Vol.30 仕事人生はマラソン ご機嫌に走り続ける キャリアアップナビ
キャリアアップナビでは、マーケティングやクリエイティブ職のキャリアアップについて、毎月テーマをピックアップして解説します。今回は、サイボウズ株式会社のビジネスマーケティング本部 コーポレートブランディング部 副部長、サイボウズ式 編集長を務める藤村能光さんに、これまでのキャリアについて伺いました。良い転職は、良質な情報を入手することから始まります。「こんなはずではなかったのに…」とならないための、転職情報をお届けします!
──これまでのキャリアについて教えてください。
就職活動には苦労しました。やりたいことが見つけられないまま、ITベンチャーに入社が決まっていたのですが、大学4年の10月、経営不振のため内定が取り消しになってしまったのです。就活全般の経験や思いをSNSの日記に綴っていたら、友だちが「泣いてしまったよ」と感想をくれました。自分の心情を吐露していただけなのに、人の心が動くきっかけになったのが嬉しくて、「書く」ことを仕事にしようと、就活の軸が決まりました。
その後、アイティメディアに内定が決まり入社。BtoB企業向けメディアの編集部に配属されました。編集スキルとITの専門知識の習得に目まぐるしい日々でしたが、取材を通じてWebマーケティングに興味を持つように。自身で手がけたいという思いが強くなり、マーケターへのキャリアチェンジに踏み切りました。転職活動には苦戦しましたが、サイボウズのマーケティングコミュニケーション職はコンテンツ制作が業務に含まれていたため、それまでの経験を活かせることから、入社が決まりました。
──サイボウズ入社後の仕事内容を教えてください。
2011年7月に入社し、無償のグループウェア「サイボウズLive」(※)の製品マーケティングを担当。コンテンツ制作やソーシャルメディア、サイト制作、カスタマーサポートなど、さまざまな経験ができました。
2012年5月、「サイボウズ式」の立ち上げに副編集長として参画しました。当社の売り上げが踊り場にあった時期で、会社の認知度向上と市場開拓が課題でした。そこで、コーポレートブランディングの一環として、IT活用で生まれるチームのコラボレーションの価値を伝えることで潜在層にアプローチするため、メディアをつくったのです。
編集長に就任したのは、2015年1月です。現在も運営責任者の立場ですが、記事制作はチーム員に任せる部分が多くなりました。私自身は仕事の裾野が広がり、新聞広告の制作や企業ロゴのリニューアル、他社と組んだブランデッドメディアの立ち上げなどのコーポレートブランディングも手がけています。
また、2018年から“複業”を始めました。サイボウズでは、2012年から複業制度を開始。あえて、副ではなく「複」という言葉を使っているのは、「本業のサブとして持つ仕事」ではなく、「複数の本業としての仕事」を示しているからです。現在は複数社と契約し、メディアの運営やマーケティングについてのアドバイザーをしています。
──ターニングポイントはありましたか?
サイボウズ式の運営に参加したことです。実は、転職した当時はメディアの仕事を離れるつもりでいました。それが今では「オウンドメディアの藤村さん」という“タグ”ができ、複業の依頼も来るように。これは、1社目から変わらず、コミュニケーションを仕事の軸としてきたからだと思います。編集の経験をベースとして、マーケティング・メディア運営・ブランディングなどに取り組んできました。いずれも、「ものごとの価値やおもしろさを見いだして、社会の関心ごととつなげる」仕事ですよね。
メディア運営に関わるマーケターにとって、「おもしろがる心」、好奇心を持つことはとても重要です。単に事実を伝えるのではなく、どの点がおもしろいのかを見つけるレンズを持てると、自分ならではの企画や記事がつくれます。
サイボウズは、既存の価値観のアップデートに取り組んでいるおもしろい会社です。私の役割は、その価値を社会に伝えること。これまではメディアを介したコンテンツマーケティングが主でしたが、今年に入って、広告を使うマスメディア向けのコミュニケーションも手がけることに。これまでの延長線上で、新しい仕事に取り組んでいます。
「ご機嫌でいること」、つまり精神的に安定した状態でいることを心がけています。仕事人生はマラソンのようなもの。私はストレス下ではパフォーマンスが発揮できないので、激しい起伏は避け、淡々と楽しく走り続けられる状態を保つよう努めています。また、一緒に働く人たちにも気持ちよく仕事をしてもらえるよう心がけています。
この指針のもと、キャリアの目標は詳細には立てていません。心理学者であるクランボルツの計画的偶発性理論によれば、キャリアの8割は偶発的な出来事により決定されるそうです。目標に固執せず、変化に備えつつ、出会った仕事には全力で取り組んでいく。その考え方が自然体でいいなと思い、取り入れています。戦略的ではないので、マーケターらしくはないのですが(笑)。
また、仕事と生活を包含する「人生」における理想は毎年設定し、そこに近づけているかは常に意識しています。仕事をする時間は1日の3分の1ですから、生活にかける3分の2も含めて人生を考えていきたいのです。2021年の理想には、「地元・関西への移住の足がかりをつくる」というものもあります。
──若手マーケターへのアドバイスをお願いします。
まずはプロフェッショナル意識を持って、仕事に全力投球しましょう。寝食を忘れて働くほうが性に合う方もいれば、私のようにペースを保つほうが結果につながる方もいます。目の前の仕事にベストを尽くしていると、自分なりの強み、キャリアの“タグ”ができてきます。会社のなかで勝負したい領域を見つけ、「○○の誰々さん」と呼ばれることを目指しましょう。その強みが生きる場面で声がかかる存在になれば、チャンスを掴めるようになります。
また仕事は、自分ひとりで成り立っているものではありません。自分の仕事が「誰にとって、どのように役に立っているか」を具体的に想像することが重要です。それが理解できていれば、どんなときにも、もう一歩前に進むために踏ん張ることができます。
※「サイボウズLive」は2019年に提供を終了しています。
就職活動には苦労しました。やりたいことが見つけられないまま、ITベンチャーに入社が決まっていたのですが、大学4年の10月、経営不振のため内定が取り消しになってしまったのです。就活全般の経験や思いをSNSの日記に綴っていたら、友だちが「泣いてしまったよ」と感想をくれました。自分の心情を吐露していただけなのに、人の心が動くきっかけになったのが嬉しくて、「書く」ことを仕事にしようと、就活の軸が決まりました。
その後、アイティメディアに内定が決まり入社。BtoB企業向けメディアの編集部に配属されました。編集スキルとITの専門知識の習得に目まぐるしい日々でしたが、取材を通じてWebマーケティングに興味を持つように。自身で手がけたいという思いが強くなり、マーケターへのキャリアチェンジに踏み切りました。転職活動には苦戦しましたが、サイボウズのマーケティングコミュニケーション職はコンテンツ制作が業務に含まれていたため、それまでの経験を活かせることから、入社が決まりました。
──サイボウズ入社後の仕事内容を教えてください。
2011年7月に入社し、無償のグループウェア「サイボウズLive」(※)の製品マーケティングを担当。コンテンツ制作やソーシャルメディア、サイト制作、カスタマーサポートなど、さまざまな経験ができました。
2012年5月、「サイボウズ式」の立ち上げに副編集長として参画しました。当社の売り上げが踊り場にあった時期で、会社の認知度向上と市場開拓が課題でした。そこで、コーポレートブランディングの一環として、IT活用で生まれるチームのコラボレーションの価値を伝えることで潜在層にアプローチするため、メディアをつくったのです。
編集長に就任したのは、2015年1月です。現在も運営責任者の立場ですが、記事制作はチーム員に任せる部分が多くなりました。私自身は仕事の裾野が広がり、新聞広告の制作や企業ロゴのリニューアル、他社と組んだブランデッドメディアの立ち上げなどのコーポレートブランディングも手がけています。
また、2018年から“複業”を始めました。サイボウズでは、2012年から複業制度を開始。あえて、副ではなく「複」という言葉を使っているのは、「本業のサブとして持つ仕事」ではなく、「複数の本業としての仕事」を示しているからです。現在は複数社と契約し、メディアの運営やマーケティングについてのアドバイザーをしています。
──ターニングポイントはありましたか?
サイボウズ式の運営に参加したことです。実は、転職した当時はメディアの仕事を離れるつもりでいました。それが今では「オウンドメディアの藤村さん」という“タグ”ができ、複業の依頼も来るように。これは、1社目から変わらず、コミュニケーションを仕事の軸としてきたからだと思います。編集の経験をベースとして、マーケティング・メディア運営・ブランディングなどに取り組んできました。いずれも、「ものごとの価値やおもしろさを見いだして、社会の関心ごととつなげる」仕事ですよね。
メディア運営に関わるマーケターにとって、「おもしろがる心」、好奇心を持つことはとても重要です。単に事実を伝えるのではなく、どの点がおもしろいのかを見つけるレンズを持てると、自分ならではの企画や記事がつくれます。
サイボウズは、既存の価値観のアップデートに取り組んでいるおもしろい会社です。私の役割は、その価値を社会に伝えること。これまではメディアを介したコンテンツマーケティングが主でしたが、今年に入って、広告を使うマスメディア向けのコミュニケーションも手がけることに。これまでの延長線上で、新しい仕事に取り組んでいます。
──キャリアにおける指針はありますか?
「ご機嫌でいること」、つまり精神的に安定した状態でいることを心がけています。仕事人生はマラソンのようなもの。私はストレス下ではパフォーマンスが発揮できないので、激しい起伏は避け、淡々と楽しく走り続けられる状態を保つよう努めています。また、一緒に働く人たちにも気持ちよく仕事をしてもらえるよう心がけています。
この指針のもと、キャリアの目標は詳細には立てていません。心理学者であるクランボルツの計画的偶発性理論によれば、キャリアの8割は偶発的な出来事により決定されるそうです。目標に固執せず、変化に備えつつ、出会った仕事には全力で取り組んでいく。その考え方が自然体でいいなと思い、取り入れています。戦略的ではないので、マーケターらしくはないのですが(笑)。
また、仕事と生活を包含する「人生」における理想は毎年設定し、そこに近づけているかは常に意識しています。仕事をする時間は1日の3分の1ですから、生活にかける3分の2も含めて人生を考えていきたいのです。2021年の理想には、「地元・関西への移住の足がかりをつくる」というものもあります。
──若手マーケターへのアドバイスをお願いします。
まずはプロフェッショナル意識を持って、仕事に全力投球しましょう。寝食を忘れて働くほうが性に合う方もいれば、私のようにペースを保つほうが結果につながる方もいます。目の前の仕事にベストを尽くしていると、自分なりの強み、キャリアの“タグ”ができてきます。会社のなかで勝負したい領域を見つけ、「○○の誰々さん」と呼ばれることを目指しましょう。その強みが生きる場面で声がかかる存在になれば、チャンスを掴めるようになります。
また仕事は、自分ひとりで成り立っているものではありません。自分の仕事が「誰にとって、どのように役に立っているか」を具体的に想像することが重要です。それが理解できていれば、どんなときにも、もう一歩前に進むために踏ん張ることができます。
※「サイボウズLive」は2019年に提供を終了しています。