ノーミーツ 主宰/企画・プロデュース<br />
広屋佑規さん(写真左)<br />
没入型ライブエンタメカンパニーOut Of Theater代表。ストリートを歩きながらミュージカルの世界を体験できる「STREET THE MUSICAL」、東京喰種の世界に没入できるイマーシブレストラン「喰種レストラン」など、公共 / 都市空間を活用したエンタメ作品のプロデュースに従事。<br />
<br />
ノーミーツ 主宰/監督・プロデュース<br />
林健太郎さん(写真中央)<br />
映画会社に勤めながら、自主制作映画やMVなどの映像制作活動のプロデューサー/映像監督も務める。プロデューサー作品として映画『書くが、まま』(MOOSIC LAB2018観客賞)『根矢涼香、映画監督になる。』ショートフィルム『純猥談 触れた、だけだった』。欅坂46個人PVの企画脚本など。<br />
<br />
ノーミーツ 主宰/脚本・演出<br />
小御門優一郎さん(写真右)<br />
映画会社に勤めながら、劇団「21g座」を主宰する脚本家、演出家。全日本大学生演劇選手権大学生演劇インターカレッジ2015年、16年審査員特別賞受賞。神奈川かもめ「短編演劇」フェスティバル2019本選出場。
ノーミーツ 主宰/企画・プロデュース
広屋佑規さん(写真左)
没入型ライブエンタメカンパニーOut Of Theater代表。ストリートを歩きながらミュージカルの世界を体験できる「STREET THE MUSICAL」、東京喰種の世界に没入できるイマーシブレストラン「喰種レストラン」など、公共 / 都市空間を活用したエンタメ作品のプロデュースに従事。

ノーミーツ 主宰/監督・プロデュース
林健太郎さん(写真中央)
映画会社に勤めながら、自主制作映画やMVなどの映像制作活動のプロデューサー/映像監督も務める。プロデューサー作品として映画『書くが、まま』(MOOSIC LAB2018観客賞)『根矢涼香、映画監督になる。』ショートフィルム『純猥談 触れた、だけだった』。欅坂46個人PVの企画脚本など。

ノーミーツ 主宰/脚本・演出
小御門優一郎さん(写真右)
映画会社に勤めながら、劇団「21g座」を主宰する脚本家、演出家。全日本大学生演劇選手権大学生演劇インターカレッジ2015年、16年審査員特別賞受賞。神奈川かもめ「短編演劇」フェスティバル2019本選出場。

劇団ノーミーツ、怒涛の1カ月

──いま、SNSを中心にとても話題になっている「劇団ノーミーツ」ですが、この劇団を発足した経緯について教えてください。
広屋:僕も林くんも小御門さんも、演劇や映画などのライブエンターテインメントの領域で活動をしていました。それが新型コロナウイルスの影響により、多くの舞台や仕事が中止、延期になりました。俳優もスタッフも関係なく、この業界にいる人が食っていくことができない状況になってしまった。そんな状況下で、なにか表現をすることはできないかと模索し、たどり着いたのがこの「Zoom演劇」でした。

:4月の頭に、広屋さんから突然連絡がきて。そこで、Zoomを使った演劇作品をつくろうと相談されたのですけど、僕がZoomを使ったのはそのときの打ち合わせで初めてだったんです。だから「バーチャル背景ってすげー」って普通に驚いていました(笑)。広屋さんはZoomを使ったことがあったようなんですけど、Zoomを使って演劇をつくるというのはお互いにやったことがない取り組みでした。だから、ほかの人にも相談しようと脚本と演出ができる人として、僕から小御門にも声をかけたんです。それが僕ら3人、初めて集まったきっかけでした。

小御門:私と林くんは大学からの知り合いだったのですけど、広屋さんとはそのときが初対面なんですよ。だから、広屋さんとはまだ直接お会いしたことがないんです。Zoom上でしかコミュニケーションを取ったことがないから、バストアップしか知らないんです(笑)。

広屋:直接会うのが恥ずかしいですよね。絶対ぎこちなくなりそう(笑)。

──主催された皆さんの関係もリモートでできあがっていたとは驚きです(笑)。4月に結成したばかりの劇団ノーミーツですが、この1カ月の間で多くの作品を発信していますよね。特に、「ダルい上司の打ち合わせ回避する方法考えた。」はかなり話題になっていたかと思います。
小御門この作品は、あるスタッフが実際にした経験が元になっているんです。あとはテーマとして、「バーチャル背景を使ってだるい上司のミーティングをサボる」ということだけを設定して、細かな流れは実際に演じながら話し合いをして決めていきました。この作品のオチの部分はその話し合いのなかで、実際に起きたことなんですよ。

広屋:バーチャル背景をどうやって使えばいいか模索しているなかで、オツハタという髭を生やした俳優がZoomで話し合い中にしばらく同じ姿勢でいて。僕らも最初はバーチャル背景を設定したのかと思ったのですが、そうではなくて。まさしく、あの作品のなかで起きたことと同じことが起きたんです。それがめちゃくちゃ面白くて(笑)。実際の作品のオチにも取り入れることしたんです。
──実際に起きた出来事を元にした作品だったのですね。言われてみると、劇団ノーミーツの作品はすごくリアリティのある作品が多いですよね。最初に公開した「ZOOM飲み会してたら怪奇現象起きた... / The dangers of usingZoom...」はホラー作品でしたが、本当にフィクションであるのか疑ってしまった人も多かったのではないでしょうか?
:そうですね。見てくれた方からのコメントも「これ本当なの?」という声は多かったです。この作品のストーリーは「Zoom飲みをしていたら怪奇現象が起きた」というものになっていますが、これが共感しやすい話題であったのだと思います。Zoom飲み会など、Zoomを使ってオンライン上で人とコミュニケーションを取る人がいまは多いですから。身近だからこそ、見ている人たちの想像力をかき立てることができました。

広屋:Twitter から発信したことも、リアリティを生んだ一つの要因ですね。現実に存在するSNSで発信できたからこそ、フィクションとノンフィクションの境界も曖昧にすることもできました。やはりホラー作品は見ている人たちに驚いてほしいですからね。さまざまな要素がかみ合っていい方向に作用したと思います。
──最初の作品にホラーを選んだのはどうしてだったのでしょうか?
小御門:Zoom上での演劇は、「画面越しの映像」になることは避けられません。ホラー映画のなかにはそういう画角で撮られている作品も多く存在していたため、0からZoom演劇というものをつくり上げていくときに、イメージがしやすいジャンルの一つだったんです。それに、Zoom演劇では実際にどのような演出ができるのかも、役者の自宅環境にかなり左右されます。ホラーであれば、部屋の照明を暗くするだけでも、Zoom上でなら簡単に怖さを演出できるので、演出のしやすさという点でもつくりやすいジャンルでした。

またこれらの演出のアイデアを決めていく際は、役者もスタッフは関係なく、全員で話し合いをしていました。「後ろにかかっている T シャツをポルターガイストみたいに落とせる?」「糸をしかければできるかも」みたいに、関わる全員がZoom演劇の初心者でしたから、トライアンドエラーの連続でしたね。

有料公演への挑戦

──5/23(土)・24(日)に初の長編生公演「門外不出モラトリアム」を有料で配信するかと思います。有料での公演を決めた経緯について教えてください。
広屋:Zoom演劇を始めた当初は、これだけの反響をいただけるとは想像もしていなかったですし、想像以上の成果を得ることができたと思っています。ただ、僕たちの課題である、「エンターテインメントで飯を食べる」ということはまだ解決していません。きっとこの先も、ウィズコロナやアフターコロナと呼ばれる時代がしばらくは続いていくと思います。そのなかで、映画や演劇などのエンターテインメントが生き残るためには、オンライン上でできる表現方法で、金銭面も含めて成立させていかなければいけません

そのための次のステップがこのZoom演劇の有料公演です。そしてこれは決して避けられないステップでもあります。この公演の結果次第では、オンライン×エンターテインメントの新しい可能性を一つ示すことができると思っているので、是が非でも良いものをつくりあげたい。役者とスタッフが一丸となって、現在制作を進めています。
──長編のZoom演劇をつくるなかで大変な部分などはありますか?
小御門:これまでの短編の作品はすべて、現実と同じ時間が流れている設定で制作をしていました。現実の世界と同じスピードで時間が流れるものをつくっていました。短編なら、お客さんの興味を引き続けられますが、長編だとそれだけでは難しい。普通の映画や演劇なら、回想シーンや時間が進むなど、場面転換ができますが、Zoom演劇ではそれができないフルリモートでかつ、カメラアングルも固定されているなか、どのように演出するかはZoom演劇ならではの考えなければいけないポイントですね。ほかにも衣装や小道具、映像などもお金をいただく以上は、なに一つ妥協は許されません。お客さんの期待を上回れるように、映画や演劇などさまざまなフィールドで各々が培ったノウハウを活かしつつ、クオリティの追求をしています。実際どのような演出になるのか、ぜひ本番を楽しみにしていてほしいです。

:今回の長編公演は、出演者を決めるためのオーディションもZoom上で開催しました。普段映画制作などの際に行うものと同じ内容で行ったのですが、直接対面してオーディションをする時よりも、実力がシビアに表れると感じました。

広屋:バストアップしか映らないから、ほかでカバーすることができないですからね。多分、Zoom演劇に適したスキルがあるのだと思います。

──そうなると、今後Zoom演劇専門の俳優が現れるかもしれませんね。
広屋:十分ありえると思います。Zoom演劇には映画とも演劇とも違う基準があるということは、この1カ月で強く実感していますから。例えばスペックの高いPCを持つほうがいいでしょうし、グリーンバックもあったほうがいい。家で一人、モニターに向かって演技をしなくてはいけませんが、それらに抵抗がある人もいるかと思います。このようなZoom演劇に求められるスキルはすでに明確になりつつあります。それらのスキルをたくさん持つ、「Zoom演劇俳優」がこの先、生まれていくことは現実的に起こり得ると思いますね。

エンターテインメントはどのように進化していくのか

──今後、以前のような日常が戻ってきたときに、Zoom演劇というコンテンツを続けることは、いまの段階で考えているのでしょうか?
小御門:いまのノーミーツの活動はすごく楽しいし、面白い作品をつくろうと、この活動に無我夢中であっという間に毎日が過ぎ去っています。ただ、やはりZoom演劇は映画や演劇とは違う。映画にも演劇にもなり得ない難しさも、同時にすごく感じています。カメラの構図は映画みたいに変えられないし、演劇みたいに生の迫力を出すこともできない。Zoom演劇では永久に越えることができないハードルがあるんです。そのことを身にしみて痛感しています。

:ただこれは現状ではまだ、Zoom演劇がエンターテインメントとして昇華しきれていないと僕たちが考えているからです。まだノーミーツを立ち上げて、1カ月ほどしか経っていませんし、この1カ月であらためて、Zoom演劇という新しいエンターテインメントの枠組みをしっかりと確立させていかなければいけないと、腹をくくることができました

オンライン上で、リアルにも負けないエンターテインメントは、僕たち以外にも、ほかですでに現れ始めています。つい先日、SCRAPさんが主催しているオンライン上で体験できる「リモート公演」というものに参加したのですけど、これがとても面白かったんです。リアルで体感できる体験と同じぐらいの価値があると、僕は感じました。ノーミーツのZoom演劇も、多くの人にそう思われるようなレベルを目指していきたいです。

広屋:一方で、こういう状況になって、オンラインの恩恵を感じる場面も多くあります。打ち合わせや本読みだけならオンラインで今後もできそうですし、いままでなかった縁も多く生まれました。ノーミーツで得た知見や経験は、現場に戻ってからも活かせるものが多くあります。だからたとえ現場に戻ることになったとしても、いままで以上にパワーアップした、新しいライブエンターテインメントをつくることも可能になると思います。どうなるにせよ、これからもエンターテインメントは、なんらかの形で前へ進んでいきますよ。
──それでは最後に、この先に待つエンターテインメントの未来がどうなるか、皆さまのお考えを教えていただけますか?
広屋:僕は2つの方向で盛り上がっていくと考えています。1つはいまの自粛のより戻しによって、音楽フェスやライブイベントなどの外で人とコミュニケーションが取れるライブエンターテインメントが以前よりも強い熱量で再興していくこと。そしてもう1つ、オンライン上でのイベントもさらに盛り上がっていくと思います。いま多くの人がなにかしらの形で、オンラインを活用しているため、「オンラインで参加する」ことのハードルが徐々に下がっていくのではないかと思うんです。だから、自粛を終えたあとに待つ日常では、昔以上にこの2つの市場が賑わっているのではないかと予想します。

小御門:私は演劇業界にある畑がどんどん細分化されていくのではないかと思います。一昔前だと、演劇界って小劇場からキャリアをスタートさせて、下北の小劇場や有名な駅前劇場などを経て、新宿の紀伊国屋ホールに出られるようなると成功だと言われていました。しかし、この情勢になってオンライン上でも演劇ができる可能性が生まれてきました。これにより、新しい道で演劇と関われることができるようになるのではないでしょうか。それは、先ほど話したようなZoom演劇俳優という形かもしれないし、それ以外のものかもしれない。いずれにせよ、お芝居や演劇の畑はより細分化されていくと考えています。道が複数に増えていけば、夢を途中で諦める人たちも少なくなります。各々が表現を続けていけますから。エンターテインメントの世界で表現をする人たちがこの先も増えていってほしいですね。

:僕は願望になるのですが、映画や演劇、すべてのエンターテインメントに関わる人たちが、自分たちが元々いた現場に戻れる未来がきてほしいと思います。ノーミーツでの活動をしていて、創作にとって現場が本当に大切なものであったと、いま本当に実感をしているので。

その一方で、現状はある種、チャンスにもなっていると思います。この情勢になって、多様なジャンルがどんどんクロスオーバーしていき、たとえ会えなくても、多くの人たちが集まってきている感覚が強くあります。これはエンターテインメントの業界以外でも、今後加速していく動きだと思います。

だからこそ、いままでの常識では予想もできないことが多く生まれていくと思います。そのときに道を開くのは、きっと「無鉄砲さ」です。未知に怯まず、まっすぐに突き進んだ先にきっと、希望がある。その希望のなかに、どんな形であれ、みんなが楽しくエンターテインメントに触れることができるプラットフォームがあってほしいです。そのためにも、僕らもいまできることを精一杯取り組んでいきたいと思います。

──劇団ノーミーツの主催に3人に、劇団が生まれ駆け抜けてきた怒涛の1カ月、そして未来に対する思いについてお話をお聞きしました。劇的な環境に変化で生まれた、Zoom演劇がどのような進化をしていくのか。この先も注目していきたいと思います。お話いただき、ありがとうございました!

お知らせ

2020年5月23日(土)、24日(日)の2日間、劇団ノーミーツとして初となる長編・生配信公演「門外不出モラトリアム」を上演します。現在チケットを一般発売中!詳細、及び購入方法は門外不出モラトリアム公式HPにてご確認ください。

「門外不出モラトリアム」公式HP
https://nomeets2024.online/
チケットページ
https://nomeets.stores.jp
劇団ノーミーツ 公式HP
https://nomeets2020.studio.design/
【『門外不出モラトリアム』公演概要】
<公演日>5月23日(土) 15:00 / 21:00・24日(日) 15:00 / 21:00  (全4回) 
<場所> Zoomにて生配信上演

<チケット販売>             
一般チケット:2500円、RT割引チケット:2300円、U25割引チケット:2000円、
U18割引チケット:1000円
※各種チケット詳細・申込み方法は門外不出モラトリアム公式HPにてご確認ください。

<あらすじ>
みんなが家から出なくなって4年。入学からフルリモートのキャンパスライフを送った私は、実感の湧かない卒業を間近に控えていた。もし、もう一度、家から出られなくなったあの日からやり直せたら、あのささやかな恋も、実ったのだろうか。あいつがいなくなることも、なかったのだろうか。たとえバーチャルでも、これが私たちの青春。だから、何度でも繰り返す。何年この時代に生きることになっても。この部屋から、未来を変える。

収束しない事態と、収束する運命に逆らう物語。
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