Vol.26 自ら培った経験の「応用力」があれば、クリエイターは成長し続けられる キャリアアップナビ
キャリアアップナビでは、マーケティングやクリエイティブ職のキャリアアップについて、毎月テーマをピックアップして解説します。今回は、サイバーエージェントでクリエイティブ領域の執行役員であり、クリエイティブ統括室 室長、チーフ・クリエイティブディレクターを務める佐藤洋介さんにこれまでのキャリアについて伺いました。良い転職は、良質な情報を入手することから始まります。「こんなはずではなかったのに…」とならないための、転職情報をお届けします!
──これまでのキャリアについて教えてください。
千葉工業大学で情報デザインを学ぶ傍らで触れた、FlashやUIデザインの自由さに惹かれ、大学院に進学しました。修了後、UIに関わる仕事をしたいと思い、Web事業を手がける大手印刷会社の子会社に就職しました。
この会社にはデザイナーとして入社したはずが、入社当時はHTMLの知識がなかったので、コーディング部門に配属されました。デザインができない日々に悩んだ時代でした。早く認められたい一心で、先輩方に助けてもらいながら猛勉強しました。そのようななか、入社半年後に親会社のサービス運用部門への出向も経験。いま思えば、デザインもコーディングも器用にできたので抜てきされたのかもしれません。半年後、帰任すると同時に、念願のデザイナーとしてのキャリアがスタートしました。
アートディレクターや先輩デザイナーの指導を受けること自体が刺激的でしたし、Webサイトからアプリまで、さまざまな制作に携われたことはよい経験になりました。しかし次第に、ユーザーの反応がダイレクトにわからないことにフラストレーションを感じるように。当時の仕事で相対するのはあくまでクライアント。直接ユーザーの声が聞ける事業会社で、サービスの開発やグロースに携わりたいという思いが強くなりました。
そこで2012年、メディア事業のUIデザイナーとしてサイバーエージェント(以下、CA) に転職しました。驚いたのが当時のCAには社内にディレクターやプロジェクトマネージャーがいなかったこと。ほとんどがデザイナーとエンジニアと事業部長だけの組織でした。進行管理などもデザイナーである自分が行う体制には戸惑いましたが、裏を返せばなにをするにも自分次第なのだと気付きました。またデザイナーは通常、一事業の専任になるのですが、私は前職で複数案件を同時に担当するのに慣れていたこともあり、希望して複数の事業に参画していました。
当時はスマートフォンが普及し始め、CAとしても「スマホシフト宣言」をした翌年でした。そのため、社内ではスマホ向けアプリやメディアのつくり方を模索する段階でした。私は前職でアプリ制作も経験していたため、入社後間もない頃から経験を活かせている手応えはありました。
ひとつの転機は、2013年の「デザイン戦略室」の新設でした。これは、メディア事業部内のデザイナーの縦割り状態を改め、各サービスを横軸でクオリティーをマネジメントする部門です。私は、この頃からマネジメント業務にも携わるようになりました。2015年には「クリエイティブ統括室」へ名称変更され、室長に就任。NIGO®氏と取り組んだ CI刷新などのリブランディングを行いました。
ミッションステートメントに「クリエイティブで勝負する。」が加わった年のことです。経営に次世代の意見を反映するため、当社には2年毎に数名の役員を入れ替える制度がありました(※1)。私もその一環で任命されたものと思っていましたが、現在まで毎年更新されています。
また、2021年4月、社長室直下に「CCC(CyberAgent CreativeCenter)」という組織が正式に新設され、グループ会社も含め全社横断でクリエイティブを統括していくことになりました。CA単体でも約180名(※2)のクリエイターが各事業部に所属しています。そのシナジーを生み出すために、人材戦略や組織づくりも含め、クリエイティブのトップラインを上げていく重要な役目を担っています。
──ターニングポイントはありますか?
「一定のクオリティーを担保するだけでは不十分」だと気付いたことです。先日、社長の藤田に「クリエイターのセンスはモノの価値を変える。もっとクリエイティビティを大切にすべき」と言われ、ハッとしました。当時の私は、自社プロダクト全般のクオリティーのベースラインを上げようと必死に取り組んでいました。しかし、それだけでは新しい価値は生みだせません。インハウスクリエイターには、事業に影響を与えるアイデアが求められているのだと改めて気付かされた瞬間でした。 ──インハウスでの活躍を目指す若手クリエイターへのメッセージをお願いします。
必要なのは「応用力」です。最先端の知識やスキルがあっという間に陳腐化してしまう世の中だからこそ、自分の経験を応用し、新しいことにチャレンジする。「自分の役割はここまで」「自分の得意領域はここだけ」と決めてしまわず、固定観念を壊し続けてほしいと思います。私自身、クリエイターという枠にとらわれず「事業の成長のためになにをするべきか」という視点で、やるべきことを自ら考え実行しています。やりたいことができる「自由」と成果への「責任」はインハウスのメリットであり、やりがいでもあります。
※1 現在では廃止
※2 サイバーエージェント単体 役員・正社員1,602名(2020年9月末時点)のうち
千葉工業大学で情報デザインを学ぶ傍らで触れた、FlashやUIデザインの自由さに惹かれ、大学院に進学しました。修了後、UIに関わる仕事をしたいと思い、Web事業を手がける大手印刷会社の子会社に就職しました。
この会社にはデザイナーとして入社したはずが、入社当時はHTMLの知識がなかったので、コーディング部門に配属されました。デザインができない日々に悩んだ時代でした。早く認められたい一心で、先輩方に助けてもらいながら猛勉強しました。そのようななか、入社半年後に親会社のサービス運用部門への出向も経験。いま思えば、デザインもコーディングも器用にできたので抜てきされたのかもしれません。半年後、帰任すると同時に、念願のデザイナーとしてのキャリアがスタートしました。
アートディレクターや先輩デザイナーの指導を受けること自体が刺激的でしたし、Webサイトからアプリまで、さまざまな制作に携われたことはよい経験になりました。しかし次第に、ユーザーの反応がダイレクトにわからないことにフラストレーションを感じるように。当時の仕事で相対するのはあくまでクライアント。直接ユーザーの声が聞ける事業会社で、サービスの開発やグロースに携わりたいという思いが強くなりました。
そこで2012年、メディア事業のUIデザイナーとしてサイバーエージェント(以下、CA) に転職しました。驚いたのが当時のCAには社内にディレクターやプロジェクトマネージャーがいなかったこと。ほとんどがデザイナーとエンジニアと事業部長だけの組織でした。進行管理などもデザイナーである自分が行う体制には戸惑いましたが、裏を返せばなにをするにも自分次第なのだと気付きました。またデザイナーは通常、一事業の専任になるのですが、私は前職で複数案件を同時に担当するのに慣れていたこともあり、希望して複数の事業に参画していました。
当時はスマートフォンが普及し始め、CAとしても「スマホシフト宣言」をした翌年でした。そのため、社内ではスマホ向けアプリやメディアのつくり方を模索する段階でした。私は前職でアプリ制作も経験していたため、入社後間もない頃から経験を活かせている手応えはありました。
ひとつの転機は、2013年の「デザイン戦略室」の新設でした。これは、メディア事業部内のデザイナーの縦割り状態を改め、各サービスを横軸でクオリティーをマネジメントする部門です。私は、この頃からマネジメント業務にも携わるようになりました。2015年には「クリエイティブ統括室」へ名称変更され、室長に就任。NIGO®氏と取り組んだ CI刷新などのリブランディングを行いました。
──2016年には、クリエイティブ領域の執行役員に抜てきされました。
ミッションステートメントに「クリエイティブで勝負する。」が加わった年のことです。経営に次世代の意見を反映するため、当社には2年毎に数名の役員を入れ替える制度がありました(※1)。私もその一環で任命されたものと思っていましたが、現在まで毎年更新されています。
また、2021年4月、社長室直下に「CCC(CyberAgent CreativeCenter)」という組織が正式に新設され、グループ会社も含め全社横断でクリエイティブを統括していくことになりました。CA単体でも約180名(※2)のクリエイターが各事業部に所属しています。そのシナジーを生み出すために、人材戦略や組織づくりも含め、クリエイティブのトップラインを上げていく重要な役目を担っています。
──ターニングポイントはありますか?
「一定のクオリティーを担保するだけでは不十分」だと気付いたことです。先日、社長の藤田に「クリエイターのセンスはモノの価値を変える。もっとクリエイティビティを大切にすべき」と言われ、ハッとしました。当時の私は、自社プロダクト全般のクオリティーのベースラインを上げようと必死に取り組んでいました。しかし、それだけでは新しい価値は生みだせません。インハウスクリエイターには、事業に影響を与えるアイデアが求められているのだと改めて気付かされた瞬間でした。 ──インハウスでの活躍を目指す若手クリエイターへのメッセージをお願いします。
必要なのは「応用力」です。最先端の知識やスキルがあっという間に陳腐化してしまう世の中だからこそ、自分の経験を応用し、新しいことにチャレンジする。「自分の役割はここまで」「自分の得意領域はここだけ」と決めてしまわず、固定観念を壊し続けてほしいと思います。私自身、クリエイターという枠にとらわれず「事業の成長のためになにをするべきか」という視点で、やるべきことを自ら考え実行しています。やりたいことができる「自由」と成果への「責任」はインハウスのメリットであり、やりがいでもあります。
※1 現在では廃止
※2 サイバーエージェント単体 役員・正社員1,602名(2020年9月末時点)のうち