二度めまして! さつまです!

ART FUN FANをご覧の皆さん、こんにちは! もしかしたら、こんばんは。美術ライターのさつま瑠璃です。

さつまが好きな絵画ジャンルは、ずばり印象派。「日本人には印象派好きが多い」とよく言われるのでベタですが、色鮮やかな点描や豊かな光の表現、美しいヨーロッパの風景画や人物画は私の心を掴んで離しません。

だからこそ、Immersive Museumは今年気になっていたアートスポットの1つ。一体どんな試みなのだろう?とソワソワしながら会場を訪れました。

Immersive Museumとは?

Immersive Museumは、日本橋三井ホールで開催されている期間限定のアートイベントです。「アートを映像で楽しむ」「空間を楽しむスタイル」という点から、チームラボのデジタルアートや角川武蔵野ミュージアムの企画展をイメージされる方も多いかもしれません。

しかし、“Immersive Museum”は直訳すると“没入型美術館”。「体験」を超える「没入」に重きを置いた演出が魅力となっています。
会場へ入ると、壁や床すべてがスクリーンになっている空間を一望できます。巨大な画面には、いきいきと広がる絵画が。

20分ほどの映像作品が繰り返し上映されている会場内では、全スペースで撮影が可能。上映の合間には絵画を背景にポートレート撮影ができる「フォトタイム」や、デジタル・クリエイティビティに関する芸術文化活動を行うMUTEK.JPの体験型アート「ETERNAL Art Space」の上映もあります。

会場で見られるのはどんな作品?

Immersive Museumの上映作品は、8つのシーンで構成された1本の映像になっています。寝転がって見たり、室内の端にあるウッドデッキに腰掛けて見たりと、鑑賞の仕方は自由

冒頭は「印象派」という呼称のきっかけとなったクロード・モネの絵画「印象・日の出」から始まります。場面が転換すると、19世紀のパリで開催された「第1回印象派展」をイメージした映像になり、室内はまるで本物の美術館を思わせる空間に。

その次はパリ近郊の水浴場を描いたモネの「ラ・グルヌイエール」が題材となり、セーヌ河を表現する水色や濃い青の細かい筆致が空間を埋め尽くします。

次のSCENE 04では名だたる印象派の名画が出現し、壁一面を覆う豪華さ。いくつも並べて見てみると、同じ印象派の画家でもそれぞれの個性があることに気づきます。
そこから次々と印象派の絵画が展開するSCENE05「絵画の中へ」を経て、最後はモネの代表作である「睡蓮」が画面いっぱいに映し出されたあと、画家たちの肖像画の紹介で終わります。

喋っても座り込んでもいい、自由に鑑賞できる環境

今回の取材では、Immersive Museumの企画を手がけた担当者さまにお話を伺いました。

お聞きしたところ、会場の巨大なスクリーンは幅6m以上。20台ものプロジェクターを使って、床にも映像を投射しているそうです。

担当者さまは本展について、「自由に鑑賞できる環境」だと表現しています。一般的な美術館は、立った状態で静かに作品を鑑賞するのがマナーですよね。でもImmersive Museumはそうじゃない。オリジナルのBGMが大音量で流れているから、友達同士で喋りながら過ごしても大丈夫。今回はビーズソファブランドYogiboの全面協力により、床には大小さまざまなクッションも置かれています。座ってゆったりくつろぎながら作品を見られるのは、まさにいままでにない体験です。

周囲のお客さんを見てみると、20代の女性2人組を最もよく見かけましたが、お盆にはファミリー層も多く訪れ、印象派が好きな年配の方もいらっしゃったそうです。

今回の企画で重視したのは、「デジタルアートじゃないと気づけないことを表現する」こと。例えば、SCENE 05「絵画の中へ」では、次々に展開される絵画の世界へ“没入していく”ことを最も実感できるのではないでしょうか。昨今ではVRチャットや映画の4DXなど、体感型のデジタルアクティビティが人気を博しています。ここでは絵の中の世界──パリの市街地や森の湖へ、私たちは実際に訪れたように感じられるでしょう。前景から背景へ、大きなモチーフから細部へと視点はクローズアップされ、絵の中のリアルな風景をはっきりと認識できます。

その点で「印象派」は最適な題材。塗り重ねられた筆致を分解できるからこそ、絵の中に入っていく感覚を演出できたといいます。映像制作にあたっては、実物の絵画を所蔵している海外の美術館にも監修を受けたのだとか。

「Dive in Art」というタイトルや「鑑賞する絵画から、体感する絵画へ。」というキャッチフレーズにも象徴されている通り、「絵画の中へ飛び込んでいく」「絵画が私たちに向かってくる」ことを感じられる場所。素敵ですね!

さつまのお気に入りはSCENE 05「絵画の中へ」!

めくるめく8つのシーンはどれも見応えたっぷり! その中でも特にさつまの印象に残ったのは、SCENE 05「絵画の中へ」。担当者さまも一番のおすすめとしていたシーンです。

額に入った1枚の絵画が次第にクローズアップされ、こちらに向かってやってくるビジョンは大迫力。絵と鑑賞者の境界線さえも飛び越えてやってくる絵の世界に没入するとともに、「絵」を構成していたはずの筆致はバラバラになっていきます。ああ、この絵はこうして画家が塗り重ねたんだな──と、巨匠たちが風景を捉えながらキャンバスに色を重ねていった光景が頭の中に浮かびました。そして、フランスの美しい街並みや自然の中にダイブしたようなこの感覚。私がフランス絵画を好きな理由の1つは「絵を眺めていると憧れの土地で海外旅行をしている気分になれるから」なのですが、まさにその気分が“没入感”によって高まったのです。

もう1つ、お気に入りの場面は、SCENE 06「モネの連作」。モネは同じモチーフを、朝から夜までのさまざまな時間帯に描き分けたことで有名な作家です。時計が針を刻むような音楽をバックに、壁から床まで微妙な光の色合いで違った表情を見せる同じ絵が流れていく様子。モダンな表現で面白かったです。

お洒落なカフェメニューを注文してみて!

Immersive Museumへ遊びに行ったらぜひチェックしてほしいのが、スイーツやアルコールなどを提供するCafé&Giftエリア。

「食べる印象派。」とキャッチコピーが付いたカフェメニューは、印象派の作品をもとにオリジナル開発されたもの。目にも鮮やかな「Gelée Boisson(ゼリードリンク)」や「Glace Pilée(かき氷)」などはここでしか味わえないメニューです。テイクアウトOKのものもあるので、日本橋の街歩きのおともにもいいですね。

上の写真は、「soda à la glace(クリームソーダ)」の「印象・日の出」。モネの描いた水平線の日の出が、赤とブルーバイオレットの美しい2層のグラデーションで表現されています。窓際のテーブル席で、日本橋の街並みを眺めながらひと息。アーティストYuu Udagawa氏によるサウンドインスタレーション『水紋~Water Crest~』も没入感を高めてくれます。

通路にある2枚の絵はデジタルアートらしいアイデアを活かした作品で、見る人を楽しませてくれるユニークさが魅力です。

印象派作品の中で描かれた人々が描かれている以上の個性を持ち、目の前の鑑賞者の存在に気づいたら?
──Immersive Museum


例えば、この人はどうも私たちが目を離した隙に、カヌー漕ぎをやめてサボろうとするみたいですね。
どんなふうに絵が動くのか、ぜひ会場で確かめてみてください。

特設ショップやコラボも充実!

ショップには本企画をイメージしたオリジナルグッズが盛り沢山! なかでも、画材のパレットをイメージしたクッキーは1番の人気商品なのだとか。手頃なサイズ感は、ちょっとしたお土産にもぴったりですね。
他には睡蓮柄のトートバッグや文房具なども目を引きます。また、COREDO室町をはじめとした日本橋エリアの各店ともコラボレーションを実施。日本橋で過ごすアートな休日を彩ってくれますよ。

おわりに

Immersive Museumが目指すのは、ただの「絵画の映像化」ではありません。印象派絵画という題材を使ってデジタルアートならではの表現を試みた、実験的な企画なのです。

開催は10月29日(土)まで。カフェやグッズも楽しみながら一休みするだけでも素敵な時間になるでしょう。友達同士でもカップルでも、おひとりでも自由に過ごせます。

あなたも印象派ワールドに飛び込んでみましょう!
【イベント情報】
Immersive Museum
https://immersive-museum.jp/
・会期:2022年7月8日(金)~10月29日(土)
・時間:【平日】10:00~21:00(20:20 最終入場)【土日祝】9:00~21:00(20:20 最終入場) ※事前予約制
・住所:〒103-0022 東京都中央区日本橋室町2-2-1 COREDO室町1 - 4F 日本橋三井ホール
・交通案内:銀座線・半蔵門線三越前駅直結、東京メトロ日本橋駅から徒歩7分、山手線・中央線・東海道線東京駅 日本橋口から徒歩9分
・観覧料:大人(18歳以上)2500円、中学生・高校生・専門学生・大学生1500円、小学生以下無料
※掲載日時点での情報です。詳細は、会場からの情報をご確認ください。
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さつま瑠璃
文筆家(ライター)。芸術文化を専門に取材執筆を行い、アートと社会について探究する書き手。SNSでも情報を発信する他、さつまがゆく Official Podcastでは取材執筆にまつわるトークを配信中。Web: https://satsumagayuku.com/ X:@rurimbon
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