われています。そのため、通常の仮眠よりも、スッキリとした目覚めになります。
近年、仕事を効率化させるための施策として、昼寝や仮眠を推奨する企業も増えているかと思います。これらの施策で大切になるのが睡眠時間です。眠りから目が覚めた直後は、「眠気やだるさが残り、ぼんやりとしてしまう…」ということが多いと思います。「睡眠慣性」と呼ばれるこの現象は睡眠時間が長いほど、長く生じやすい現象です。そのため、うまく睡眠時間をコントロールできなければ、起床直後の仕事の効率をかえって下げたり、夜の睡眠に影響を与えてしまったりとリスクがあるのです。
この睡眠慣性のリスクを避けるためにも、短時間の仮眠は有効であると言われています。さらにカフェインの吸収にかかる時間も合わせて考えると、昼寝とコーヒーの組み合わせは、とてもベストマッチであると、私たちは考えています。 ──科学的な視点から、昼寝とコーヒーの相性の良さは実証されているわけですね。
加えて、「睡眠カフェ」では2019年12月に、より質の高い「コーヒーナップ」を体験していただくために、入眠と起床をサポートする映像コンテンツを制作しました。これは入眠と起床に最適な光と音を木漏れ日や水滴など自然の風景で再現した映像で、眠りの専門家である広島大学の林光緒先生に監修していただきました。私も試してみましたが、すっ…と眠りに落ちる感覚と、スッキリとした目覚めを体感できる、すごくおすすめのコンテンツになっていますよ。
──「睡眠カフェ」が常設されて1年ほど経ち、映像コンテンツなどが新たに導入されているとのことですが、実際に「睡眠カフェ」を利用するのはどのような方たちなのでしょうか?
現在の営業時間は9時~18時までとなっており、一番多いのは昼過ぎのビジネスパーソンの利用ですね。また、子育て中の女性の方たちにもご利用いただくこともありますね。「自宅ではなくなぜ?」と思うかもしれませんが、家庭から少しだけ距離をおける場所として、一時的に家から離れて「一人で寝る」という形でも利用されています。
──ビジネスパーソンの利用者は想像できましたが、子育て中の女性たちも利用しているとは…。思わぬニーズが生まれているのですね。
私はネスレに入社してから2020年で12年目になるのですが、コーヒーに対する市場のニーズは着実に変化していると感じています。さまざまなブランドや商品が増えて、市場が膨張していて、単に美味しいだけでは評価がされにくくなっている。美味しいに加えて、どのような体験を提供できるのか。つまり、新しいコーヒーの飲み方の提案が必要になってきているんです。「睡眠カフェ」は、まさに私たちが提供できる新しいコーヒー体験の一つですね。
また、コーヒーが持つ魅力は、「カフェイン」などのコーヒーに含まれる成分の持つ特徴以外にもたくさんあると思っています。「コーヒーブレイク」という言葉があるように、コーヒーを飲むことで生まれる会話があります。それは会社であったり、カフェであったり、家であったり。場所を選ばず、生活のあらゆる部分に結びつく可能性を持っていると思っています。だから私は今後とも、当社の商品を通してさまざまな人たちの生活の質に貢献できる取り組みを続けていきたいと思います。 ──コーヒーを通した新しい体験。それを通じて、人々の生活の質を向上させていくこと。それこそが、ネスレがこの先に目指していくコーヒーの未来というわけですね。
この先も「睡眠カフェ」に続く、新しいコーヒー体験をお客さまに提供していきたいと思います。その一つは、「コーヒーの飲み分け」ですね。朝と昼はカフェイン入りコーヒーを飲むことで活動的に、そして夜にはカフェインレスコーヒーを飲むことで、より睡眠の質を向上させていく。コーヒーの飲み分けによって、より生活を充実できるということをもっと多くの人に広めていきたいです。
ネスレが「睡眠カフェ」の取り組みを始めるまで、コーヒーと睡眠の関係について、知らない人がほとんどだったと思います。これと同じように、まだまだコーヒーには多くの人に知られていない一面がたくさんあるのです。そこをネスレでは訴求していきたいと思います。
──「コーヒー」と「睡眠」という一見すると相容れない組み合わせから、コーヒーが持つさまざまな可能性についてお話いただきました。ネスレがこの先提案する、新しいコーヒー体験がどのようなものになるのか、とても楽しみです。お話いただき、ありがとうございました!