Vol.13 いま、企業に求められるのは高度なジェネラリスト人材 キャリアアップナビ
キャリアアップナビでは、マーケティングやクリエイティブ職のキャリアアップについて、毎月テーマをピックアップして解説します。今回は、楽天の上級執行役員であり顧客戦略統括部のディレクターを務める松村有晃(まつむらくにあき)さんに、これまでのキャリアを伺いました。聞き手はキャリアコンサルタントの荒川直哉(あらかわなおや)。良い転職は、良質な情報を入手することから始まります。「こんなはずでは、なかったのに…」とならないための、転職情報をお届けします!
──これまでのキャリアについて教えてください。
私が新卒で入社したのはマッキンゼー・アンド・カンパニーでした。「社会に大きく貢献したい。そのためにビジネスの仕組みを学ぶ必要がある」と考え、短期間で密度高くビジネスの原理に触れられるコンサルティング業界を選びました。
同社では、業種を問わずさまざまな企業の経営者や事業部長を顧客とした、経営コンサルティング業務に従事。事業進出やM&Aなど、企業の戦略的な意思決定を支援しました。コンサルティング会社に商品はありません。入社1年目から、自分の提案力そのものに対価をいただくプレッシャーは想像以上に大きいものでした。でも、そのプレッシャーがあったからこそ、短期間で調査分析や課題特定、解決策の導出、戦略立案、プロジェクト設計~進行管理などのスキルが徹底的に鍛えられたと思います。
マッキンゼーの経営コンサルティング業務は、左脳的思考という面が突出していました。実現可能で再現性の高い方法を論理的に構築することが重視されるのです。しかし現実に人や社会は、ロジックではなく感情で動くことも多い。そこに左脳的アプローチの限界を感じていました。また私自身、感覚を大切にする右脳的思考が好きでした。そんな時、右脳的アプローチを重視してブランド戦略を提供する“ブランドコンサルティング”という分野を知り、それを実践する博報堂コンサルティングに転職することを決めたのです。
転職後はBtoC企業の経営者を顧客として、ブランド戦略やマーケティング戦略の構築、実行支援に携わりました。広告会社が母体のコンサルティング会社ということもあり、企業全体の方向性を示すビジョンやタグラインを策定するなどクリエイティビティを要する業務も多く、右脳的思考を培うことができました。
2社での経験を経て、右脳と左脳、両方のコンサルティング能力が板についてきたと感じた頃、次は事業会社側で主体性をもって仕事をしたいと考えるようになりました。論理と感覚、どちらか一方だけで事業は成立しない。“実業”こそ、それらを融合し、意思決定をする組織なのだと思ったのです。そこで組織開発事業を行うベンチャー企業に転職しました。
この会社では、事業部長として組織開発やデザインコンサルティング事業の立ち上げを行いましたが、前職で培ったノウハウで成果を上げることができました。そうなると、現状維持ではなく、もっと大きな挑戦をしたいと思うようになり、また転職を決意。会社の規模感が大きく、社会的責任が重いこと。比較的若い会社のため手を挙げて挑戦できる環境が整っていること。この2つを理由に、楽天への入社を決めました。
入社後は、「楽天市場」のマーケティング部長を務めながら顧客戦略部を立ち上げて顧客志向改革を推進。その後、ポイントやキャラクターを活用した事業横断的なエコシステムマーケティングを統括し、2019年には上級執行役員にも就任しました。
現職に至るまで、3年ごとに転職を重ね、自分に足りない視点を習得してきました。その結果、エキスパート以上に結果を出すジェネラリストになることができたと考えています。エキスパートは企業の外から調達する時代。今、企業経営に求められるのは高度なジェネラリストではないでしょうか。
──マーケティングに求められるスキルはなんだと思いますか?
多面的な視点です。顧客にとって魅力的なサービスやプロダクトを実現するには、顧客視点のUX開発だけでは足りません。収益モデル、オペレーション、技術、コミュニケーション、サプライチェーンなど、多様な要素を考える必要があります。そして私は、マーケティングとは、複数の面を組み合わせて売れる仕組みをつくることではないかと考えています。まずは自分が偏った一面(視点やスキル)しか持っていないことを自覚してみましょう。自分にない“面”を増やしていくことが成長につながると思います。 ──ビジネスリーダーを目指す若手にアドバイスをお願いします。
どれだけよい企画を考えても、実行し現実の反応を感じなければ、センスを磨くことができません。テクノロジーの進化により、マーケティング活動においてはトライを重ねPDCAを回しやすい環境が整っています。まず実践してみる、そして何事も本気で背負って取り組むことを心がけてください。
また、給料の上がる転職はお勧めしません。前職でのノウハウを放出するだけでは、新しいことに挑戦する機会が失われていくからです。新しい挑戦とは、未経験領域で修業をすること。私自身そうでしたが、未経験領域への転職は当然給料が下がります。しかしその分、新たな能力を習得できた自負があります。ぜひ未知の世界に飛び込む選択をしてください。
私が新卒で入社したのはマッキンゼー・アンド・カンパニーでした。「社会に大きく貢献したい。そのためにビジネスの仕組みを学ぶ必要がある」と考え、短期間で密度高くビジネスの原理に触れられるコンサルティング業界を選びました。
同社では、業種を問わずさまざまな企業の経営者や事業部長を顧客とした、経営コンサルティング業務に従事。事業進出やM&Aなど、企業の戦略的な意思決定を支援しました。コンサルティング会社に商品はありません。入社1年目から、自分の提案力そのものに対価をいただくプレッシャーは想像以上に大きいものでした。でも、そのプレッシャーがあったからこそ、短期間で調査分析や課題特定、解決策の導出、戦略立案、プロジェクト設計~進行管理などのスキルが徹底的に鍛えられたと思います。
マッキンゼーの経営コンサルティング業務は、左脳的思考という面が突出していました。実現可能で再現性の高い方法を論理的に構築することが重視されるのです。しかし現実に人や社会は、ロジックではなく感情で動くことも多い。そこに左脳的アプローチの限界を感じていました。また私自身、感覚を大切にする右脳的思考が好きでした。そんな時、右脳的アプローチを重視してブランド戦略を提供する“ブランドコンサルティング”という分野を知り、それを実践する博報堂コンサルティングに転職することを決めたのです。
転職後はBtoC企業の経営者を顧客として、ブランド戦略やマーケティング戦略の構築、実行支援に携わりました。広告会社が母体のコンサルティング会社ということもあり、企業全体の方向性を示すビジョンやタグラインを策定するなどクリエイティビティを要する業務も多く、右脳的思考を培うことができました。
2社での経験を経て、右脳と左脳、両方のコンサルティング能力が板についてきたと感じた頃、次は事業会社側で主体性をもって仕事をしたいと考えるようになりました。論理と感覚、どちらか一方だけで事業は成立しない。“実業”こそ、それらを融合し、意思決定をする組織なのだと思ったのです。そこで組織開発事業を行うベンチャー企業に転職しました。
この会社では、事業部長として組織開発やデザインコンサルティング事業の立ち上げを行いましたが、前職で培ったノウハウで成果を上げることができました。そうなると、現状維持ではなく、もっと大きな挑戦をしたいと思うようになり、また転職を決意。会社の規模感が大きく、社会的責任が重いこと。比較的若い会社のため手を挙げて挑戦できる環境が整っていること。この2つを理由に、楽天への入社を決めました。
入社後は、「楽天市場」のマーケティング部長を務めながら顧客戦略部を立ち上げて顧客志向改革を推進。その後、ポイントやキャラクターを活用した事業横断的なエコシステムマーケティングを統括し、2019年には上級執行役員にも就任しました。
──これまでの経験は今の仕事にどう活かされていますか?
現職に至るまで、3年ごとに転職を重ね、自分に足りない視点を習得してきました。その結果、エキスパート以上に結果を出すジェネラリストになることができたと考えています。エキスパートは企業の外から調達する時代。今、企業経営に求められるのは高度なジェネラリストではないでしょうか。
──マーケティングに求められるスキルはなんだと思いますか?
多面的な視点です。顧客にとって魅力的なサービスやプロダクトを実現するには、顧客視点のUX開発だけでは足りません。収益モデル、オペレーション、技術、コミュニケーション、サプライチェーンなど、多様な要素を考える必要があります。そして私は、マーケティングとは、複数の面を組み合わせて売れる仕組みをつくることではないかと考えています。まずは自分が偏った一面(視点やスキル)しか持っていないことを自覚してみましょう。自分にない“面”を増やしていくことが成長につながると思います。 ──ビジネスリーダーを目指す若手にアドバイスをお願いします。
どれだけよい企画を考えても、実行し現実の反応を感じなければ、センスを磨くことができません。テクノロジーの進化により、マーケティング活動においてはトライを重ねPDCAを回しやすい環境が整っています。まず実践してみる、そして何事も本気で背負って取り組むことを心がけてください。
また、給料の上がる転職はお勧めしません。前職でのノウハウを放出するだけでは、新しいことに挑戦する機会が失われていくからです。新しい挑戦とは、未経験領域で修業をすること。私自身そうでしたが、未経験領域への転職は当然給料が下がります。しかしその分、新たな能力を習得できた自負があります。ぜひ未知の世界に飛び込む選択をしてください。