SNS時代のチャンスの掴み方

──竹本さんといえば、Twitterに投稿した野球少女時代とモデルとのビフォーアフター写真が話題になりましたよね。
あの投稿は大学4年生のとき、今の会社から内定をもらって、入社前のタイミングでした。実は、もともとSNSには苦手意識を持っていたんですよ。自分のことを話すのは好きではなかったんです。

ミスコンをきっかけにSNSを活用するようになりましたが、当時読んだ田端信太郎さんの書籍『ブランド人になれ! 会社の奴隷解放宣言』(幻冬舎)にも影響されています。「フォロワーは持ち運び可能な資産であり、資本だ」という内容に煽られて(笑)。実際にフォロワーが増えたらどんな景色があるのか、見てみたくなったんです。

──2枚の写真のギャップはもちろん、「12歳→22歳 熊本の芋野球少女から 表参道で撮影する女になっちゃったよ お母さん」というつぶやきも印象的です。
ツイート文も研究を重ねました。書くことが好きで、ライターのインターンやセミナーで勉強していたので、そこで学んだことを凝縮しています。

このツイートでは、一行目に写真の説明を簡潔に入れ、最後を「お母さん」と締めることで、自慢っぽく映らないようにしました。私はあくまでお母さんに伝えただけだと。また、「熊本」と入れることで地元の方に親近感を与えて、拡散してもらうことを狙いました。謙遜で書いた「芋野球少女」というワードは私の想定外に反応が大きかったですね。

この経験を通して、インプットしたことを実際にアウトプットすることで、こんなにも大きな反応が得られるんだと実感しました。学んで終わりではなくて、その後アクション起こせるかが、分かれ道になる。副業としてのモデルやライターのお仕事も、このツイートをきっかけにお声がけいただきました。
──現職を選んだ大きな理由が、「副業OK」という点だとお聞きしました。マーケター、モデルやライターと、広くやっているからこそ見えてくるものがあるのでしょうか?
どのお仕事も「伝える」という共通項があります。マーケティングでは企画を考える、ライターとして裏方で書く、モデルとして表舞台に出る、というように、さまざまな立場から「伝える」ということを体験できるので、いろいろな仕事の仕方を学べるのは強みですね。今後もなにかしら「伝える」ことをしていきたいので、いまはSNSやイベントなど、さまざまなツールを活用しながら、自分はどの伝え方が好きなのかを探っている段階です。
──伝えるためのツールが溢れているSNS時代を生きる竹本さんですが、同世代についてどのような可能性を感じていらっしゃいますか?
よく言われていますが、「個の時代」の可能性は大きいですよね。その「個」を伝えるためには、自分探しと同時に、「自分を探してもらう努力」もしたほうがいいと思っています。自分を探してもらう、知ってもらう手段がたくさんあるなかで、自分をいかに伝えていくかを考えてく時代です。

いま必要なのは“補う力”

──一方で課題を感じる部分はありますか?
可能性に向かって挑戦できる環境は広がっているものの、応援する環境が全然できていないと思っています。SNSを見ていても、ちょっと目立っただけでいろいろな角度から攻撃された人を何人も見てきたし、私自身もバズった直後はそうでした。出る杭は打たれるみたいな風潮がありますよね。

そうなってしまう要因として、「補う力」が足りないと思うんです。SNSやWebの記事って、わかりやすく凝縮されているので、相手がなにを言いたいのか、自分で趣旨をくみ取らなくてもわかってしまうんです。

その「補う力」が身についていないから、Twitterの140字以内ですべてを伝えられるはずがないのに、部分的に目にしたものをすべてだと思って揚げ足をとってしまう。そうなることを恐れて挑戦する人が減ってしまうのであれば、大きな課題ですよね。

──「補う力」を鍛えるためにはどうしたら良いのでしょうか?
私は本を読むことで鍛えています。「補う力」は、「自分なりの意見を持つ力」とも言えます。本は主張以外の部分が多いので、筆者の言いたい本筋はなにかを考えながら読むと、補う力がつくと思っています。例えるなら、噛まなくても味わえるWeb記事やSNSは「飲むヨーグルト」で、噛めば噛むほど味が出る本は「スルメ」。意識的に噛む力を鍛える必要があると思いますね。

短い言葉の裏にある趣旨を読み取ることなく、表面上でフォロワーが多いとか、人のツイートを見てテクニックだけを学んでも、絶対に自分のものにはできない。SNSでは、人の発言の一節だけを切り取って、あたかも自分の考えのようにツイートする、みたいなことが往々にしてあります。

そうではなく、自分の言葉にする力が大事なので、私も意識的に鍛えているつもりです。「この人が言っていたから信じる」ではなくて、あらゆる角度から物事を見ることが重要だと思います。

──SNS上だけでなく、ビジネスシーンでも大事なことですよね。
そうですね。人への想像力が身につくので、円滑なコミュニケーションにつながります。インプットは自分ひとりの時間だけど、仕事は必ず人と一緒にやらなくてはいけない。「補う力」は、隠れた趣旨を読み取って、相手の伝えたいことを想像する幅を増やしていくことだと思います。「1を聞いて10を知る」というような力は、仕事をしていくうえで絶対に必要ですよね。
──最後に、竹本さんの1年後輩にあたる新社会に向けてメッセージをお願いします!
繰り返しにはなりますが、「自分探し」だけでなく、「探される力」を身につけること、そして「補う力」を養ってほしいです。そして、もし周りからの非難や恥ずかしいという思いから、なにか挑戦することをためらっているのであれば、そういった思いは忘れて、負けずに挑戦してほしいと思います。

──同じく<ぼく・わたしたちの時代>特集で取材した清水文太さんも指摘していましたが、インターネットを使いこなすミレニアルズ世代だからこそ、SNSの立ち振舞をしっかりかんがえていらっしゃいますね。本日は新社会人へのエールをありがとうございました!
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