──世界でも、中国でも貴社の存在感は高まっていますが、この状況をどのように分析していますか?
ソーシャルメディア・サーチエンジン・Eコマースなどを主軸とする他社とは違い、攻め方が一点突破ではないところに当社ならではの特徴があると思っています。同時にさまざまな分野のプロダクトを単独で立ち上げて、その中で成功しているプロダクトにサービスを一旦集約することで、ソーシャルメディア、サーチエンジン、Eコマースなどすべてを凌駕するプロダクトになるという、今までにない攻め方です。それをなし得ているのは、AIのアルゴリズムによるコンテンツマッチングやデータ最適化があるからです。

──TikTokの最適化されたコンテンツ配信の裏側にはAIのアルゴリズムがあるわけですね。そこが、ほかの動画プラットフォームとも違うポイントでしょうか。
そうですね、TikTokはアプリを開くと動画がすぐ再生されるUIになっています。そしてAIに基づいて個別に最適化されたコンテンツが、スマホをスワイプするとどんどん流れてきます。これは検索することを最初に求められる既存の動画プラットフォームとはあきらかに違います。また平均視聴時間で見ると、TikTokは他社と比べて短いですが、一つひとつの動画が短いため、より多くの動画を集中して見ている計算になります。それに対して、例えばYouTubeの視聴時間はTikTokと比べると長いものの、“ながら視聴”なども多く、視聴態度はまったく異なります。このため我々は、TikTokユーザーの視聴態度は非常に濃厚なものだととらえているので、可処分時間からするとYouTubeと競合になりますが、実際は別物という認識です。
──たしかに利用シーンやコンテンツは違いますね。
日本ではローンチ直後は中高生を中心に流行ったこともあり、学生生活を切り取るイメージが先行していますが、最近はユーザーの幅も広がり、コンテンツも多種多様になってきました。日常生活の瞬間をとらえ発信することがTikTokの使命で、例えばお年寄りが麻雀をしている動画や、子どもの成長記録を音楽にのせた動画など日常生活を撮ったものも増えてきております。音楽なしでもいいし、踊っていなくてもいい。2018年11月から上戸彩さんを起用したテレビCMが開始されましたが、こうしたコミュニケーション戦略によって最近は日本のTikTokのコンテンツも変わってきています。
──テレビCMの話も出てきましたが、日本法人を統括する副社長に任命された西田さんのミッションは何でしょうか? 
TikTokをはじめとするプロダクトは本社の開発・運営チームが担当しているので、私は日本市場のマネタイズの最大化がミッションです。その一つの打ち手として、著名YouTuberを多く抱えるUUUMと連携し、2019年2月16日にTikTok公式オフ会「TikTok CREATOR’S LAB. 2019」を、3月には「~新動画時代、だれもがクリエイター!~#TikTok TikTok オーディション2019」を開催し、さらに5億円相当を用意した「2019年TikTokクリエイター育成プログラム」をスタートしていきます。こうした取り組みを通じて、TikTokをクリエイターが集まるプラットフォームにしていきます。
2019年2月16日に行われた「TikTok CREATOR’S LAB.」の様子。HIKAKIN・筧美和子・りゅうちぇる・とにかく明るい安村ら、豪華ゲストによるスペシャルステージが披露された。
2019年2月16日に行われた「TikTok CREATOR’S LAB.」の様子。HIKAKIN・筧美和子・りゅうちぇる・とにかく明るい安村ら、豪華ゲストによるスペシャルステージが披露された。

モバイルメディアの勃興期に立ち会う

──貴社の取り組みにますます目が離せないですね。では改めて西田さんのこれまでのキャリアについて伺っていきたいと思います。西田さんは2001年に電通に入社されていますが、電通ではどのような業務をされてきたのでしょうか?
デジタルメディア、ソリューションなどを統括するインタラクティブ・コミュニケーション局に配属された後に、NTTドコモと電通の合弁会社のD2Cへ出向しました。そこで業界初となるiモードの広告メニューの立ち上げやメディアのセールスをしていました。

──ちょうど2000年前半はインターネットメディアの隆盛期でしたが、メディアを取り巻く環境に大きな変化などあったのでしょうか?
それまで移動中といえば、新聞か雑誌を見るしかありませんでした。しかし、2000年になるとモバイルメディアが生まれ、2002年にはdocomoのプッシュ型電子メールメディア“メッセージフリー”のターゲティング広告が開始されました。このサービスを活用して、マクドナルドが朝の時間帯に“コーヒー一杯半額”クーポンを配信したところ、大きな反響がありました。この取り組みを通して、モバイルメディアはスキマ時間ではなくユーザーの求めているタイミングに合わせてリーチすることができるのだと気づきました。このようにして私の電通人生は始まりました。
──いまでこそ当たり前の概念ですが、ちょうどその端境期に立ち会われたのですね。その後はどういった業務をされてきたのでしょうか? 
デジタル分野のカバー領域は年を追うごとに拡大していきました。それに応じて、私自身も幅広い経験を積むことができました。デジタル領域は深掘りすればするほど、分業型ではなく垂直統合型になるので、電通での7年間で、デジタルメディア、デジタルソリューション、デジタル制作、CRM、データーベースマーケティングなど一通りを経験することができました。こうした経験から、中国の電通グループでも同じような機能を実装してほしいというオファーがあり、2007年に北京電通に赴任しました。中国のデジタルや広告の商習慣は日本とは異なります。日本での経験を中国でそのまま活かすことは難しいですが、中国もデータドリブンであることは間違いありません。そういう意味では、現地でもアジャストさせることができました。

──その後、どういった流れでByteDanceに移籍されたのでしょうか? 
北京電通時に改めて感じたのですが、中国のBATはメディアもECも決済も物流もすべてを握っており、圧倒的な影響力を誇っていました。例えば中国では消費財のEC化率は50%を超えていて、中国へ進出したいブランドはBATのプラットフォームに乗らざる得ない状況なのです。そのなかで、月並みですけどプラットフォームに憧れを持つようになりました。ちょうどそのタイミングで、いまはByteDanceUSの責任者を務めている女性役員に声を掛けられ、入社することにしました。電通時代には6年半北京に赴任し現地法人をガバナンスする立場でしたが、今はガバナンスされる側になりました。しかしだからこそ、ガバナンスする側の目線も理解でき、北京の本社と良好な関係を築けているように思えます。

振り返ると既成概念を壊してきた

──メディア開発、ソリューション提案、マネジメントと幅広くキャリアを積まれていると思いますが、西田さん自身はどこがご自身の強みだと思いますか?
iモードの広告メニューを開発した当時、「モバイルメディアはニューメディアの類で、マスメディアがメインストリームだ」という見方でした。この状況、実は今のTikTokにも当てはまると感じていて。今はGAFAやBATがマスメディアのようなものです。こうした世の中の人々が抱いている既成概念を壊し、新しい概念をつくり上げていくことは、振り返ってみるとこれまでずっとやってきたことなのではないかと思います。面白いものは流動性のある世界から生まれてくるのであって、固定化された世界からは生まれてきません。今あるメインストリームは過去に形成されたもので、これからもずっと続くものであるとは限りません。私は新しい潮流をつくっていきたいです。そのために先を予測する一つのノウハウとして、人口ピラミッドによる未来予想があります。人口ピラミッドは事実を述べているものであり決して裏切らないので、中国や日本の人口の推移を観察しながら未来を想像していく際に、参考になると思います。
──最後に、中国マーケットを経験した西田さんから、次の時代を生きるマーケターにアドバイスをお願いします。
ヒョウ柄のスウェットを中国へ輸出している日系メーカーがあるそうですが、実際に売れているのは中国ではないと聞きました。実は中国と同じぐらい巨大なマーケットが、中国より西側のアラブの国やアフリカにあり、それらの国々で売れているそうです。それらの国では、中国のITプラットフォームや物流が活用され、民間先行で経済ができあがっているようです。これは個人的な考えですが、近視眼的に中国やアジアのマーケットを見るのではなく、世界全体で実際にどのようにモノが動いているのかというのを見極めたうえで、うまく中華系のプラットフォームを乗りこなしていく必要があると思います。

──短絡的に中国の動向を気にするのではなく、広い視座が必要になるわけですね。お話ありがとうございました。
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