マーケティングリサーチ企業のインテージは、2019年8月に実施した世界20カ国のマーケターを対象とした調査結果から導き出した「日本のマーケター自身が描く、2025年のありたい姿」の分析結果を公開した。

今回の分析結果は、独自のリサーチ&創発プログラム「デ・サインリサーチ」により、マーケター2000人の意識の中にある未来を「マインドディスカバリーマップ」として見える化したもの。新型コロナウイルス感染症拡大により、企業のマーケティング活動も大きな影響を受ける中、困難を乗り越えるエンジンとなるべく、敢えてコロナショック以前に実施した調査結果から導き出したインサイトの日本編となる。

2025年のマーケティングの核

世界20カ国のミレニアル世代を中心とする若年層マーケター(20-35歳)500人、シニアマーケター(40-55歳)500人、日本の若年層マーケター500人、シニアマーケター500人の計2,000人に、「成功したマーケターとしての自身が、世界屈指のビジネス誌にインタビューされている状況」を想像してもらい、どのようなキーワードでそのインタビューに答えるかを調査。その回答を「マインドディスカバリーマップ」として可視化した。

その中でも、日本のミレニアル世代を中心とする若年層マーケター(以下 ミレニアルマーケター)と、よりキャリアの長いシニアマーケターのマップを紹介していく。
ミレニアルマーケターの期待のハブ(中心)は、「ペルソナ」「Instagram」となっており、2025年のマーケティング活動に欠かせないツールとなっていることがわかる。また、「共感」も挙げられており、マーケター自らが共感できるヒトの像、生活者にも共感される”顔が見える”ロールモデルを創りたいという期待を読み取ることができ、「象徴となる人を描く」ことが課題解決の鍵ととらえていると推察できる。

一方、シニアマーケターの期待のハブ(中心)には、「品質」「高品質」「商品」があり、プロダクトの品質を追及する姿勢が読み取れる。同じく、「先進性」「挑戦」も挙げられており、「品質と先進性を兼ね備えた商品やサービスの創造に挑戦したい」、先進的なモノづくりへの期待が集結していると考えられる。

2025年、マーケターにとっての「戦略」

ミレニアルマーケターのマップでは北東に位置する「戦略」は、周辺に「シーズ」「顧客」「市場」「グローバル」「先進的」「トレンド」「最先端」があり、市場を開拓していく意味合いになる。また、ミレニアルマーケターで最も多い連想ワードである「AI」もこのエリアに出現しており、IoTや最先端技術を駆使し、グローバル展開を狙い、顧客獲得、市場戦略を緻密に行っていきたい期待が表れている。

一方、働き方改革や、自己実現のエリアに「戦略」が出現しているシニアマーケターのマップでは、ハブ(中心)にある「成功」から「戦略」へと同じベクトルのワードを繋げると、「楽しさ」「笑顔」「達成感」の先に「戦略」が挙げられている。また、「人脈」「フィーリング」「やりがい」も周辺にあることから、「フィーリングが合う仲間と人脈構築」が「戦略」と紐づいていると読み取れる。シニアマーケターにとっての2025年の「戦略」は、個人の達成感や笑顔のため、働き甲斐を求め、働き方改革の実現を思い描く。そしてそこには、「人脈作りや周囲の人との関係性づくりに、戦略が必要だ」という思いがあると受け取れる。

2025年、マーケターにとっての「社会課題への対応」

ミレニアルマーケターでは、社会課題関連ワードがマップ全体に出現しており、今後のマーケティング活動において社会貢献の視点はあらゆる領域で切り離せないと考えていることがわかる。また、北方向にある「環境問題」「エコ」「少子化」の周辺には、「SNSの活用」があり、社会課題の問題提起や、社会活動への参画手段のひとつとしてSNSを位置付けているとも解釈できる。その先には、「文化」もあり、ミレニアルマーケターにとって身近な発信ツールであるSNSと環境問題をつなげた新たな文化の創造に期待が込められていると推察できる。

シニアマーケターでは、社会課題についてグローバル課題か、国内課題かの区別を意識している構造が見て取れる。グローバル課題のエリアには「SDGs」「環境問題」「リサイクル」、国内課題では「高齢化」「少子化」「社会貢献」「健康」が出現しているが、「社会貢献」がIT技術やIT企業で形成されたエリアと対極に現れていることから、意識上のつながりが薄いものととらえられている点が特徴として挙げられる。日本国内の社会課題とITを結合させる活動が、新たな事業創造のヒントとも言えるのかもしれない。