スリープマネジメントでパフォーマンスを高める。睡眠障害の経済損失をケアする 西川 執行役員 松下恒久さん

3月18日は「睡眠の日」。advanced by massmedianは短期集中連載で、スリープテックや睡眠マーケットに新たに参入する企業などを取材し、睡眠とハイパフォーマーの関係について掘り下げます。
眠りに悩みを抱える人にとって「睡眠の可視化」は重要なポイント。今回は、IoTを駆使したスリープテック事業を展開し、スリープマネジメントにいち早く取り組み始めた布団の「西川」を取材します。同社の営業戦略などを担う営業企画統括部 統括部長の松下恒久(まつしたつねひさ)さんに、ハイパフォーマーの睡眠から睡眠不足がおよぼす経済への影響まで、広い視野でお話を伺いました。
眠りに悩みを抱える人にとって「睡眠の可視化」は重要なポイント。今回は、IoTを駆使したスリープテック事業を展開し、スリープマネジメントにいち早く取り組み始めた布団の「西川」を取材します。同社の営業戦略などを担う営業企画統括部 統括部長の松下恒久(まつしたつねひさ)さんに、ハイパフォーマーの睡眠から睡眠不足がおよぼす経済への影響まで、広い視野でお話を伺いました。
──寝具の製造・販売だけでなく、「ねむりの相談所®」をはじめた経緯について教えてください。
睡眠に対する悩みを抱えている人は多いと思います。しかしながら、自分の寝ているときの状況を把握することは難しい。「ねむりの相談所®」では、その点をサポートしています。当社の研究部門である「日本睡眠科学睡眠研究所」が開発した、縦3cm×横3cmのコイン型の活動量計を相談者に装着してもらい、それによって、入眠までにかかる時間や、入眠後の動き、例えば、何回寝返りをうったかなど就寝時の状況、また日中の活動量までを可視化します。
その後、眠りに関する当社認定の専門家である「スリープマスター」が、測定したデータをもとに相談者の眠りの特徴などを見極め、体にあった寝具などのアドバイスを行います。
2018年4月からは「寝室チェックシステム」を導入しました。これは、相談者の体に取り付けるタイプではなく、枕元に専用の計測器を置いてもらい、眠っている間の温度・湿度・照度・音圧を測るものです。こうして、相談者の眠りの「状態」と「環境」をチェックすることが可能になりました。
──スリープテック事業におけるパナソニックとの協業についても伺いたいです。
2020年3月18日にパナソニックと協業で「快眠環境サポートシステム」をスタートします。具体的には、西川のマットレス商品である[エアー]にセンサーを埋め込むことで、睡眠中の呼吸など微細な動きから、睡眠時間や睡眠状態をはじめとした睡眠データを計測し、睡眠状態にあわせて、パナソニックのエアコンによる寝室の空調、照明器具(LEDシーリングライト)によるあかりの調整を行います。就寝時や起床時にゆったりくつろげる音楽や目覚めに適した音楽を再生することができます。そして、睡眠のパーソナルデータを専用アプリ「Your Sleep」に集約させ、パーソナライズド アドバイスが可能になります。
なお、パナソニックとの協業は以前から行っています。2017年には、日本橋西川に「睡眠環境サポートルーム」を設置。2019年2月に、西川 東京オフィス内につくった社員専用のお昼寝ルーム「ちょっと寝ルーム」にも、パナソニックの音と光の制御技術が取り入れられ、快適なお昼寝空間を演出してくれています。
寝具で可能なことは西川が担い、照明・空調など環境部分においては総合家電メーカーとしてのパナソニックの力を発揮していただいています。
ビジネスパーソンを中心に、日本人は「ぐっすり眠れない」「夜中に目が覚める」などの睡眠に関する悩みを抱えている人は多いといわれています。またOECD(経済協力開発機構)が2018年に調査したデータによると、OECD参加国の中で日本人の睡眠時間は最低と示されています。
しかし、実際はハイパフォーマーほど、睡眠を大事にするものです。例えば、一流アスリートは、眠りに細心の注意を払っています。ハードなトレーニングによって、筋肉組織が壊れます。筋肉を修復するために、血行をよくし老廃物を流すことが求められます。こういった回復力のサポートをするのが当社製品の[エアー]です。
血行促進には、点で体を支えることが有効と考えています。[エアー]は体圧を分散させる構造を持ち、眠っている間に回復を促進させる。以前から当社にあった技術を、最新の素材とデザインでリブランディングした製品です。[エアー]は、より良いパフォーマンスを発揮するためのコンディショングマットレスとして、多くのアスリートに使っていただいております。いまではプロ・アマあわせ、数千人レベルでアスリートをサポートしています。
もちろん、[エアー]はアスリート向け製品というわけではありません。一般の方のパフォーマンスもサポートします。病気というほどではないが「なんとなく体調が悪い」といった理由で、ハイパフォーマンスを発揮できない人は多いでしょう。西川では、そういった問題を「睡眠」を通し、ソリューションしていきます。
当社が毎年発表している「睡眠白書」によると、アンケート調査1万人の半数以上が、不眠症の疑いがあるというデータが出ています。また年代別に見ると、働き盛りの20~30代がより顕著に結果が現れています。
さらに、ビジネスパーソンをクラスター分析してみると、比較的睡眠の満足度が高いクラスターは、「コツコツ働き続けたいビジネスパーソン」「仕事に意欲的 会社に尽くすビジネスパーソン」「現実逃避型 ビジネスパーソン」とわかっています。一方で、睡眠満足度の低いクラスターは、「現状に不安を持つ 悩み多きビジネスパーソン」「出世意欲の高い ポテンシャルが高いビジネスパーソン」です。
仕事への意欲が高く、ハイパフォーマーだと推測できる「出世意欲の高い ポテンシャルが高いビジネスパーソン」は、精神的に安定していると思いきや、夢の調査では「追いかけられる夢」を見る割合が24.4%とビジネスパーソン全体(17.2%)と比較して高い。仕事における悩みがメンタルに影響を及ぼしてしまっていることがわかっています。また、私生活を顧みない傾向があるため、生活にメリハリがつきにくく、睡眠リズムを整えることができていません。
そのほかに、2017年の経済産業省のデータによると、「健康経営」に取り組みたいと考えている企業は53%。また、米シンクタンクのランド研究所によると、睡眠不足による経済損失は15兆円にも上ります。「死亡率上昇による労働人口の減少」「仕事のパフォーマンス劣化による経営効率の低下」などの視点で試算され、「睡眠不足」が経済にも大きな影響を与えることが示されています。
──今後、布団の西川が目指すものについて教えてください。
西川には454年の歴史があります。当社の起源は、天秤棒を担いで大阪や名古屋へ商売をしに赴く、近江商人だったそうです。そして、徳川家康が江戸へ移った10年後、三越の前身である越後屋よりも先に、江戸に店を開きました。布団を売り出したのは明治からで、江戸時代は蚊帳を売っていたそうです。
このように、西川は、伝統と革新で成長してきました。これは、時代に合わせ、どうアプローチをしていくかということに尽きます。今は、IoTの時代となりました。テクノロジーを使い、生活者が簡単にわかりやすく自分の睡眠状態を理解できるようにすることが求められているのです。
病気ほどではない体の不調に対する予防医療として「睡眠」の果たす役割は大きいと感じています。未病のためのスリープマネジメントが、より必要となる時代がやってくるでしょう。西川は、長く「睡眠」と向き合ってきた企業として、スリープマネジメントを牽引していきたいと考えています。
──充分な睡眠を取り、健康寿命を伸ばす。そうすることで健康経営企業も増えて、経済が活性化する。スリープマネジメントは日本の今後の成長戦略に不可欠ですね。本日はありがとうございました。
睡眠に対する悩みを抱えている人は多いと思います。しかしながら、自分の寝ているときの状況を把握することは難しい。「ねむりの相談所®」では、その点をサポートしています。当社の研究部門である「日本睡眠科学睡眠研究所」が開発した、縦3cm×横3cmのコイン型の活動量計を相談者に装着してもらい、それによって、入眠までにかかる時間や、入眠後の動き、例えば、何回寝返りをうったかなど就寝時の状況、また日中の活動量までを可視化します。

2017年3月にスタートした「ねむりの相談所®」。2020年3月現在、全国で約40店舗となり、今後の3年間で出店を倍増する計画。西川の研究部門である「日本睡眠科学研究所」が独自に発行している「スリープマスター」という資格を保持している者が、必ず「ねむりの相談所®」には在籍している。

体に取り付けるコイン型の活動量計
2018年4月からは「寝室チェックシステム」を導入しました。これは、相談者の体に取り付けるタイプではなく、枕元に専用の計測器を置いてもらい、眠っている間の温度・湿度・照度・音圧を測るものです。こうして、相談者の眠りの「状態」と「環境」をチェックすることが可能になりました。

2020年3月18日にパナソニックと協業で「快眠環境サポートシステム」をスタートします。具体的には、西川のマットレス商品である[エアー]にセンサーを埋め込むことで、睡眠中の呼吸など微細な動きから、睡眠時間や睡眠状態をはじめとした睡眠データを計測し、睡眠状態にあわせて、パナソニックのエアコンによる寝室の空調、照明器具(LEDシーリングライト)によるあかりの調整を行います。就寝時や起床時にゆったりくつろげる音楽や目覚めに適した音楽を再生することができます。そして、睡眠のパーソナルデータを専用アプリ「Your Sleep」に集約させ、パーソナライズド アドバイスが可能になります。

寝具で可能なことは西川が担い、照明・空調など環境部分においては総合家電メーカーとしてのパナソニックの力を発揮していただいています。
ハイパフォーマーほど睡眠を気にする
──では改めて、ビジネスパーソンやハイパフォーマーと睡眠の関わりについて、どのように捉えていらっしゃるか、教えていただけますか?ビジネスパーソンを中心に、日本人は「ぐっすり眠れない」「夜中に目が覚める」などの睡眠に関する悩みを抱えている人は多いといわれています。またOECD(経済協力開発機構)が2018年に調査したデータによると、OECD参加国の中で日本人の睡眠時間は最低と示されています。
しかし、実際はハイパフォーマーほど、睡眠を大事にするものです。例えば、一流アスリートは、眠りに細心の注意を払っています。ハードなトレーニングによって、筋肉組織が壊れます。筋肉を修復するために、血行をよくし老廃物を流すことが求められます。こういった回復力のサポートをするのが当社製品の[エアー]です。
血行促進には、点で体を支えることが有効と考えています。[エアー]は体圧を分散させる構造を持ち、眠っている間に回復を促進させる。以前から当社にあった技術を、最新の素材とデザインでリブランディングした製品です。[エアー]は、より良いパフォーマンスを発揮するためのコンディショングマットレスとして、多くのアスリートに使っていただいております。いまではプロ・アマあわせ、数千人レベルでアスリートをサポートしています。
もちろん、[エアー]はアスリート向け製品というわけではありません。一般の方のパフォーマンスもサポートします。病気というほどではないが「なんとなく体調が悪い」といった理由で、ハイパフォーマンスを発揮できない人は多いでしょう。西川では、そういった問題を「睡眠」を通し、ソリューションしていきます。

西川 執行役員 営業企画統括部 統括部長 松下恒久さん
新卒で伊勢丹(現:三越伊勢丹ホールディングス)に入社。長年、婦人ファッションに携わってきた。2008~2011年に伊勢丹 新宿店のリビングフロア改革に携わったことで、西川とのつながりができ、三越伊勢丹ホールディングスを退社後、西川へ入社。現在は、営業企画統括として、営業企画・営業戦略・商品戦略・宣伝・広告と、小売りの経験を活かし、多岐にわたる業務を担っている。
新卒で伊勢丹(現:三越伊勢丹ホールディングス)に入社。長年、婦人ファッションに携わってきた。2008~2011年に伊勢丹 新宿店のリビングフロア改革に携わったことで、西川とのつながりができ、三越伊勢丹ホールディングスを退社後、西川へ入社。現在は、営業企画統括として、営業企画・営業戦略・商品戦略・宣伝・広告と、小売りの経験を活かし、多岐にわたる業務を担っている。
睡眠不足の経済損失は15兆円
──ビジネスパーソンの睡眠の状況について教えていただけますか。当社が毎年発表している「睡眠白書」によると、アンケート調査1万人の半数以上が、不眠症の疑いがあるというデータが出ています。また年代別に見ると、働き盛りの20~30代がより顕著に結果が現れています。


仕事への意欲が高く、ハイパフォーマーだと推測できる「出世意欲の高い ポテンシャルが高いビジネスパーソン」は、精神的に安定していると思いきや、夢の調査では「追いかけられる夢」を見る割合が24.4%とビジネスパーソン全体(17.2%)と比較して高い。仕事における悩みがメンタルに影響を及ぼしてしまっていることがわかっています。また、私生活を顧みない傾向があるため、生活にメリハリがつきにくく、睡眠リズムを整えることができていません。
そのほかに、2017年の経済産業省のデータによると、「健康経営」に取り組みたいと考えている企業は53%。また、米シンクタンクのランド研究所によると、睡眠不足による経済損失は15兆円にも上ります。「死亡率上昇による労働人口の減少」「仕事のパフォーマンス劣化による経営効率の低下」などの視点で試算され、「睡眠不足」が経済にも大きな影響を与えることが示されています。
──今後、布団の西川が目指すものについて教えてください。
西川には454年の歴史があります。当社の起源は、天秤棒を担いで大阪や名古屋へ商売をしに赴く、近江商人だったそうです。そして、徳川家康が江戸へ移った10年後、三越の前身である越後屋よりも先に、江戸に店を開きました。布団を売り出したのは明治からで、江戸時代は蚊帳を売っていたそうです。
このように、西川は、伝統と革新で成長してきました。これは、時代に合わせ、どうアプローチをしていくかということに尽きます。今は、IoTの時代となりました。テクノロジーを使い、生活者が簡単にわかりやすく自分の睡眠状態を理解できるようにすることが求められているのです。
病気ほどではない体の不調に対する予防医療として「睡眠」の果たす役割は大きいと感じています。未病のためのスリープマネジメントが、より必要となる時代がやってくるでしょう。西川は、長く「睡眠」と向き合ってきた企業として、スリープマネジメントを牽引していきたいと考えています。
