Vol.18 スキルの「タグ」を増やし自分にしか持ちえない希少価値のあるキャリアを築く キャリアアップナビ
キャリアアップナビでは、マーケティングやクリエイティブ職のキャリアアップについて、毎月テーマをピックアップして解説します。今回は、LINEモバイルの代表取締役社長を務めながら、今年9月からLINEの執行役員及びマーケティングコミュニケーションセンターのセンター長にも就任した嘉戸彩乃(かどあやの)さんにこれまでのキャリアを伺いました。聞き手はキャリアコンサルタントの荒川直哉(あらかわなおや)。良い転職は、良質な情報を入手することから始まります。「こんなはずでは、なかったのに…」とならないための、転職情報をお届けします!
──これまでのキャリアについて教えてください。
新卒でUBS証券に入社し、投資銀行本部で、大企業向けのM&Aや資金調達に関するアドバイザリー業務を担当していました。入社した2008年にリーマンショックが起き、解雇や離職が相次ぎましたが、なんとか5年弱勤めました。しかし、日々働く中で次第に、仕事で社外の方に評価されるのは自分に実力があるからではなく、会社のブランド力のおかげなのではないかと疑問を持つようになりました。また、コーポレートファイナンスにおいて、リスクを負い、最終的な意思決定をするのはクライアント企業です。自分はただ助言しているだけにすぎないというジレンマを抱えていました。大企業の歯車ではなく、ゼロから事業を担うことができる環境に身を置きたいと思い、ベンチャー企業に飛び込むことを決めました。
入社したJTOWERは数人のメンバーでスタート。事業の構想以外何もない状態から、モバイル通信インフラ事業を立ち上げました。設備機器開発のパートナー探しや、ひっ迫した状況下での資金調達のほか、一から契約書を設計したり、社員を採用したりと、あらゆる業務をこなしていました。当時は、「自分が考えて行動しないと会社が死んでしまう」と常に思っていましたね。前職では事業計画を立ててシミュレーションするところまでしか関われませんでしたが、実務を経験したことで会社運営の実態を学ぶことができました。
JTOWERに入社して2年ほど経った頃、LINEに在籍していた知人から誘いを受けました。転職するかどうか迷いましたが、FacebookのCEO、シェリル・サンドバーグ氏の著書『LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲』を読み、その中の、「ロケットの座席をオファーされたらまず乗ってみることだ。キャリアは後からついてくる」という考え方に背中を押されました。当時、まだ社員数も数百名程度で少なく、成長過程にあったLINEは、まさに“ロケット”だと感じ、転職を決意しました。
入社後、新規事業開発チームに配属され、そこで立ち上げたのが「LINEモバイル」です。LINEでは、事業部を独立採算制にしています。そこで、事業立案者である私がいきなり社長に任命されたのです。LINEモバイルも、社員3名でゼロからのスタートでしたが、ここまで事業が成長できたのは、前職で培ったコーポレートファイナンスと事業立ち上げの経験が活きたからだと思っています。一方、社長になったことで新しく得たマインドは、どんな課題や失敗からも逃げないこと。現状のルールに縛られず、目的によってはルールそのものを変えるなど、広い視野でビジネスを捉えられるようになりました。
そして、今年の9月から新たな挑戦が始まりました。LINEモバイルの社長と兼任し、LINE全体のマーケティングコミュニケーションセンター(以下マーコムセンター)でセンター長も務めることになりました。
──マーコムセンター長にも就任されたとは驚きました。
LINEとしても初めての試みです。マーコムセンターは、事業部全体のマーケティング活動を支援するセントラル組織。多様なサービスを展開する中で、LINEグループ全体としてのマーケティングの在り方を見つめ直すタイミングが来ています。各事業部からの情報が集まるセントラル組織だからこそ、あらゆるサービスを俯瞰し、事業間シナジーを生み出す役割も期待されています。
これまで私は、当センターやソフトバンクと連携し、LINEモバイルのマーケティング活動を行ってきました。事業部目線で、当センターがどのような組織であるべきかを語れること。さらに、ソフトバンクという他者の視点に触れたことでLINEの魅力を再認識できたことが、私の強みです。事業部と同じ目線に立ち、マーケティングで解決できる範囲を明らかにしながら、事業部を支えていきたいです。
──キャリアにおいて大切にしている指針はありますか?
「自分の意思」を大切にすることです。意思がないところにビジネスは生まれません。私自身、事業をゼロからつくることができたのも、数百人の組織を束ねられたのも、「自分がどうしたいか」という確固たる意思を持ち、それを伝え、貫いてきたからこそ実現できたのだと思っています。 ──ビジネスリーダーを目指す若手人材へのアドバイスをお願いします。
自分の「タグ」を増やしましょう。ひとつの分野で専門性を高めても、その分野でトップになるのは難しいことです。しかし、「ファイナンス×事業開発×マーケティング」など、スキルが掛け合わさることで希少価値の高いキャリアを築くことができます。今ある専門性を強みにしながら、それ以外のスキル習得にも果敢に挑戦してみてください。
新卒でUBS証券に入社し、投資銀行本部で、大企業向けのM&Aや資金調達に関するアドバイザリー業務を担当していました。入社した2008年にリーマンショックが起き、解雇や離職が相次ぎましたが、なんとか5年弱勤めました。しかし、日々働く中で次第に、仕事で社外の方に評価されるのは自分に実力があるからではなく、会社のブランド力のおかげなのではないかと疑問を持つようになりました。また、コーポレートファイナンスにおいて、リスクを負い、最終的な意思決定をするのはクライアント企業です。自分はただ助言しているだけにすぎないというジレンマを抱えていました。大企業の歯車ではなく、ゼロから事業を担うことができる環境に身を置きたいと思い、ベンチャー企業に飛び込むことを決めました。
入社したJTOWERは数人のメンバーでスタート。事業の構想以外何もない状態から、モバイル通信インフラ事業を立ち上げました。設備機器開発のパートナー探しや、ひっ迫した状況下での資金調達のほか、一から契約書を設計したり、社員を採用したりと、あらゆる業務をこなしていました。当時は、「自分が考えて行動しないと会社が死んでしまう」と常に思っていましたね。前職では事業計画を立ててシミュレーションするところまでしか関われませんでしたが、実務を経験したことで会社運営の実態を学ぶことができました。
JTOWERに入社して2年ほど経った頃、LINEに在籍していた知人から誘いを受けました。転職するかどうか迷いましたが、FacebookのCEO、シェリル・サンドバーグ氏の著書『LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲』を読み、その中の、「ロケットの座席をオファーされたらまず乗ってみることだ。キャリアは後からついてくる」という考え方に背中を押されました。当時、まだ社員数も数百名程度で少なく、成長過程にあったLINEは、まさに“ロケット”だと感じ、転職を決意しました。
──入社後わずか1年でLINEモバイルの社長に就任されましたよね。
入社後、新規事業開発チームに配属され、そこで立ち上げたのが「LINEモバイル」です。LINEでは、事業部を独立採算制にしています。そこで、事業立案者である私がいきなり社長に任命されたのです。LINEモバイルも、社員3名でゼロからのスタートでしたが、ここまで事業が成長できたのは、前職で培ったコーポレートファイナンスと事業立ち上げの経験が活きたからだと思っています。一方、社長になったことで新しく得たマインドは、どんな課題や失敗からも逃げないこと。現状のルールに縛られず、目的によってはルールそのものを変えるなど、広い視野でビジネスを捉えられるようになりました。
そして、今年の9月から新たな挑戦が始まりました。LINEモバイルの社長と兼任し、LINE全体のマーケティングコミュニケーションセンター(以下マーコムセンター)でセンター長も務めることになりました。
──マーコムセンター長にも就任されたとは驚きました。
LINEとしても初めての試みです。マーコムセンターは、事業部全体のマーケティング活動を支援するセントラル組織。多様なサービスを展開する中で、LINEグループ全体としてのマーケティングの在り方を見つめ直すタイミングが来ています。各事業部からの情報が集まるセントラル組織だからこそ、あらゆるサービスを俯瞰し、事業間シナジーを生み出す役割も期待されています。
これまで私は、当センターやソフトバンクと連携し、LINEモバイルのマーケティング活動を行ってきました。事業部目線で、当センターがどのような組織であるべきかを語れること。さらに、ソフトバンクという他者の視点に触れたことでLINEの魅力を再認識できたことが、私の強みです。事業部と同じ目線に立ち、マーケティングで解決できる範囲を明らかにしながら、事業部を支えていきたいです。
──キャリアにおいて大切にしている指針はありますか?
「自分の意思」を大切にすることです。意思がないところにビジネスは生まれません。私自身、事業をゼロからつくることができたのも、数百人の組織を束ねられたのも、「自分がどうしたいか」という確固たる意思を持ち、それを伝え、貫いてきたからこそ実現できたのだと思っています。 ──ビジネスリーダーを目指す若手人材へのアドバイスをお願いします。
自分の「タグ」を増やしましょう。ひとつの分野で専門性を高めても、その分野でトップになるのは難しいことです。しかし、「ファイナンス×事業開発×マーケティング」など、スキルが掛け合わさることで希少価値の高いキャリアを築くことができます。今ある専門性を強みにしながら、それ以外のスキル習得にも果敢に挑戦してみてください。