──これまでのキャリアについて教えてください。
新卒ではオリックス自動車に入社しました。4年半ほど法人営業を経験したのち、自分を心身ともに育ててくれた大好きなスポーツに携わるためにコナミスポーツに転職。スポーツクラブのマネージャーからステップアップし、支社長という営業とマーケティングを統括する立場に。とにかく売上を伸ばすのが楽しくて、新たな集客施策やCRM施策を考案しては実践していました。

そして、2011年に本社の経営企画部へ異動することに。ミッションは、東日本大震災で悪化した業績の立て直しと新しいコナミスポーツの創造でした。持続的な事業の成長とお客さま視点の意思決定を実現するためには、必要な情報やデータの収集、広告・宣伝の機能の集約、予算の全社最適が課題だと感じていました。そのため、翌年1月、既存の販売促進部などを統合しマーケティング部をつくり、部長に就任しました。

当時の上司は、現在ワイデックスの代表を務める塩野紀子さん。「すべては目的(OBJECTIVE)から」などマーケティングにとって大事なことを教わりました。一緒に働くうちに、これまでの実践に理論を融合させてマーケターとして幅を広げたいという思いが湧き、働きながらMBAを取得することに。早稲田大学大学院の守口剛先生に師事し、ブランド力を高めることの重要性を学びました。次第にブランディングをもっと実践で深めたくなり、在学中にサザビーリーグへ転職しました。

同社はカンパニー制で、私は飲食事業を展開するアイビーカンパニーに所属。当初は「KIHACHI」、次に「Afternoon Tea TEAROOM」のマーケティング責任者として、企画全般やクリエイティブディレクションなどを担当しました。さらに、OMOを実現するためデジタルマーケティング課を新設。Webサイトや公式アプリの制作・運営、CRM強化にも取り組みました。また、別カンパニーの「Ron Herman」や「フライング タイガー コペンハーゲン」のブランディングを間近で学べたことも大きな経験でした。

同社には約4年在籍し、その後、外食企業と小売企業でマーケティング責任者を務めました。

株式会社丸亀製麺 執行役員CMO 兼 株式会社トリドールホールディングス マーケティング部長 南雲克明さん<br />
1996年オリックス自動車に入社。2000年にコナミスポーツへ転職しマーケティングのキャリアをスタートさせる。約13年同社で実績を積んだのちサザビーリーグに。実業と並行しながら、2014年に早稲田大学大学院にてMBAを取得。その後、外食企業・小売企業を経て、2018年にトリドールホールディングスに入社。マーケティング部長を務め、2021年7月から丸亀製麺の執行役員CMOを兼務。
株式会社丸亀製麺 執行役員CMO 兼 株式会社トリドールホールディングス マーケティング部長 南雲克明さん
1996年オリックス自動車に入社。2000年にコナミスポーツへ転職しマーケティングのキャリアをスタートさせる。約13年同社で実績を積んだのちサザビーリーグに。実業と並行しながら、2014年に早稲田大学大学院にてMBAを取得。その後、外食企業・小売企業を経て、2018年にトリドールホールディングスに入社。マーケティング部長を務め、2021年7月から丸亀製麺の執行役員CMOを兼務。
──現職での仕事内容を教えてください。
トリドールホールディングスには、2018年8月にマーケティング部長として入社。そして2021年、前年に分社化した丸亀製麺の執行役員CMOに兼務で就任しました。

私のミッションはブランド力とCX(顧客体験価値)を向上させ、丸亀製麺を持続的に選ばれるブランドにすること。営業本部やSCM本部など各部と連携し、ブランドパーパスを起点にオフラインとオンラインを統合したマーケティング戦略・戦術をつくり、実践しています。

指針にしているのは、数字から逃げないことです。「売上に貢献できないマーケターには存在価値がない」と常に自分に言い聞かせてきました。お客さまの支持=売上です。丸亀製麺ブランドらしい魅力的な感動体験を提供し、ファンを増やし業績を拡大することが私の仕事です。

コロナ禍において、競合と比較して業績の回復を早められたのも、外部環境を言い訳にせず、思い込みや常識を捨て、数字にこだわってきたからです。トリドールは意思決定が迅速で、たとえ失敗をしてもチャレンジを評価する社風なので、新しいアイデアを早く実現できます。例えば、業界初の安心を訴求するテレビCMで消費者の安心認知を高め来店を促したり、創業20年で初めてのテイクアウトを2カ月で実現させたり。2021年にはうどんの常識を覆す「丸亀うどん弁当」を世に出し、約10カ月で1700万食の販売を達成。外食事業においてもマーケティングが大きく業績に貢献できると内外に発信できました。

社内に対しても同様に、会社や各部署の私たちへの期待を先読みします。特に、営業本部は一緒に悩んでほしいと思っているはずなので、少し前を走るつもりで常に寄り添い、サポートします。社内から「あいつに任せておけば安心だ」と思ってもらえるかどうかは、マーケターとしてのひとつの勝負どころです。
──若手マーケターへのメッセージをお願いします。
2点あるのですが、たくさん実践経験を積むことを勧めます。机の前で考えるだけではなく、まずはトライし、成功も失敗も次に活かすのが重要です。私の強みは営業や販売の現場を知っている泥臭さと、踏まれても蹴られても起き上がる雑草魂です。七転び八起きでさまざまな経験をしてきたからこそ、今では引き出しが増え、精度の高い仮説や見通しを立てられるようになりました。

もう1つは、マーケティングはスポーツや恋愛と似ているということ。相手とライバルがいて、取り巻く環境は複雑。それを把握・理解した上で、自分らしさと武器を磨き、「勝てるようにする(選ばれる)」ために一番確率の高い戦略・戦術を繰り出す。その時々の状況によって相手の気持ちを的確に読み、戦術を変え、結果が出るまで諦めず次の一手を探す。そんな気持ちをマーケティングでも忘れずに、いろいろなことにチャレンジしていきましょう。
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