GOを変える、3つの提案

──勝田さんのGOでのミッションは一体なんなのでしょうか?
一言でいうと、GOが掲げる「クリエイティブの力で、あらゆる産業を革新させる」というビジョンを実現させていくことです。私は、GOとの面談時、代表の三浦と福本に対し、「GOに足りないものはなにか。そしてそれに対してやるべきことはなにか?」をプレゼンしました。その内容に三浦と福本からの賛同も得られたため、実現するべく、準備を進めています。

──面接で話したプレゼン内容とは、どのようなものだったのでしょうか?
前職のリンクアンドモチベーションでは、「モチベーションを産業にする」ことを目指していました。そこで用いたビジネスをグロースさせるための方法は、GOでも有効なのではないか、という提案です。2社のどちらでも、形のないものを産業にし、イノベーションを起こすことを目指していたため、モチベーションをクリエイティブに置き換えることで、GOでも効果を発揮する可能性があると考えました。
前職で営業職を務めていた私は、「コンサルティング事業」「SaaS事業」「インキュベーション事業」、主にこの3つに分けられる仕事に取り組んでいました。

「コンサルティング事業」は前職の基幹となる事業です。クライアントの人事制度や採用戦略、人材育成をコンサルタントが設計し、その対価をいただく。売り上げも数千万円規模のものが多く、数字の面でも大きな割合を占めています。ただ、人事制度やインターシッププログラムは一度つくり終えると、そこからしばらく変化はなく、同じクライアントを再度コンサルティングすることは多くありません。そのため、一つの案件が終われば別のクライアントを探す…というようなケースが多く、リピート率がなかなか思うように伸びないことが私が中途入社した当時の課題でした。いくら高い営業力を持っていても、毎回新しいクライアントを探していては営業チームが疲弊していく。このまま走り続けると、いつか限界を迎えることは明らかでした。

そこで新たに開発されたのが「SaaS事業」でした。これが「モチベーションクラウド」です。一回当たりの売り上げは少額ですが、その分「コンサルティング事業」よりも長期間の契約をクライアントと結ぶことができます。この「SaaS事業」の開発によりクライアントのリピート率は向上し、コンサルティング以外にも顧客との接点を設けることができるようになりました。その結果、あらゆるクライアントとの取引が実現できました。

3つ目の「インキュベーション事業」ではなにをしていたかというと、スタートアップ企業に投資をして、その組織の人事部門のリテラシーを高めていくことでした。具体的に言うと、リンクアンドモチベーションが対象となる企業の株式を所有し、経営陣との会議へも参加。そこで人事に関する話を議論することで、経営陣や投資家の方々の組織人事に対するリテラシーを高め、組織の中での人事の優先度を上げていく、というものです。

この3つの事業により、モチベーションに関するビジネスを多角的に展開することが実現できました。このようなビジネスの拡張の仕方をクリエイティブの世界でもできるのではないかと、私は提案したのです。

──リンクアンドモチベーションでの取り組みをクリエイティブの業界に当てはめると、どのような形になるのでしょう?
現在GOはブランドやプロモーションに関する「コンサルティング事業」をメインに取り扱っており、3カ月~半年の期間での仕事が多いです。そのなかの1つのプロジェクトが終わり、さらに続けて同じクライアントと仕事を行うリピート率がどのくらいあるか。それを調べたところ、業界的には決して低くはなかったのですが、もっと高められるとも思いました。そこで思いついたのが、前職にてリピート率を向上させるために取り入れた「SaaS事業」のようなビジネスモデルの導入でした。いままで以上の長期間で、クライアントとの関係を構築できれば、リピート率が向上し、ビジネスはより拡大していきます。そのため、GOが「クリエイティブを産業にする」ための取り組みとして、1つ目に「クライアントのリピート率の向上」。ここにコミットすることを提案しました。

より具体的に言うと、「クリエイティブ(ブランドやプロモーション)に対しての適切な指標をつくる」ことです。いまはまだ、クリエイティブの尺度を測る、適切な指標が存在していません。その重要性を客観的に伝えるためにも指標は必要であると考え、そのことを提案しました。

また、現在GOでは「The Breakthrough Partners GO FUND」としてVC事業も展開しています。そのため、「インキュベーション事業」への取り組みも可能です。GOで行う「インキュベーション事業」の一つの価値としては、クリエイティブに対するリテラシーの向上があります。スタートアップの経営者たちにクリエイティブの重要さを理解してもらい、クリエイティブの優先順位を向上させる。それはクリエイティブカンパニーであるGOにとって、とても重要なポイントになります。そのためにも、「インキュベーション事業」への取り組みは欠かすことができません。それが2つ目に私が提案したことでした。

そしてもう一つ、私が提案した取り組みがあります。それは「Philosophy」、理念に共感しそれで束ねられた組織づくりをしていく、ということでした。
──「理念に共感してくれる組織づくり」はどうして必要だと考えたのでしょうか?
それはGOが「産業をつくる」ことを目指しているからです。代表の三浦と福本の二人がGOのビジョンとして見据えている先は、個人の利益ではなく社会全体の幸福です。社会を発展させるために「クリエイティブを産業にする」ことを目指しています。そのために必要になるのが、「誰にでも扱える仕組み」です。結局、「誰かにしかできない仕事」では産業にならないのですよね。だって、その人にしかできないのですから。そうではなくて、扱い方さえ知っていれば誰でも使えること。そのような仕組みをつくり、認知させ、規模感を広げていく。そうして初めて、産業を生み出したと言えると思うのです。「クリエイティブの力で、あらゆる産業を革新させる」ことを本気で目指すのなら、「仕組み」をつくることは避けては通れないことだと考えました。

しかし、その「仕組み」をつくることは、既存のクリエイティブの組織とは、ある意味正反対の取り組みでもあります。なぜなら、クリエイティブ業界はとても属人性が高い業界だからです。組織というよりも、個人に仕事が集まるケースがとても多い。これはそもそも、クリエイティブカンパニーに帰属する人たちが、「面白い広告をつくることができるから」「すごいクリエイターがいる会社だから」などの企業の事業内容やその組織の活動に魅力があるかを目的にしている人が多いためです。だから、「誰かにしかできない仕事」が多く集まるし、そもそもそれをやりたい人たちがとても多い。

──クリエイターやアーティストが多いですからね。「オンリーワン」を求める人も必然多くなると思います。そんなクリエイティブ業界で、「誰でも扱える仕組み」をつくることは至難の業なのではないですか?
おっしゃるとおり、相当難易度が高いと思います。そこで鍵になるのが、先述した理念に共感してくれる組織をつくることなのです。

社会心理学には「人が組織に帰属する理由を示す、4つのP」と呼ばれるフレームが存在します。このうちクリエイティブの組織では、仕事の内容にあたる「Profession」と給与や与えられる特権などを示す「Privilege」。この2つを理由に帰属する人たちが多いのです。ただ、この2つを理由に帰属する人が多い組織では、企業の成長に限度があるのです。個人に仕事が集まるため生み出す利益も限られますし、それにつられて組織に所属する人数も頭打ちになる。具体的にいうと、数十億円の売り上げや数十人程度の組織規模が限度になる場合がほとんどなのです。その程度の規模では、到底産業をつくることはできません。

では、どうするか。売り上げも組織規模も、よりスケールできる理由を持つしかないのです。それは4つのPのうちの一つ、理念を表す「Philosophy」です。「Philosophy」に共感できる人たちからすると、属人化にこだわる必要がなくなります。その理念をかなえるために、必要な選択を選ぶはずです。「クリエイティブの力で、あらゆる産業を革新させる」ことを目指すGOでは、それが「誰にでも扱える仕組み」をつくる選択を選ぶということになります。つまり、GOが目指すビジョンを実現するなら、「Philosophy」に共感する組織へつくり変えていくことは絶対に必要になることなのです。それが、私が3つ目の提案をした理由でした。

──つまり、GOが目指すビジョンを実現するなら、既存のクリエイティブの組織としての形を否定しなければいけないわけですね。そうなると、かなり残酷な決断を強いられることも多そうですね…。
提案こそしましたが、実際にやるとなると、とても恐ろしいことをしようとしていると思いました。私よりもずっと前にGOにジョインした人がほとんどですし、社内でさまざまな関係もすでに築き上げられていますからね。それをわかった上で、「それでもやろう」と代表の2人は言いました。「社会を変える」という根幹の部分はなにがあってもぶらすわけにはいかないと、この提案に乗る決意を固めました。これは極論ですが、仮に三浦と福本、そして私以外の全社員が辞めたとしても、そこからもう一度GOをつくり直す。そこまで覚悟をした上で、この取り組みは行っていくつもりです。

2020年10月時点では、マネージャー陣へのこのGOのスタンスと、中期経営計画の方針の共有は終えています。そこでは「とても良い取り組みだと思う。勝田がやってくれてありがたい」と、良い反応をもらえました。正直、感謝されるとは思っていなかったので、思わず感激してしまいましたね。この会社ならば、掲げた理想を実現できると、感じた瞬間でした。
7月に入社してから、このミッションを言い渡され、私がまず取り組んだのは、GOのインナーから変えにいくことでした。社員全員と1on1をした後、「なぜリピート率を向上させるのか?」「クリエイティブの指標とはなにか」「どうして『Philosophy』に帰属する組織にしなければいけないのか?」。これらについて、経営陣と話をする場を設けました。そうしてまずはGOの社内全体でこの考えを共有し、それができた上で徐々にアウターに向けてリリースを展開していく予定です。そのために、いまは日々経営陣と話し合いをして掲げるべき理念を模索しています。毎週末、そのための合宿をしていて、入社して早々ハードな日々が続いていますね…(笑)。

まだまだ先は長いですが、必ず「クリエイティブの力で、あらゆる産業を革新させる」ことを実現させたいと思います。具体的には、そのことを世間の皆さまにも認知してもらえること、そのための実績づくり。これらをかなえていきたいですね。さらにあわよくば、GOのこの取り組みから、また誰かの未来が広がっていけることを願って、いまは妥協なく、しっかりと根幹をつくり上げていきたいと思います。

──2020年7月に、GOに入社したばかりの勝田さんですが、その加入によりGOはさらに変化を迎えそうです。果たして、どのような未来がこの先待っているのでしょうか。advanced by massmedianでも引き続き動向を追いかけていきたいと思います。お話いただき、ありがとうございました!
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