Vol.17 座右の銘は「人生グライダー理論」 上昇気流が掴めれば、空高く飛べる キャリアアップナビ
キャリアアップナビでは、マーケティングやクリエイティブ職のキャリアアップについて、毎月テーマをピックアップして解説します。今回は、NECで初めてマーケティング責任者として中途入社した、執行役員兼CMOの榎本亮(えのもとまこと)さんにこれまでのキャリアを伺いました。聞き手はキャリアコンサルタントの荒川直哉(あらかわなおや)。良い転職は、良質な情報を入手することから始まります。「こんなはずでは、なかったのに…」とならないための、転職情報をお届けします!
──これまでのキャリアについて教えてください。
新卒では監査法人トーマツにシステムエンジニアとして入社。米国のシステム監査の資格を取得した後はシステムコンサルタントをしていました。Windows95が発売されるなど技術の進歩を目の当たりにするなかで、ITの専門家よりも、それがもたらす事業変革をリードするビジネスコンサルタントを志すように。その機会をくれた朝日監査法人(後のアーサー・アンダーセン、KPMGコンサルティング、ベリングポイント)に転職しました。
転職して最初の仕事は、大手通信会社におけるコールセンターの業務改革でした。ちょうど番号通知制度が施行され、まさに技術の進化が業務を大きく変革するタイミングでした。当時は「CS経営」が注目されており、類似の依頼が多数ありました。ある経験から得た知見を次のプロジェクトで磨くという好循環のなかで、「通信業界の業界知見×CRM」という専門領域の土台が形づくられていきました。入社10年ほどでマネージングディレクターに昇進し、自社事業を統括する立場に。
2年ほど務めたころ、より大きなビジネス運営に挑戦したいという思いが強くなりました。日本IBMへ通信事業部門の理事として就任。アメリカ本社など世界中のリソースを巻き込んで事業を動かす、ダイナミックな経験を積むことができました。
その後、ご縁があってセールスフォース・ドットコムに転職し、通信業界担当のグローバルアカウントマネージャーとして、世界各地のチームを管轄していました。充実した仕事で、転職は検討すらしていませんでしたが、ある日、NECからコーポレートマーケティング本部長のオファーを受けたのです。NECは当時、企業のポジショニングを「社会価値を創造する企業」へ変えようとしていました。100年の歴史を持つ企業の一大チャレンジです。CRMを専門としてきた私にはまさに天職であり、またとない挑戦の機会だと思い、入社を決めました。
マーケティングの力で、「社会価値を創造する企業」というブランドを築くことです。会社を変えるには、10万人を超える社員全員が自社の目指す価値を理解しなければなりません。そのための取り組みのひとつが、宣伝動画のスタイルを変更することです。従来は「技術力を説明する」ことが中心でしたが、お客さまに「NECと一緒にどういう価値を生み出せたのか」を語っていただく形式に変えました。社員向けとしても、他のお客さまへの宣伝としても、客観的に語られるストーリーの方が説得力は遥かに強いでしょう。
入社して2年間がむしゃらにチャレンジし続けた結果、2017年にCMOに就任。就任後はまず、さまざまな部門に点在していたマーケティング機能を一つの組織に統合し、関係部門との連携も強めて効果的なマーケティングができる体制を整えました。現在に至るまで、全社のマーケティングを統括しています。
──さまざまな会社を経験されていますが、転職する上で大切にしていることはありますか?
転職先は、会社ではなく仕事内容で選ぶことです。自分の人生の一時をかけるだけの価値があるのか。現状への不満から逃げるような転職はおすすめできません。転職を目的にせず、転職でも異動でも、変化を求めるならまずは自分の置かれている環境を客観的に観察し、出発点と目的を確かめてから行動を起こすことが重要です。
──キャリア形成においてターニングポイントはありましたか?
20代のころ、上司から聞いた「人生グライダー理論」に大きな影響を受けました。具体的には、「君は言われたことをそつなくこなすが、それだけを繰り返していたら、年齢を重ねるごとに足腰が弱くなる。だからいつでも全力を出さないとだめだ。一つひとつの仕事に全力を出していたら、ある日、一定の高さまで飛べるようになって、上昇気流を掴めるようになる。上昇気流が掴めれば、元の位置には落ちない。榎本くんは風を掴め。人生グライダー理論だ」と言われたのです。
その数カ月後に「榎本くん、飛ぶ時がきた。アメリカに飛べ」と言われ、アメリカに単身で赴任。現地企業の日本進出プロジェクトに参加しました。異文化の中で自国の文化や市場を理解してもらうために孤軍奮闘した経験は大きな糧になりましたし、度胸が据わりました。 ──若手マーケターへのメッセージをお願いします。
キャリアとして高みを目指すなら「人生グライダー理論」です。目の前の仕事をさばくだけでは成長はありません。「自分が会社を変えるのだ」という高い目線で、どのような仕事でも日々是全力で取り組んでいけば、そのチャレンジが足腰を強くしてくれて、いつか風を掴む高さまで飛べる日が来ると思います。
新卒では監査法人トーマツにシステムエンジニアとして入社。米国のシステム監査の資格を取得した後はシステムコンサルタントをしていました。Windows95が発売されるなど技術の進歩を目の当たりにするなかで、ITの専門家よりも、それがもたらす事業変革をリードするビジネスコンサルタントを志すように。その機会をくれた朝日監査法人(後のアーサー・アンダーセン、KPMGコンサルティング、ベリングポイント)に転職しました。
転職して最初の仕事は、大手通信会社におけるコールセンターの業務改革でした。ちょうど番号通知制度が施行され、まさに技術の進化が業務を大きく変革するタイミングでした。当時は「CS経営」が注目されており、類似の依頼が多数ありました。ある経験から得た知見を次のプロジェクトで磨くという好循環のなかで、「通信業界の業界知見×CRM」という専門領域の土台が形づくられていきました。入社10年ほどでマネージングディレクターに昇進し、自社事業を統括する立場に。
2年ほど務めたころ、より大きなビジネス運営に挑戦したいという思いが強くなりました。日本IBMへ通信事業部門の理事として就任。アメリカ本社など世界中のリソースを巻き込んで事業を動かす、ダイナミックな経験を積むことができました。
その後、ご縁があってセールスフォース・ドットコムに転職し、通信業界担当のグローバルアカウントマネージャーとして、世界各地のチームを管轄していました。充実した仕事で、転職は検討すらしていませんでしたが、ある日、NECからコーポレートマーケティング本部長のオファーを受けたのです。NECは当時、企業のポジショニングを「社会価値を創造する企業」へ変えようとしていました。100年の歴史を持つ企業の一大チャレンジです。CRMを専門としてきた私にはまさに天職であり、またとない挑戦の機会だと思い、入社を決めました。
──NECでの役割を教えてください。
マーケティングの力で、「社会価値を創造する企業」というブランドを築くことです。会社を変えるには、10万人を超える社員全員が自社の目指す価値を理解しなければなりません。そのための取り組みのひとつが、宣伝動画のスタイルを変更することです。従来は「技術力を説明する」ことが中心でしたが、お客さまに「NECと一緒にどういう価値を生み出せたのか」を語っていただく形式に変えました。社員向けとしても、他のお客さまへの宣伝としても、客観的に語られるストーリーの方が説得力は遥かに強いでしょう。
入社して2年間がむしゃらにチャレンジし続けた結果、2017年にCMOに就任。就任後はまず、さまざまな部門に点在していたマーケティング機能を一つの組織に統合し、関係部門との連携も強めて効果的なマーケティングができる体制を整えました。現在に至るまで、全社のマーケティングを統括しています。
──さまざまな会社を経験されていますが、転職する上で大切にしていることはありますか?
転職先は、会社ではなく仕事内容で選ぶことです。自分の人生の一時をかけるだけの価値があるのか。現状への不満から逃げるような転職はおすすめできません。転職を目的にせず、転職でも異動でも、変化を求めるならまずは自分の置かれている環境を客観的に観察し、出発点と目的を確かめてから行動を起こすことが重要です。
──キャリア形成においてターニングポイントはありましたか?
20代のころ、上司から聞いた「人生グライダー理論」に大きな影響を受けました。具体的には、「君は言われたことをそつなくこなすが、それだけを繰り返していたら、年齢を重ねるごとに足腰が弱くなる。だからいつでも全力を出さないとだめだ。一つひとつの仕事に全力を出していたら、ある日、一定の高さまで飛べるようになって、上昇気流を掴めるようになる。上昇気流が掴めれば、元の位置には落ちない。榎本くんは風を掴め。人生グライダー理論だ」と言われたのです。
その数カ月後に「榎本くん、飛ぶ時がきた。アメリカに飛べ」と言われ、アメリカに単身で赴任。現地企業の日本進出プロジェクトに参加しました。異文化の中で自国の文化や市場を理解してもらうために孤軍奮闘した経験は大きな糧になりましたし、度胸が据わりました。 ──若手マーケターへのメッセージをお願いします。
キャリアとして高みを目指すなら「人生グライダー理論」です。目の前の仕事をさばくだけでは成長はありません。「自分が会社を変えるのだ」という高い目線で、どのような仕事でも日々是全力で取り組んでいけば、そのチャレンジが足腰を強くしてくれて、いつか風を掴む高さまで飛べる日が来ると思います。