──木村さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
新卒で入社したのはP&Gです。入社はバブル崩壊の影響で就職戦線に陰りがでてきた1994年。当時50社強応募して、唯一受かったのが同社のマーケティング部門(当時は宣伝部)でした。

P&Gは部門別採用を導入していたため、入社後すぐにブランドマネジメントを担当。6年目には、とある新規ブランドの日本導入を任され、そのテストマーケットが成功した功績をもって、メディアマネージャーに昇進することになりました。業務内容は、全ブランドの広告予算とメディア枠の統括。具体的にはテレビやデジタルのメディア戦略、バイイング、プランニングを手掛けました。

同社でメディアマネージャーを3年ほど務めた後、ソニーのグループ会社「ソニーマーケティング」がメディアのエキスパート人材を求めていると知り、転職を決意。同社では、雑誌や交通広告のメディアバイイングのほか、出版社とのリレーションを活かしたプロダクトPRに力を入れました。さらにイベント担当として、大型イベントにおける空間プロデュースや体験づくりの企画などを担当しました。

その後、4年ほどして外資系の金融機関・INGダイレクトに誘われ、再度転職。実は、金融業界には漠然とした苦手意識があったのですが、同社の「ダイレクトバンキング」というビジネスモデルを知り、従来の銀行のような支店ベースの営業とは異なり、マーケティングによる直接集客、口座獲得ができるところに魅力を感じて入社しました。ところが入社して1年半後にリーマンショックの影響で会社清算による解雇…。そのとき、僕は自身のこれまでのキャリアを見つめ直し、転職に対する指針を決めたのです。
サンリオ CMO マーケティング本部長 木村真琴さん<br />
P&G、ソニーマーケティング、INGダイレクトにてブランドマネジメント、メディアプランニング、イベント企画、広告制作などを多岐にわたり経験。2009年には西友に入社し、「カカクヤスク」「バスプラ」「みなさまのお墨付き」「ど生鮮」「プライスロック」などを新たなブランド資産として確立。2016年2月、西友マーケティング本部バイスプレジデントに着任。2018年1月、サンリオに入社し、現在に至る。
サンリオ CMO マーケティング本部長 木村真琴さん
P&G、ソニーマーケティング、INGダイレクトにてブランドマネジメント、メディアプランニング、イベント企画、広告制作などを多岐にわたり経験。2009年には西友に入社し、「カカクヤスク」「バスプラ」「みなさまのお墨付き」「ど生鮮」「プライスロック」などを新たなブランド資産として確立。2016年2月、西友マーケティング本部バイスプレジデントに着任。2018年1月、サンリオに入社し、現在に至る。
──どのような指針ですか。
「自分は決して“無敵カード”にはなれない。だから“レアカード”になろう」ということです。無敵カードとは、世の会社の誰もが欲しがるトップクラスの成果を残せる人のことです。P&Gでもソニーマーケティングでも、僕より優秀な人は大勢いました。だから“レアカード人材”になろうと考えたのです。レアカード人材とは、希少価値のある、ほかに例のないキャリアを積んだ人のこと。僕はこれまでに外資系企業も国内企業も経験し、ブランドマネジメント、メディアプランニング、PR、イベント企画、広告制作など多岐にわたる業務を経験しました。

即戦力を求める中途採用市場ではブランドマネジメントや専門領域経験のみをもつ人材は特に珍しくありませんが、僕のような“プラスα”があるユニークなキャリアは光る。この独自性をさらに伸ばそうと考えました。そこで以降の就職活動では、一度経験した業界には行かないという自分の中の“縛り”を設けました。

結果、次は流通の西友に就職。ダイレクターとして入社し、メディア、クリエイティブのみならず、店舗デザイン、プライベートブランド「みなさまのお墨付き」の開発など、最終的にはマーケティング本部長としてすべてを統括しました。

──サンリオに入社された経緯を教えてください。
西友から転職する時に頭に浮かんだのが、オーナー企業で働く、ということです。それも、レアカードを極めるのが目的でした。オーナー企業の創業社長は、ひとりで商品開発からマネタイズの仕組みづくりまでこなす、いわば「ひとりカリスママーケター」です。しかし、長期的な企業成長を見据えると「組織としてのマーケティング体制」をつくる必要が出てくる。そこに僕の経験が活かせると思いました。

入社後は、まず中長期計画でマーケティング強化の方針を発表し、もともとあったメディア部を再編してマーケティング本部を新設しました。改めて新鮮な目と心でサンリオを支えていただいている顧客のことを理解し、体験価値を高めた上で、それを売り上げに直結させる仕組みづくりに努めています。

──CMOに必要な資質や視点とはなんだと思いますか。
まずはマーケティング部門だけでなく、他部門のことをよく考えて動くことが大切です。会社全体が成果を出すためには、ほとんどの場合、他部門を巻き込む必要があります。しかし人はロジックではなく感情で動くもの。各部門のニーズや社内の人間関係を正確に把握し、潤滑油となった上で、いかにプロフィットを生み出せるかがCMOには求められます。毎日が社内調整の嵐です。
──若手マーケターへのアドバイスをお願いします。
昨今のデジタル広告の伸長や、ダイバーシティが求められる時世などから、マーケターの“在り方”も多様化しています。僕は多様な経験という“レアカード”を軸にキャリア形成をしましたが、自分のキャリアの軸に悩む方も多いでしょう。そんなときは、読書や、新しい場所や人と出会うなど、キャリア形成へのモチベーションが高まるアクションを起こすことをお勧めします。
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【聞き手】
荒川直哉
株式会社マスメディアン
キャリアコンサルティング部 部長
国家資格キャリアコンサルタント
マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。年間600名を超える方の転職を支援する一方で、大手事業会社のマーケティング・クリエイティブ部門や広告会社、広告制作会社、IT企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。「転職を検討している人材」と「採用企業」の両方の動向を把握しているエキスパート。転職者の親身になるがモットー。
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