ART FUN FAN Vol.6 国立新美術館「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」

ART FUN FANでは、広告・マーケティング・クリエイティブ業界で働く皆さまにアートの情報をお届けします。おすすめの企画展をピックアップして、美術ライターが独自の切り口で解説。「アートってなんだかよくわからない。」方から「興味があるからもっと知りたい!」方まで、誰でも楽しめるアートの魅力に触れていきましょう!
コラム第6回では、都内でも規模の大きいミュージアムである国立新美術館を訪れ、テート美術館展が誇るコレクションを取材しました。
お送りするのは、美術ライターのさつま瑠璃。“やさしい言葉でartをもっと楽しく身近に”をモットーに、展覧会を幅広く取材するフリーの記者です。今回のテーマは「光」。古典から現代アートまで、幅広い領域のアーティストが関心を寄せる「光」の表現に触れていきましょう!
コラム第6回では、都内でも規模の大きいミュージアムである国立新美術館を訪れ、テート美術館展が誇るコレクションを取材しました。
お送りするのは、美術ライターのさつま瑠璃。“やさしい言葉でartをもっと楽しく身近に”をモットーに、展覧会を幅広く取材するフリーの記者です。今回のテーマは「光」。古典から現代アートまで、幅広い領域のアーティストが関心を寄せる「光」の表現に触れていきましょう!
六度めまして!さつまです!

さつまです!
毎回のご挨拶とともにお見せしているシルエット写真もこだわりを持って撮影しています。今回は「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」で見られるインスタレーション作品の中で撮ってみました! コラムVol.1とVol.2のお写真にだいぶ寄せてみたので、気になる方は見比べてみてくださいね。
第6回のコラム取材では、東京都・乃木坂にある国立新美術館を訪れました。今回の展示会は、イギリスにあるテート美術館のコレクションから「光」をテーマに作品をピックアップしたもので、18世紀末から現代までの約200年間におよぶ「光」の表現を探求できます。
実は、この前に開催していた「ルーヴル美術館展 愛を描く」ではフランスのルーブル美術館のコレクションから「愛」をテーマにした作品を取り上げていたので、奇しくも似た構成となっていますね。現在「ルーヴル美術館展」は巡回し、京都市京セラ美術館で9月24日(日)まで見られます。
テート美術館展、ここが良かった! さつまイチオシのGOODポイント

テート美術館展の入り口
展覧会タイトルの通り、テート美術館が誇る7万7000点以上の所蔵品から、18世紀末から現代に至るまでの200年間に及ぶさまざまな作品を「光」という共通のテーマで縦断する企画です。
特に面白いのは、作品同士が「光」という共通項をもとに年代やジャンルを越境してコラボレーションしていること!
例えば、1800年代に制作された印象派の西洋絵画を飾る展示室には、2005年制作の草間彌生の作品《去ってゆく冬》が置かれ、その鏡面に映る景色が何とも不思議な感覚を生み出しています。時代、地域、ジャンルを超えて「光」の作品を一望できる点が斬新です!
もともと国立新美術館は、美術展の王道ともいえるヨーロッパ絵画の大型企画展から、現代アートの巨匠をメインにした展示まで行い、広大な展示空間を活かしてさまざまな表情を見せてくれる館です。古典×現代の異色のタッグはチャレンジングでありつつ、国立新美術館にはとてもマッチしています。

草間彌生《去ってゆく冬》2005年 テート美術館蔵 © YAYOI KUSAMA
テート美術館展の見どころをさらにピックアップ!
本展は中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドで話題となってきた世界巡回展であり、出品される120点のうちおよそ100点が日本初出品という貴重な機会です。音声ガイドを務める本展アンバサダーは、俳優の板垣李光人(いたがきりひと)さん。リヒト(Licht)はドイツ語で「光」を意味するので、まさにぴったりの人選ですね。
「光」といえば真っ先に名前の挙がりそうな画家ターナーや、近現代の「光」にまつわる立体作品にも是非ご注目ください!
西洋絵画から現代アートまで、年代もジャンルも幅広い!
年代の幅広さはもちろん、加えて絵画・写真・映像・空間芸術などジャンルの豊かさも魅力的です。光と影のドラマチックな対比がなされる聖書・神話の絵画に始まり、デンマークの画家ヴィルヘルム・ハマスホイが描く室内の光、20世紀ドイツの造形芸術学校「バウハウス」で生み出された実験的な写真作品など、多種多様な光のアート作品を楽しめます。

(手前)アルマン・ギヨマン《モレ=シュル=ロワン》1902年 テート美術館蔵

展示風景より(バウハウスの写真作品)

(左)ブリジット・ライリー《ナタラージャ》1993年 テート美術館蔵 © Bridget Riley 2023-2024. All rights reserved./(右)ワシリー・カンディンスキー《スウィング》1925年 テート美術館蔵

ゲルハルト・リヒター《アブストラクト・ぺインティング(726)》1990年 テート美術館蔵 © Gerhard Richter 2023 (10012023)
■印象派絵画を楽しめる没入型アート体験「Immersive Museum」の記事はこちら
ART FUN FAN Vol.2 Immersive Museum「Dive in Art」展
光といえばターナー、そしてコンスタブル

(手前)ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《湖に沈む夕日》1840年頃 テート美術館蔵

(左)ジョン・コンスタブル《ハリッジ灯台》1820年出品? テート美術館蔵/(右)ジョン・コンスタブル《ハムステッド・ヒースのブランチ・ヒル・ポンド、土手に腰掛ける少年》1825年頃 テート美術館蔵
刻一刻と変化する自然景を捉えようとする姿勢は、後の印象派にも連なっていきました。
近現代の光に着目したインスタレーションを楽しもう
展示室の後半に進むと、立体的な作品が増えてガラッと雰囲気が変わるのが印象的です。
ピーター・セッジリー《カラーサイクル III》 1970年 テート美術館蔵 © Peter Sedgley, courtesy of The Redfern Gallery, London

オラファー・エリアソン《黄色vs紫》2003年 テート美術館蔵

(手前)デイヴィッド・バチェラー《私が愛するキングス・クロス駅、私を愛するキングス・クロス駅 8》2002-07年 テート美術館蔵/(奥)デイヴィッド・バチェラー《ブリック・レーンのスペクトル 2》2007年 テート美術館蔵 © David Batchelor
そうした近現代において、作家を含めた人々の「光」に対する感覚や関心も移り変わり、新たな芸術が生み出される契機となりました。会場の最後を飾る大型インスタレーションは、この世界に溢れる数多の光の中で“私たちもその一部である”という壮大な世界観を語ります。

オラファー・エリアソン《星くずの素粒子》2014年 テート美術館蔵 © 2014 Olafur Eliasson
おわりに
——この世界は光に満ち溢れている。光があることで色の見え方も変わり、photo(光)とgraph(書くこと)によって写真ができ、それらはあらゆる芸術や鑑賞体験の原点となっています。
開催は10月2日(月)まで。東京開催の終了後は、大阪中之島美術館を巡回予定です。
広告やクリエイティブに携わる方も、きっと良い刺激を受けられるのではないでしょうか?
イベント情報
国立新美術館「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」https://www.nact.jp/exhibition_special/2023/tate/index.html
・会期:2023年7月12日(水) ~ 2023年10月 2日(月)
・開館時間:10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
・休館日:毎週火曜日休館
・住所:〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2 国立新美術館 企画展示室2E
・交通案内:東京メトロ千代田線乃木坂駅 青山霊園方面改札6出口(美術館直結)
東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩約5分
都営地下鉄大江戸線六本木駅7出口から徒歩約4分
・入館料(税込):当日 2200円(一般)、1400円(大学生)、1000円(高校生)
中学生以下は入場無料。
障がい者手帳をご持参の方(付添の方1名を含む)は入場無料。