ユーグレナ社の広報部門にインタビュー。広報職の手腕の見せ所はどこにある? ユーグレナ 経営戦略部 コーポレートコミュニケーション課 課長 北見裕介さん
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藻(も)の一種であるユーグレナを主に活用し、食品や化粧品の製造販売、バイオ燃料の開発を行うバイオテクノロジー企業、ユーグレナ社。そこで広報を担当する北見裕介(きたみゆうすけ)さんに、ユーグレナ社での広報のお仕事についてお聞きしました。ユーグレナ社に入社する前は、下着メーカーと化粧品メーカーでeコマースなどのWeb業務全般を担当。その後、メディアを運営するIT企業で広報業務を担当してきた北見さん。そのキャリアとユーグレナ社での取り組みから、広報職の未来について考えます。
ユーグレナ社広報チームの仕事
──北見さんがマネージャーを務められているユーグレナ社の広報チームについてお聞きします。どのような施策や取り組みをされているのでしょうか?ユーグレナ社では食品や化粧品などのヘルスケア事業やバイオ燃料事業、遺伝子解析を行うバイオインフォマティクス事業など、さまざまな事業を手がけています。広報チームではこれらの広報業務を担っています。例えば、飲料の商品リニューアルの情報発信や、いよいよ供給開始となった「次世代バイオディーゼル燃料」の告知など、コーポレートや事業など全般の広報業務を担当しています。
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微細藻類ユーグレナ(和名ミドリムシ) 提供:株式会社ユーグレナ
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ユーグレナを使用した「バイオディーゼル燃料」
──ユーグレナ社では新型コロナウイルス感染症の影響による時差出勤やテレワークなどへの対応もとても迅速であったのを覚えています。2月の段階ですでにプレスリリースを配信していましたよね?
そうですね。ユーグレナ社では緊急事態宣言より前の、2月から時差出勤やテレワークを開始しました。当時の経営理念「人と地球を健康にする」のもと、こちらも当時の行動指針の一つに「健康的に生きる」というものがありました。健全な判断や思考で仕事をするためには、まず自らが健康且つ安全である必要があると考えているので、いち早く導入となりました。テレワーク・時差通勤開始日にプレスリリースを配信し、メディアからもお問い合わせをいただきましたね。また、今年8月の15周年を機に行動指針をアップデートし、「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」というユーグレナ・フィロソフィーのもと、コロナ禍でのあるべき業務スタイルを模索しています。
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ユーグレナグループの新型コロナウイルスに対する対応についてのプレスリリース。2020年2月3日に発表された
──コミュニケーションを司る広報部門こそ、常にそのような情報リテラシーの高さが求められるかと思います。情報への感度を高めるにはなにが必要であると思いますか?
一番は「世間が好き」であることだと思います。「自分には世界がこう見えている。では、ほかの人にはどういう風に見えているのか?」。このような、世間の人たちがどのように情報を受け取っているのかを気にする感度が必要なのではないでしょうか。現代において、「風が吹いたら桶屋が儲かる」とはなにを指すのか。例えば、「ネイルをオシャレにする人はInstagramで食事をアップしがち」みたいな。だいぶ極端ですけど。そういう法則に気づき、検証していくことで自然と情報感度は上がっていくのではないかと思いますね。
宣伝、販促、広報の3軸を培ったキャリア
──北見さんはこれまで下着メーカーで広報宣伝部、化粧品メーカーのEC事業部、IT企業の広報を経て、現在ユーグレナ社の広報課長を務めているとお聞きしました。北見さんのこれまでのキャリアの変遷について教えてください。私は学生のころから、「買いたい気持ち」を生み出す仕事に興味がありました。特に、お客さまから長い期間愛され、プロダクトのイメージが確立したブランド、それを持つメーカーにはどんな秘密があるんだろう、ということが知りたくて就職活動をしていました。その結果、新卒で入社をしたのは下着メーカーでした。なぜ選んだのかというと、下着って、外から見えないのにハイブランドが存在するんですよね。それが私にとってはすごく不思議に感じていました。「不特定多数の人には見えない部分に着用するハイブランドの商品は、どんな心情で買われていくのか?」「その心情はどうすればつくられるのか?」その答えを知りたくて就職しました。
そのメーカーでは、情報システム部門に配属されたのち、広報宣伝部に異動しました。広報宣伝部では、Webサイトの管理運営を担当。そこから会社のSNS担当やさまざまなプロモーションの設計など、主に宣伝の仕事を担ってきました。トータルで、約9年間この下着メーカーには在籍していました。
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下着以外の商材を担当してみたくなったのです。異なる商材でも自分の経験は活かせるのか勝負してみたくなったというか。また下着メーカーは京都での勤務だったのですが、一度東京で働いてみたいという気持ちもありました。そのような理由で化粧品メーカーへ転職、東京へ上京しました。その後、IT企業に転職をします。
その理由は、総合的なプロモーションに関わる仕事のスキルをより高めたいと考えたからです。これまでの2社では、Webサイトの立ち上げや、EC戦略の構築、SNSのなかの人などを経験することにより、宣伝と販促、この2つのスキルを磨くことができたと思っています。それらに対して、広報のスキルはまだまだ不十分だと思いました。ライフスタイルが細分化するこれまでになかった変化の多い現代。だからこそ、基礎的なスキルをしっかりと身につけていることが重要である。広報宣伝の全領域を自分で担当できるようになりたいと考えました。
IT企業の広報担当として、メディアへのプレスリリースの発信や取材の立ち会い、メディアリレーションなどの広報の基本的な仕事を担当しつつ、スポンサーをしているラジオ番組の調整や、動画の制作、ファンミーティングの設計を責任者として担当していました。
──そして、2019年からユーグレナ社の現職に転職をされたわけですが、ユーグレナ社を選んだ要因はなんだったのでしょうか?
それは未来を変えるプロダクトをつくりそうな会社だったからですね。これまでの経験から、私自身はモノづくりがあまり得意でないと思っています。だからこそ、自分ができない分、私はクリエイターや研究者のことをすごくリスペクトしています。そんな彼らに対して、私にできることはなにかと考えたとき、「丹精こめてつくったプロダクトを、世間受けさせるものに変えること」が答えでした。
ビジネス上において、プロダクトはマーケットインの観点から組み上げたほうが適切であると言えると思います。しかし私はその一方で別の思いも抱いています。批判ある表現になるかもしれませんが、私はプロダクトアウトなモノにも愛と尊敬を感じてしまいます。市場や消費者のことを考えるのももちろん大切なのですが、だからといってクリエイターたちの思いやこだわりも壊したくない。そのこだわりが、もしかすると、いま普通に生活しているなかでは気づいていない、「未来の生活」を見出している可能性があるから。だから、その間をつなぐ仕事を私はしたい。それができる環境を探しているなか、出会ったのがこのユーグレナ社でした。ユーグレナ社のさまざまな素材やプロダクト、取り組みを知ったとき、未来をより良く変えられる可能性を強く感じたのです。このような経緯で私はユーグレナ社へ入社することを決めました。
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「からだにユーグレナ」シリーズ
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2020年9月からは、西武グループの路線バスにもユーグレナバイオディーゼル燃料が使用されている
広報の手腕の見せ所
──それでは最後に、北見さんがこの先目指していきたいキャリアについて教えてください。まずはユーグレナ社の商品・サービスがもっと多くの人に手を取ってもらえるような状況をつくっていきたいです。同じ職場で働く仲間の熱や思いがこもった結果=プロダクトをしっかりと世の中に伝えていきたいですね。そのためにはこの仕事の基本である、宣伝、広報、販促の3軸がブレることなく、それでいてさまざまなことに取り組みたいです。
インターネットが普及して、さまざまなプラットフォームやコンテンツが台頭しても、基本的な人の物事の捉え方は変わらない、と私は思っています。特に、メディアを介したコミュニケーションの基本は言葉と写真。それが本や新聞、ネットの記事、動画などの場で、その場の雰囲気に合わせて展開されていきます。これが変わらない以上、基本は変わらないと思います。それは広報以外のあらゆるビジネスで同様です。例えば、新しい横文字のマーケティング用語が流行ったとしても、「Product」、「Place」、「Price」、「Promotion」のマーケティングの4Pといった、基本的なことに最後は帰結すると思っています。大きな定義が変わらない限り、基礎ができてさえいれば、どんなに新しいものや状況にも最終的にはしっかりと芯を捉えることができるのではないでしょうか。
──時代が変わり、新しいものが生まれても、基本の形は変わらない。ベースがしっかりできていれば、どんな状況にも対応ができるということですね。
ただ、さまざまなモノ・コトが細分化して、それにより新しいものが生まれていることも事実です。消費者のプロダクトに対する常識や情報収集の方法は日夜アップデートされていきます。だからこそ、企業の広報は自社のプロダクトに関する情報をどんな媒体にも正しく発信していくことが求められます。テレビや雑誌、Webはもちろん、時代によりトレンドに上がるSNSやそのほかのサービスなど、消費者の縦横無尽とも言える動きに適応しなくてはいけません。
例えばテレビで、あるプロダクトが気になってWebでそのプロダクトについて調べる消費者がいたとします。そこでもし、そのプロダクトのWebサイトが用意されていなければ、きっと多くの消費者は買うことを止めてしまう。これを避けるためにも、企業が自社プロダクトのWebサイトを設けることは、現代では必須の行動です。このような消費者と企業間のやり取りがこれから先も永遠に繰り返されていくのです。「Twitterのアカウントがないから信用できない」、「Instagramの写真がかっこ悪いから買わない」。消費者を満足させる情報を配備できない企業は、次々生まれる新しいプロダクトやサービスを提供するほかの企業たちのなかに埋もれていってしまうでしょう。自社がそうなってしまわないようにすることが現代の広報の仕事における最大の腕の見せ所であると思いますね。とはいえ、まだ実は公式のInstagramアカウントを準備できていないので、当社でも課題になってはいますが…(笑)。
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これまでは情報取得のチャネルだったところが急に売り場になったり、逆にいままでは売り場だと思っていた場所が情報取得のチャネルに変わったりもしています。例えば、Twitterを見て、そのままリンクを踏んで購入に至ることは前者。現物をリアル店舗でチェックして、購入はネット通販することは後者を指します。このような変化が、気がつけば起こっていて、情報収集する手段は気がつけば増えている状況です。
一方で、情報収集する手段が増えるほど、誤った情報にたどり着く機会も増えていきます。そういうことがきっかけで、消費者との関係に亀裂が入ることも多いです。企業はただ情報を配備するのではなく、正しい情報を配備しなくていけない。そうすることで、消費者との関係がサステナブルになり、商品を購入してもらうことにたどり着けますし、商品のファンにもなってもらえる。基本は変わらないけれど、世の中に適応することは必要になるでしょう。
広報職は、営業部門とスタッフ部門で分けるならスタッフ部門です。けして花形ではありません。しかし、広報の手腕次第で事業を進歩させることもできれば、さまざまなリスクを回避し、会社と社員を守ることも可能です。だから私は、広報の仕事は会社にとって、攻めと守りの要であると思っています。そのことを肝に銘じて、これからも、ユーグレナという会社で広報の仕事を全うしてきたいと思います。
──「広報職は、会社の攻めと守りの要である」。そう話す、北見さんのユーグレナでの仕事やキャリアなどについてお聞きしました。この先のユーグレナ社と北見さんのご活躍がとても楽しみです。お話いただき、ありがとうございました!
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