Vol.50 指針は「鶏口牛後」一番になれる場所を見つける方法 キャリアアップナビ
キャリアアップナビでは、マーケティングやクリエイティブ職のキャリアアップについて、毎月テーマをピックアップして解説します。今回は、ユナイテッドアローズで執行役員CDO OMO本部 本部長を務める藤原義昭(ふじはらよしあき)さんにこれまでのキャリアについて伺いました。良い転職は、良質な情報を入手することから始まります。「こんなはずではなかったのに…」とならないための、転職情報をお届けします!
──最初の就職先にコメ兵を選んだのはなぜですか。
僕が大学を卒業した1999年は就職氷河期で、就職活動には苦労しました。いろいろな会社の説明会に参加する中で出会ったコメ兵に興味を持ったのは、中古品市場に大きな可能性があると感じたから。当時の中古品市場の中心だった質屋さんには、融資したお金に対して利息をつけることで利益を上げる金融業の側面が強くありました。その中で、リユースという概念を掲げ、中古品売買だけで利益を出しているビジネスモデルに興味を抱いたのです。さらに会社説明会で上場の準備を進めていると聞いて、成長意欲がある会社だと感じたことも入社の決め手になりました。
入社後、配属されたのはジュエリーを扱う部署でした。最初は店頭に立っていたのですが、3カ月たった頃、社内でECを始める話が出ました。社内に精通した人材はいなかったので、僕の部署でも部長が「誰かネット通販の立ち上げをやらない?」と自薦を呼びかけたのです。当時、僕はパソコンすら持っていませんでしたが、「この機会を活かしたい」と即、手を挙げました。
小売業の主戦場は店舗。多くの小売企業では店長、エリアマネージャー、本部長というキャリアパスが王道です。でも僕は王道のキャリアではなく、自分が一番になれる場所を見つけたいと思い、EC事業にチャレンジすることを決めました。
2000年に始めたEC事業は、すぐに成果が出ました。楽天市場やAmazonが売上高を伸ばし、EC市場への意識が企業の間で広まったのは、2000年代中ごろ。コメ兵は先行者利益を得ることができたと思います。
成長の芽が出たことで、社を挙げて本格的に取り組むことになり、2010年にはEC事業専門のWeb事業部が立ち上がりました。そこで僕は部長としてEC事業、デジタルマーケティング、社内情報システムを統括することに。在籍した21年間で、結果的に、10以上の事業部のECサイトをつくり、基幹システムのリプレースを3回しました。
これらの経験から、「自分は小売業界において誰も歩いたことがない道を進んできた」と言えるのではないかなと思っています。
──ユナイテッドアローズへの転職を決めたきっかけは?
コメ兵で僕はゼロからの挑戦をたくさんすることができました。いわば“社内転職”ともいえる状況を繰り返してきたので、ほかの会社に移ることも僕にとってはその延長という感覚です。
2021年にユナイテッドアローズに転職したのですが、選んだ理由は業界のリーディングカンパニーだから。前職では、まず自社の知名度を上げることからスタートしましたが、それには時間もお金も労力もかかりました。そこで、新たな挑戦として、すでに知名度があり、自社プロダクトがある会社で、マーケティングの経験を積みたいと考えたのです。
ただ、DXという観点でいうと、ユナイテッドアローズをはじめアパレル業界は全体としてDXが進んでいません。他業界に後れを取っている分、急角度で推進しなければならない。そこに挑戦できることも大きな魅力でした。
面接の場では一方的に選考されるのではなく、アパレル業界の中でも「セレクトショップ業界」の現状とユナイテッドアローズの課題、数年後の理想の姿、それに対して僕ができることをプレゼンしました。プレゼン内容を実現するには、ポジションと権限、責任が必要だと考え、「CDOとして採用してください」とも言いました。
何をするにしても、自分で考え抜いて結論を出し、その方向に進むことが大事だと思っています。これは僕の行動指針でもあるのですが、迷ったときは他人がやっていないことを選択する。難しい挑戦をする自分が好きなんですよね。 ──マーケターにはどんな素養が必要だと思いますか。
必要な資質は1つしかありません。それは、お客さまに対する観察力です。僕はユナイテッドアローズに入社初年度、顧客リサーチを徹底的に行いました。年間購買額や平均単価、購入頻度まで細かく。その結果、クロスユース率が高いことがわかった。だから、アパレル業界で一般的なブランドごとのマーケティングをやめるべきだと判断しました。当社が展開するさまざまなブランドの独自性は打ち出しつつ、ユナイテッドアローズ全体を愛してくれるお客さまを増やすマーケティングに大きくシフトしたのです。
もし転職先で経験が浅く、何をやったらいいかわからないという方がいるなら、まずは自社の商品を買ったり、サービスを使ってみたりするとよいと思います。データがないので顧客理解ができないと言う前に、自分にできることを考えてみる。厳しいことを言うようですが、顧客リサーチができない人はマーケターをやめた方がいい。そのくらい、お客さまを見ることはマーケティングの勘所だと思っています。
僕が大学を卒業した1999年は就職氷河期で、就職活動には苦労しました。いろいろな会社の説明会に参加する中で出会ったコメ兵に興味を持ったのは、中古品市場に大きな可能性があると感じたから。当時の中古品市場の中心だった質屋さんには、融資したお金に対して利息をつけることで利益を上げる金融業の側面が強くありました。その中で、リユースという概念を掲げ、中古品売買だけで利益を出しているビジネスモデルに興味を抱いたのです。さらに会社説明会で上場の準備を進めていると聞いて、成長意欲がある会社だと感じたことも入社の決め手になりました。
入社後、配属されたのはジュエリーを扱う部署でした。最初は店頭に立っていたのですが、3カ月たった頃、社内でECを始める話が出ました。社内に精通した人材はいなかったので、僕の部署でも部長が「誰かネット通販の立ち上げをやらない?」と自薦を呼びかけたのです。当時、僕はパソコンすら持っていませんでしたが、「この機会を活かしたい」と即、手を挙げました。
小売業の主戦場は店舗。多くの小売企業では店長、エリアマネージャー、本部長というキャリアパスが王道です。でも僕は王道のキャリアではなく、自分が一番になれる場所を見つけたいと思い、EC事業にチャレンジすることを決めました。
──その「自分が一番になれる」場所は見つかった?
2000年に始めたEC事業は、すぐに成果が出ました。楽天市場やAmazonが売上高を伸ばし、EC市場への意識が企業の間で広まったのは、2000年代中ごろ。コメ兵は先行者利益を得ることができたと思います。
成長の芽が出たことで、社を挙げて本格的に取り組むことになり、2010年にはEC事業専門のWeb事業部が立ち上がりました。そこで僕は部長としてEC事業、デジタルマーケティング、社内情報システムを統括することに。在籍した21年間で、結果的に、10以上の事業部のECサイトをつくり、基幹システムのリプレースを3回しました。
これらの経験から、「自分は小売業界において誰も歩いたことがない道を進んできた」と言えるのではないかなと思っています。
──ユナイテッドアローズへの転職を決めたきっかけは?
コメ兵で僕はゼロからの挑戦をたくさんすることができました。いわば“社内転職”ともいえる状況を繰り返してきたので、ほかの会社に移ることも僕にとってはその延長という感覚です。
2021年にユナイテッドアローズに転職したのですが、選んだ理由は業界のリーディングカンパニーだから。前職では、まず自社の知名度を上げることからスタートしましたが、それには時間もお金も労力もかかりました。そこで、新たな挑戦として、すでに知名度があり、自社プロダクトがある会社で、マーケティングの経験を積みたいと考えたのです。
ただ、DXという観点でいうと、ユナイテッドアローズをはじめアパレル業界は全体としてDXが進んでいません。他業界に後れを取っている分、急角度で推進しなければならない。そこに挑戦できることも大きな魅力でした。
面接の場では一方的に選考されるのではなく、アパレル業界の中でも「セレクトショップ業界」の現状とユナイテッドアローズの課題、数年後の理想の姿、それに対して僕ができることをプレゼンしました。プレゼン内容を実現するには、ポジションと権限、責任が必要だと考え、「CDOとして採用してください」とも言いました。
何をするにしても、自分で考え抜いて結論を出し、その方向に進むことが大事だと思っています。これは僕の行動指針でもあるのですが、迷ったときは他人がやっていないことを選択する。難しい挑戦をする自分が好きなんですよね。 ──マーケターにはどんな素養が必要だと思いますか。
必要な資質は1つしかありません。それは、お客さまに対する観察力です。僕はユナイテッドアローズに入社初年度、顧客リサーチを徹底的に行いました。年間購買額や平均単価、購入頻度まで細かく。その結果、クロスユース率が高いことがわかった。だから、アパレル業界で一般的なブランドごとのマーケティングをやめるべきだと判断しました。当社が展開するさまざまなブランドの独自性は打ち出しつつ、ユナイテッドアローズ全体を愛してくれるお客さまを増やすマーケティングに大きくシフトしたのです。
もし転職先で経験が浅く、何をやったらいいかわからないという方がいるなら、まずは自社の商品を買ったり、サービスを使ってみたりするとよいと思います。データがないので顧客理解ができないと言う前に、自分にできることを考えてみる。厳しいことを言うようですが、顧客リサーチができない人はマーケターをやめた方がいい。そのくらい、お客さまを見ることはマーケティングの勘所だと思っています。