くらしのマーケットのマーケティング戦略

──まず、みんなのマーケットのマーケティング本部の業務体制について教えてください。
現在、マーケティング本部にはおよそ15人の社員が在籍しています。さまざまな課題に対して、チームを編成し、おおよそ5~6チームが存在している状況です。そのなかで私は本部長としてマーケティング本部全体を統括しています。

──2020年7月現在、貴社のサービス「くらしのマーケット」のテレビCMも放送していますよね。このテレビCMの狙いはなんなのでしょう?
マーケティング本部には「くらしのマーケットを国民的なブランドにする」というミッションがあり、テレビCMもこのミッションを達成するための1つの手段として実施しています。テレビCMを開始した当初、その認知度はとても低く、ほとんどの人に知られていませんでした。オーガニックの集客は堅調に推移していましたが、認知向上を図ることでさらに多くの方に利用してもらえるのではと考え、CM出稿を開始しました。テストマーケティングも含めて、長期間出稿を継続していますが、広告効率は開始当初と比較して10倍近く改善したと思います。
──過去にはタレントが出演したCMを放送していましたが、2020年7月現在放送しているCMはナレーションベースのシンプルな内容ですよね。クリエイティブの面で心掛けている部分はなにかあるのでしょうか?
国民的なブランドになるには、認知率の向上はもちろんですが、くらしのマーケットのブランド価値を伝えていくことが重要だと考えています。サービスを理解し、魅力的に感じてもらえることを意識してクリエイティブを制作しています。タレントが出演しているCMからナレーションベースのCMに変更したのはPDCAの一貫で、さまざまな角度からテレビCMの効果を計測しています。今後もCMの内容は大きく変わっていく可能性はあると思います。

──現在、新型コロナウイルスの影響が各業界に及んでいますが、貴社ではどのような影響がありましたか?
「くらしのマーケット」ではエアコンクリーニングの需要がかなり伸びました。やはり、仕事や学業などあらゆる状況で在宅の時間が増えたこと。それと、いまの季節による影響でしょうね。エアコンクリーニングだけでなく、エアコン取り付けやエアコン修理といったエアコン周りの需要はどれもすごく伸びています。ほかにも家にいる時間が増えたことにより、インターネット設定や庭木の剪定、草むしりといった自宅のメンテナンスの予約も増えました。自宅で過ごす時間を快適にしたいというユーザーの要望が如実に現れていると思います。以上のようなユーザー側のニーズ増加に伴い、ユーザーの母数も増えていますが、出店者についても同様に母数が増えてきています。2020年7月末時点では、累計出店登録店舗数は40000店舗を超えました

──ユーザーも出店者も増加する状況に対して、マーケティング本部としてなにか施策は行っていますか?
ユーザーと出店者への安全対策にはさらに力を入れています。これまでも出店者の審査や損害賠償補償制度の提供、コンサルタントを配置して出店者とユーザー間のコミュニケーションをサポートする…など出張訪問サービスを扱うプラットフォーマーとして、安全に取引が行える環境の整備には力を入れてきました。それらに加えて、現在のコロナ禍においては衛生管理にも注力しています。出店者の方たちに消毒や作業前の検温、公共交通機関を使わないなどの感染予防対策を行ってもらい、感染予防を徹底しています。

0から開拓する苦労の先に

──続いて、中尾さんのキャリアについてお伺いしていきたいと思います。中尾さんがみんなのマーケットに入社したのは、2014年とお聞きしました。それ以前のキャリアを伺えますか?
前職は広告会社に勤務していて、主にデジタルマーケティングを担当。ダイレクトレスポンスからブランディングまでデジタル広告領域は一通り経験してきました。また、トレーディングデスクやPMPの立ち上げなどにも携わってきました。そんなあるとき、当社の代表である濱野を共通の友人から紹介してもらいました。事業内容を聞き、ありそうでないビジネス。まさにこれから必要とされるであろうと将来性を感じました。初めて事業内容を聞かされたその場で、みんなのマーケットへ転職することを決めましたね。そして、みんなのマーケットへ入社しました。私に与えられたミッションは、広告で事業拡大をしていくことでした。しかし、これが非常に難しかった。とても順風満帆で進んだとは言えず、大変苦労しました。

──具体的にどのような点で苦労されたのですか?
広告出稿は、想定していたよりも効率が悪く、予約は増えますがCPAなどの効率が合わないという状態でした。リスティング、リターゲティングなどの単純な施策で業績をあげられると思っていたのでそこはかなり誤算でした。対応としては、マーケティングの方法を根幹から見直しました。メルマガやオフラインDM、テレマーケティング、オウンドメディアなど、広告以外のあらゆるマーケティング施策もキャッチアップし、ひたすら守備範囲を広げていきました。どれも0から開拓していったので、もちろん大変でしたが、結果として当社のチャネルが広く分散していきました。そのおかげで、当時から現在まで広告に依存する体質にはならず、さまざまに課題に対し、多面的な対応策や手段を考えるようになりました。0から構築する段階で苦労はしましたが、その苦労は決して無駄ではなく、いまでも活きていると日々の業務でも痛感します。

また、2回の資金調達のラウンドも経験しました。事業を拡大してくために必要な広告宣伝費は自分で調達するという意気込みで取り組みました。当時はCFOも不在で、私もファイナンスの知識はなかったのですが、代表の濱野と協力しなんとかこなしました。ファイナンスを実行する上で客観的に自社サービスを見つめ直し、モニタリングの指標を整理することができました。いま思うとマーケターとしてすごく貴重な経験ができたと思います。
──中尾さんはマーケターの採用も担当されているそうですが、優秀なマーケターに欠かせない素養はどこにあると考えていますか?
具体的なスキルももちろんそうなのですが、それ以上にマーケティング領域をはみ出していけるような、貪欲な気質や志向性を持っている方を採用しています。昨今のマーケティングツールって、本当に万能で優秀なものが多いです。そのため、マーケターが専任でなくても、マーケティングを充分に行える時代になっています。極端に言うと、マーケターは不要になる時代がいつかくるかもしれません。だからこそ、マーケターにはただ手を動かすだけのキャリアではなく、領域をはみ出して、さまざまな知識やスキルを装着し、その人しかできないことを磨いていく必要があると考えます。

いま、働き方自体もどんどん変化しています。当社も7月から出社を前提とした「メンバーシップ型」とテレワークを前提とした「ジョブ型」2つの働き方を選べるようになりました。コロナ禍のテレワークの中で、会社に来なくても普通に働ける状態が実証されたことで、マーケティング職の方もより効率的に働いていきたいという選択をする人が増えていくのではないかと思います。会社により深く関わりたい人と効率的に働きたい人は、一見相対するように見えますが、お互いを理解することでうまく共存して働くことができるはずです。

──「くらしのマーケット」ではどのようなマーケティングを行っているのか、マーケティング本部の本部長である中尾さんにお話いただきました。国民的なブランドを目指す、今後の取り組みにも引き続き注目していきたいと思います。お話いただき、ありがとうございました!
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