人間の本質を考えることがAIプランナーには必要 マッキャンミレニアルズ 代表/クリエイティブプランナー 吉富亮介さん、クリエイティブプランナー 中沢渉さん
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デジタル分野は日進月歩で進化を続けています。特にAIの進歩は毎朝のようにヘッドラインのニュースで取り上げられ、世間の注目を集めています。工業や交通、医療、はたまた広告などさまざまな業界へのAIの利活用が進む中で、AIを開発・実装するAIエンジニアだけでなく、どういった分野に拡張できるかを考えるAIプランナーが生まれてくると予想されています。そこで今回は、新しい職業として生まれるであろう”AIプランナー“がどのようなものかを探っていきます。お答えいただいたのは「業界初の人工知能クリエイティブディレクターAI-CD β」を開発し話題を呼んだマッキャンミレニアルズの吉富亮介(よしとみりょうすけ)さんと中沢渉(なかざわわたる)さん。両名にAIプランナーという職業について、空想していただきました。
──いきなりですが、「AIプランナー」という職業はどのような仕事を行う人たちだと思いますか?
中沢:AIの時代的な流れとして3つの段階があると感じていて、ステップ1はさまざまな領域でのAIの登場。例えば将棋や囲碁の世界への活用の話です。今はまだステップ2で、AI技術のテレビ番組やミュージックビデオ、CMなどコンテンツへの応用の段階。AIを使っていかに面白いコンテンツを企画できるか。一昔前のSNSプランナーのようなもので、現場にAIを理解している人が専属でいると重宝されるもの。この段階は、物珍しさがあるので、PR的視点も求められます。「“人間対AI”といった対立構図」や「AIによる予想のできないクリエイティブ表現」といったプランニングになります。
中沢:ステップ3はもう少し先で、AIが当たり前になったときの話。そのタイミングで「AIプランナー」という名称はなくなると思います。
吉富:いま現在、わざわざSNSプランナーと名乗るのが恥ずかしい、知っていて当たり前といった感覚に近いかもしれないです。今のクリエイティブディレクターは昔のようにグラフィックとCMだけやっていればいいというわけではなく、WebやSNSも理解していないといけない。だから将来、AIプランニングという職能はクリエイティブディレクターに包括される可能性もありますね。
中沢:AIが当たり前の時代になると、AIの活用ではなく共存の方向へ進むと思っていて、その行き着く先は『ドラえもん』だと思います。だからある意味、ドラえもんをつくった人の職業はAIプランナーですね。
中沢:いえ、「AI≠ロボット」なので違います。AIという言葉はArtificial Intelligenceの略で、日本語だと“人工知能”と訳します。要は、人間に近い知能のことを指します。つまり、「AI≒人間らしさ」という図式の方が適切だと思います。ドラえもんのように、ロボットではあるけど人間らしいコミュニケーションをとれるモノをつくれる人。そういう人はAIプランナーだと思いますね。
吉富:私もそのとおりだと思います。いまはSiriやAmazon Alexaが身近なAIの例として挙げられますが、これらはすべてコミュニケーションが取れますよね。これがAIの特徴だとも思っていて、AIをただのロボットとして考えるのではなく、人間に近いモノとして認識していくべきだと思います。そして今後ますます、AIが日常生活に浸透していくと予想されています。
──いまアメリカではスマートスピーカーの普及率が上がっていますし、今後私たちの生活により浸透していくのは間違いないでしょうね。
吉富:そう遠くないうちに、その流れは日本にも来ると思います。AIがあることが当たり前になるとそれを利用したビジネスを考えなくてはいけなくなります。我々の立場でいうと、AIを使った広告の運用方法などです。
──確かに、その方面で開発が進んでいますよね。その辺りはなにか考えはお持ちですか?
中沢:いままで広告がマス、Web、SNSと形を変えていったのは、広く大衆向けから、一人ひとりの個人に向けて最適化した広告展開に変遷しているからです。それは裏返すと、生活に広告が入り込む隙間が狭くなってきているからだと思っていて。狭くて少ない可処分時間を奪い合っていますよね。だからこそ、AIを使っての広告をどのように配信していくかを、いままでにない形で考えていかなくてはいけないと思いますね。
吉富:そこで1つポイントになるのは、先程も述べた“コミュニケーション“だと思います。AI≒人間らしさと考えると、AIプランナーというのは、「”人間らしさとは”を考えるプランナー」と言い換えられますよね。つまり、会話など人間同士のコミュニケーションが得意であることは、AIプランナーの素養につながるわけです。
吉富:これまでの広告、例えばラジオCMでは、一方的に音を届けることが求められていましたが、そこに対話といった概念が持ち込まれるわけです。サウンドディレクションではなく、人間同士の“コミュニケーション”のクリエイティブディレクションが必要とされるかもしれない。それって、いまのラジオCMとは次元が違いますよね。でも今後は、スマートスピーカーの音声アシスタントとの会話自体が広告になる。会話の中で、いかに自然な流れで商品をレコメンドできるかを我々も考えていかなければならない。
中沢:だから、いまOne-to-Oneにコミュニケーションを実践している人は、今後AIプランナーとして力を発揮していく可能性があります。個々に電話対応を行うコールセンタースタッフや、家電量販店で対面販売をしているデモンストレーター、コミュニティを活性化させているコミュニティマネージャーなどです。あとはゲームのストーリーをつくるシナリオライターも可能性がありますね。彼らは、人とのコミュニケーションを何百通りも想定してシナリオを書いているので。
──その仮説は面白いですね! 日頃のコミュニケーションが重要ということであれば、営業職もありえますね。では最後に、いろいろと空想が膨らみましたが……広告業界の人はAIをどのように捉えるべきでしょうか?
中沢:どんな形にしろ、今後生き残るにはコミュニケーション能力がより重要になってくると思います。それがないと取り残されてしまう。コミュ力なんて、広告業界では今も昔も求められていたのですが、より一層、人間らしさを追求する方向に加速するかもしれないですね。結局、人間の本質に立ち戻っていく流れは間違いないわけなので。
吉富:15秒やグラフィックの中で生きる広告クリエイターよりも、インタラクティブで対話的に捉えられる人のほうがAIに馴染みやすいと思います。けど悲観することもなくて、そういう状況を理解していれば、得意な人をアサインして企画の全体ディレクションするなど方法は色々ある。もちろん、すべて頼りっきりになるのではなく、全員が“人間らしさとは”を探求していかなければなりませんが。
──近未来なお題でしたが、すごくリアル感のある話になりましたね。本日はありがとうございました!
中沢:AIの時代的な流れとして3つの段階があると感じていて、ステップ1はさまざまな領域でのAIの登場。例えば将棋や囲碁の世界への活用の話です。今はまだステップ2で、AI技術のテレビ番組やミュージックビデオ、CMなどコンテンツへの応用の段階。AIを使っていかに面白いコンテンツを企画できるか。一昔前のSNSプランナーのようなもので、現場にAIを理解している人が専属でいると重宝されるもの。この段階は、物珍しさがあるので、PR的視点も求められます。「“人間対AI”といった対立構図」や「AIによる予想のできないクリエイティブ表現」といったプランニングになります。
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世界初の人工知能クリエイティブディレクター「AI-CD β」
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「クロレッツ ミントタブ」のリニューアル告知CMの企画制作にあたり、AIと人間双方がクリエイティブディレクションをしてCMを制作。「AIか人か」は知らせず、「クロレッツミントタブの伝えたいことがより伝わったと感じるのはどちらか」を視聴者に投票してもらう企画を展開。
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魔法をコンセプトとしたアイドルグループ「マジカル・パンチライン(通称:マジパン)」のセカンドシングルのミュージックビデオのクリエイティブディエクションを実施。楽曲がない状態でMVを企画・撮影して、そのMVの映像に合わせて楽曲(作詞・作曲を含む)を制作する「MV先行型 楽曲制作プロジェクト」という企画。
吉富:いま現在、わざわざSNSプランナーと名乗るのが恥ずかしい、知っていて当たり前といった感覚に近いかもしれないです。今のクリエイティブディレクターは昔のようにグラフィックとCMだけやっていればいいというわけではなく、WebやSNSも理解していないといけない。だから将来、AIプランニングという職能はクリエイティブディレクターに包括される可能性もありますね。
中沢:AIが当たり前の時代になると、AIの活用ではなく共存の方向へ進むと思っていて、その行き着く先は『ドラえもん』だと思います。だからある意味、ドラえもんをつくった人の職業はAIプランナーですね。
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AI≒人間らしさ
──ドラえもんですか!? それはロボット開発者と近しいイメージでしょうか?中沢:いえ、「AI≠ロボット」なので違います。AIという言葉はArtificial Intelligenceの略で、日本語だと“人工知能”と訳します。要は、人間に近い知能のことを指します。つまり、「AI≒人間らしさ」という図式の方が適切だと思います。ドラえもんのように、ロボットではあるけど人間らしいコミュニケーションをとれるモノをつくれる人。そういう人はAIプランナーだと思いますね。
吉富:私もそのとおりだと思います。いまはSiriやAmazon Alexaが身近なAIの例として挙げられますが、これらはすべてコミュニケーションが取れますよね。これがAIの特徴だとも思っていて、AIをただのロボットとして考えるのではなく、人間に近いモノとして認識していくべきだと思います。そして今後ますます、AIが日常生活に浸透していくと予想されています。
──いまアメリカではスマートスピーカーの普及率が上がっていますし、今後私たちの生活により浸透していくのは間違いないでしょうね。
吉富:そう遠くないうちに、その流れは日本にも来ると思います。AIがあることが当たり前になるとそれを利用したビジネスを考えなくてはいけなくなります。我々の立場でいうと、AIを使った広告の運用方法などです。
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中沢:いままで広告がマス、Web、SNSと形を変えていったのは、広く大衆向けから、一人ひとりの個人に向けて最適化した広告展開に変遷しているからです。それは裏返すと、生活に広告が入り込む隙間が狭くなってきているからだと思っていて。狭くて少ない可処分時間を奪い合っていますよね。だからこそ、AIを使っての広告をどのように配信していくかを、いままでにない形で考えていかなくてはいけないと思いますね。
吉富:そこで1つポイントになるのは、先程も述べた“コミュニケーション“だと思います。AI≒人間らしさと考えると、AIプランナーというのは、「”人間らしさとは”を考えるプランナー」と言い換えられますよね。つまり、会話など人間同士のコミュニケーションが得意であることは、AIプランナーの素養につながるわけです。
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究極のコミュニケーション能力が必要に
──会話に限らずとも、人間がなにを求めているかを考えることは、広告分野でのAI活用において必要になりそうですね。吉富:これまでの広告、例えばラジオCMでは、一方的に音を届けることが求められていましたが、そこに対話といった概念が持ち込まれるわけです。サウンドディレクションではなく、人間同士の“コミュニケーション”のクリエイティブディレクションが必要とされるかもしれない。それって、いまのラジオCMとは次元が違いますよね。でも今後は、スマートスピーカーの音声アシスタントとの会話自体が広告になる。会話の中で、いかに自然な流れで商品をレコメンドできるかを我々も考えていかなければならない。
中沢:だから、いまOne-to-Oneにコミュニケーションを実践している人は、今後AIプランナーとして力を発揮していく可能性があります。個々に電話対応を行うコールセンタースタッフや、家電量販店で対面販売をしているデモンストレーター、コミュニティを活性化させているコミュニティマネージャーなどです。あとはゲームのストーリーをつくるシナリオライターも可能性がありますね。彼らは、人とのコミュニケーションを何百通りも想定してシナリオを書いているので。
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中沢:どんな形にしろ、今後生き残るにはコミュニケーション能力がより重要になってくると思います。それがないと取り残されてしまう。コミュ力なんて、広告業界では今も昔も求められていたのですが、より一層、人間らしさを追求する方向に加速するかもしれないですね。結局、人間の本質に立ち戻っていく流れは間違いないわけなので。
吉富:15秒やグラフィックの中で生きる広告クリエイターよりも、インタラクティブで対話的に捉えられる人のほうがAIに馴染みやすいと思います。けど悲観することもなくて、そういう状況を理解していれば、得意な人をアサインして企画の全体ディレクションするなど方法は色々ある。もちろん、すべて頼りっきりになるのではなく、全員が“人間らしさとは”を探求していかなければなりませんが。
──近未来なお題でしたが、すごくリアル感のある話になりましたね。本日はありがとうございました!