──大学時代、インドでインターンに参加した経験をお持ちだそうですね。
大学在学中、もっと夢中になれることを探しに、1年間休学してムンバイに赴きました。日本や韓国の大学教授に英文添削サービスを提供する会社で、メルマガやブログ、SNSを使ったWebマーケティングの仕事をしました。まだ流行前だったTwitterも使っていて、「ビジネスって面白い」と思いながらも、貧困や犯罪を目の当たりにする日々の暮らしのなかで、いつかは国境を越えて世の中の課題を解決したいと思うようになりました。

新卒でユニリーバ・ジャパンに入ったのは、若手に早い時期から仕事を任せる社風と、海外で働ける機会に惹かれたから。実際、入社4年目にはアメリカのウォルマートに出向する希望がかないました。

ユニリーバでは主にヘアケアや男性用化粧品のカテゴリーマネジメントを担当。ブランド単体ではなく市場のカテゴリー全体を伸ばす戦略を考えるため、ID-POSデータの分析や、店頭での消費者行動の理解に夢中でした。自分を成長させるものは「良い経験」だと、このときから意識するようになりました。

──せっかく大手に入ったのになぜスタートアップへ?
ウォルマートで、店の棚割をエンジニアがプログラムを書いてつくっているのを見て、今後どの分野でもデジタルの素養がないとやっていけないと実感しました。

日本に帰国したあと、社内でデジタルのスキルを磨くのは難しいと感じて転職を考えるように。次は、小さなチームで大きな社会課題、解決に向き合っているスタートアップで仕事がしたいと思いました。数年で急成長するなかで、イノベーションを起こし、自分自身をアップデートする、良い経験がたくさん積めると考えたのです。

デジタルの活用は必須と感じながらも、リアルプロダクトの温かさやオフラインでの顧客接点が好きだったので、デジタルチャネルだけではなく、リアルチャネルを持つ企業に特に興味を持っていました。そこで、中古住宅リノベーションの「リノベる」を転職先に選びました。

当時は、ちょうど中古マンションのリノベーション市場が拡大し始めたころ。リノベるがマーケティングを強化するタイミングでもありました。そこにメンバーとして入り、CRMの構築やMAツールの導入、デジタル広告の運用など、それまで未経験だったデジタル領域の仕事を意識的に学び、成果を積み重ねました。

ベースフード株式会社 取締役CMO 齋藤竜太さん<br />
一橋大学商学部を卒業後、ユニリーバ・ジャパン入社。カテゴリーマネジメント業務を担当したのち、米ウォルマート本社向けチームに出向。帰国後、自らの成長と社会課題解決を求めて25歳でスタートアップへの挑戦を決意する。リノベるでマーケティング・コミュニケーションの責任者を務め、2017年より現職。創業メンバーとしてマーケティング活動の統括を担当している。
ベースフード株式会社 取締役CMO 齋藤竜太さん
一橋大学商学部を卒業後、ユニリーバ・ジャパン入社。カテゴリーマネジメント業務を担当したのち、米ウォルマート本社向けチームに出向。帰国後、自らの成長と社会課題解決を求めて25歳でスタートアップへの挑戦を決意する。リノベるでマーケティング・コミュニケーションの責任者を務め、2017年より現職。創業メンバーとしてマーケティング活動の統括を担当している。
──ベースフードへはどのような思いで参加しましたか?
代表の橋本とは、当時の自宅近くのカフェで知り合いました。お互いお店の常連客で、すぐに仲良くなってシェアハウスをすることに。まだ創業前でしたが、橋本から「完全栄養食という新しい市場をつくる」という構想は聞いていました。そのうち家にパスタマシーンとか、いろんな種類の粉が届くようになって。僕も試作品を食べたり、マーケティングの相談に乗ったりしていました。

僕は、スタートアップの成功の鍵は、取り組んでいる社会課題の解決に、どれだけ大きなインパクトを及ぼせるかだと思っています。

橋本はベースフードの事業を通じて、「かんたん・おいしい・からだにいい」食事が誰にでも取れるようにしたいと考えた。それが、健康で豊かな社会の実現につながると信じていました。僕はこの話を聞いているうちに、それが実現したときの世界中の人々の健康に与えるインパクトの大きさを理解しました。また、自分自身が荒れた食生活をしていてターゲットとなるユーザーの1人でしたし、そしてなにより楽しそうだったので、創業メンバーに加わることを決めたのです。

──軌道に乗ってから、という選択肢はなかった?
スタートアップは、「軌道に乗って楽になる」ことはありません。創業期もグロース期もいろいろな問題があらゆる分野で起こります。どうせ大変な思いをするのなら、丸ごと大変なことを経験した方が成し遂げたときの達成感も大きい。自分の決断に自信が持てたら早めにジョインするのが良いと思います。

一時的に年収は減るとしても、「年収が下がる」ではなく「良い経験に投資する」と考えた方が良いのではないかと思っています。スタートアップでの挑戦は、事業が成功した場合はもちろん、たとえ失敗したとしても、キャリアにはプラスになると思います。小さな組織でも、全体を見て意思決定を積み重ねる経験は、必ず将来の資産になります。

年収をいっとき減らして経験を買うだなんて、「若いときの苦労は買ってでもせよ」をそのまま体現している感じですよね(笑)。でも、それをしたからこそ、新たな経験を得て事業を伸ばすことで自分自身はとても成長できたと実感しています。だから、若いうちから濃い経験をたくさんできる環境に身を置くことが大事です。僕はこれからもそうやって、社会にイノベーションを起こす仕事に取り組むつもりです。
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【聞き手】
荒川直哉
株式会社マスメディアン
取締役
国家資格キャリアコンサルタント
荒川直哉
マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。累計4000名を超える方の転職を支援する一方で、大手事業会社や広告会社、広告制作会社、IT 企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。転職希望者と採用企業の両方の動向を把握しているエキスパートとして、キャリアコンサルティング部門の責任者を務める。「転職者の親身になる」がモットー。
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キャリアアップナビ
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